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2025-07-01
ID-POS市場分析 vol.5
「アイス」市場を天気データとクロス分析!
高気圧だとアイスが売れない?
暑さも本番を迎える今日この頃、手が伸びてしまうのはやはりアイスですね。気温が高くなるとアイスの売上も上がるイメージがありますが、雨が強い日や風が強い日、気圧が高い日はどうなるのでしょうか。
ID-POS市場分析vol.5では、スーパーマーケットにおけるアイスの購買データと気温や降水量、風速、気圧といった各種気象データを組み合わせて、気候や天候が売上に与える影響を分析してみました。
※ID-POSデータとは
POS(Point Of Sales、ポス)とは、いつ・どの商品が・どんな価格で・いくつ売れたのか?を記録・管理する仕組みのことです。ID-POSは「POS」に「顧客ID」がひも付いたものであり、だれが買ったのか?まで把握することができるため、より精緻な購買分析に役立てることができます。
暑さとアイスの関係はデータ上でも確認。暑い日の休日売上は、平日の約1.4倍にも上昇。
まずは、日別の平均気温とアイス売上金額の構成比の関係を散布図で確認しました(分母=年間購入金額)。

イメージ通り、気温が高いほどアイスの売上は高くなる傾向が見られます。10℃付近でも一部売上が上振れている日が確認できますが、これは休日情報を付加することで説明が可能です。以下は同じ散布図を平日と休日で色分けしたグラフです。

グラフを見ると、ほぼすべての気温帯で休日の売上金額が高い傾向にあり、高い気温帯では1.4倍ほど休日の方が高い売り上げを記録しています。なお、低い気温帯で特に売上金額が高い日は年末年始の期間になっていました。
売上金額に対する降水量や風速との相関は弱め。ただし気圧とは負の相関関係アリ。
続いて、気温以外の気象データと売上との関係性を散布図で確認してみます。

まず雨の日/風の日の売上を確認するため、最大降水量と最大瞬間風速のデータとの相関を見てみます。
結果としては、降水量はほとんど相関が見られず、風速は若干の負の相関がある(風が強いと売上が低下する)傾向が見られました。降水量については、日本の気候上、気温が高い夏に雨が多くなる傾向にあるため、気温と雨の影響が相殺された結果と推察されます。
次に日射量や気圧といった、少し変わった気象データとの関係性を見てみます。
日射量については、弱めの正の相関ではありますが、20MJ/㎡付近から売上が急激に増加する傾向が確認できました。ちなみに20MJ/㎡はエジプトやロサンゼルスなどの年間平均日射量に近く、ジリジリと強く太陽が照っている日であることが分かります。
また、気圧については、気温とは逆に強い負の相関があることが確認できました。一般的に「高気圧=晴れ」という印象があるため、「晴れているのにアイスが売れない」という結果は一見意外に感じられます。
しかし、日本の気候をふまえると、冬は高気圧に覆われた晴天の日が多いため、「晴れていても寒ければアイスは売れない」という、より本質的な因果関係が見えてきます。一見すると逆説的に見える関係も、背景構造に一歩踏み込むことで納得できる結論を導くことができますね。
暑い日は「白くま」や「ガリガリ君」など清涼感を与える商品、 寒い日は「ガーナサンド」などスイーツとしての満足感を味わえる商品が人気。
最後に、最も強い正の相関が見られた気温データを用いて、暑い日と寒い日に売れる具体的な商品を見てみましょう。まずは平均気温が30℃以上の暑い日の売上上位15位までの商品を見ていきます。なお、ランキングにおいてハイライトされている商品については、年間の売上構成比よりも比率が高い商品、つまりいつもより売れている商品となります。

第1位となったのは「元祖鹿児島 南国白くま」でした。同商品は「ラクトアイス」(乳固形分3.0%以上)に分類され、乳成分を含む規格の中では最もさっぱりとした味わいのカテゴリです。ランキング全体を見ても、ラクトアイスの商品が上位15商品のうち6商品(4割)を占めており、暑い日には濃厚さよりも清涼感や軽さを求める傾向があることが伺えます。
また、「あずきバー」や「ガリガリ君」、「サクレレモン」といった氷菓(乳成分を含まないシャーベット系)も上位にランクイン。これらの商品は、強い日差しの中でも手軽に体を冷やしたいというニーズにマッチしており、まさにかち割り氷感覚で親しまれていることがわかります。
次に、平均気温が10℃以下の寒い日の売上上位15位までの商品を見ていきます。

第1位となったのは「グリコ ジャイアントコーン」でした。同商品はアイスの中でも最も乳成分が多い「アイスクリーム」規格(乳固形分15.0%以上)に分類され、濃厚で満足感のある味わいが特徴です。
また、通常よりも販売比率が高まる商品として、「ガーナチョコ&クッキーサンド」や「ザ・クレープ」などがランクインしています。これらは、アイスクリームとラクトアイスの中間に位置する「アイスミルク」(乳固形分10.0%以上)に分類され、さらにクッキーやクレープなどしっかりとした触感が楽しめる点でも共通しています。寒い日には、清涼感よりもスイーツとしての満足感や食べ応えを重視した商品が選ばれる傾向にあるようです。
購買データとオープンデータの組み合わせは無限大。
今回は「アイス」市場に焦点を当てた分析でしたが、飲料やお菓子、生活用品などの多様な購買データを用いた分析や、気象や人口動態などのオープンデータを活用した組み合わせ分析が可能です。ID-POSやオープンデータ分析についてご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
また、ID-POS以外にもPontaデータを活用した分析や企業データの分析代行などアナリティクスサービスもご提供しております。詳しくは弊社のアナリティクスページをご確認ください。
■データについて
今回使用したデータは以下のとおりです。
〇購買データ
・抽出元:地方スーパーマーケットにおけるアイスカテゴリの購買
・期間:2024/01/01~2024/12/31
・対象者:Ponta会員
〇気象データ
・抽出元:気象庁|過去の気象データ・ダウンロード
・出典:気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/risk/obsdl/)
・期間:2024/01/01~2024/12/31
※ロイヤリティ マーケティングでは、Ponta会員規約および個人情報保護法、その他の法令・ガイドラインに則り、セキュリティ上厳重に管理された環境のもと、個人を特定できない状態でマーケティング分析を行っております。
※本コラムに記載された商品・サービス名は各社の商標または登録商標です。
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調査結果引用・転載の際は、“「Pontaリサーチ」調べ”とクレジットを記載していただきますようお願い申し上げます。
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