コラム

2025-04-30

テキストマイニングとは?分析手法や活用方法はじめ、データマイニングとの違いを解説

SNSやアンケートの文章からニーズを読み解く「テキストマイニング」。顧客ニーズを可視化し、市場予測に役立つ方法として注目されています。テキストマイニングの基本や分析手法、注意点を把握し、マーケティングに役立てましょう。

テキストマイニングとは

テキストマイニング(text mining)とは、SNS投稿やアンケートなどの自然言語で書かれたテキストから、意味のある情報を抽出・分析する技術です。

 

「text(テキスト)」は文章、「mining(マイニング)」は採掘のことで、テキストマイニングとは未整理の文章データから価値ある情報を掘り出すことを意味します。

 

SNSのコメントやアンケートの回答には有益な情報が含まれますが、膨大なデータを全て人力で確認するのは非現実的です。テキストマイニングを活用すると、テキストから情報を効率よく抽出・整理できるようになり、マーケティング分析や商品開発など幅広い分野で活用できます。

テキストマイニングは定性的データの定量化である

ビジネスシーンでは、「定量」と「定性」という2つの言葉がよく使われます。定量とは、数値や数量で表現できる要素です。一方、定性とは数値では表しにくい「質」の部分に関わる要素を意味します。

 

例えば、売上金額やアンケートの回答率、Webサイトのクリック数など、客観的で測定が可能なデータは定量的データです。これに対して、顧客の感想やアンケートの自由記述欄、インタビューの内容などは定性的データに分類されます。

 

テキストマイニングは、定性的な文章データを統計的に処理し、定量的に「見える化」する手法です。例えば、頻出ワードの傾向や、SNSに投稿されたコメントの感情傾向を数値化することで、漠然とした印象を「根拠あるデータ」に変換できます。

 

定量と定性について詳しく知りたい方は、下記のコラムをご覧ください。

 

定量と定性の違いとは?それぞれのメリットとデメリットを知って使い分けよう | 株式会社 ロイヤリティ マーケティング

データマイニングとの違い

テキストマイニングと混同されがちな言葉として「データマイニング」があります。データマイニングとは、POSデータや売上履歴などの数値化された構造化データを分析し、パターンや法則を見つけ出す技術です。

 

これに対して、テキストマイニングは文章を対象とした分析手法であり、数値に変換されていない言葉のデータから有益な情報を抽出するという点で異なります。つまり、テキストマイニングとデータマイニングは、分析対象の形式が大きな違いといえるでしょう。

テキストマイニングの分析対象

テキストマイニングの対象となるのは、人が自然な言葉で書いた文章です。下記のように、さまざまなチャネルから取得したデータがテキストマイニングの分析対象になります。

 


データ例

・メール
・問い合わせフォームに入力された内容
・アンケートの回答
・SNS
・ブログへのコメント
・チャットボットの記録


 

テキストマイニングを活用し、上記のようなテキストデータを整理・分析することで、数値データでは捉えきれない顧客の感情やニーズを可視化できます。

テキストマイニングを活用するメリット

テキストマイニングは、文章データを分析可能な形に変換することで、これまで見えづらかった課題や機会を明らかにする手法です。ここでは、テキストマイニングの活用によってビジネスで得られる主なメリットを3つ紹介します。

顧客ニーズをデータ化して分析できる

テキストマイニングの代表的なメリットは、曖昧で捉えにくい顧客の声を、分析可能なデータへと変換できることです。顧客の声をデータ化し、分析しやすくすると、従来は担当者の感覚や経験に頼っていた意思決定を客観的な根拠に基づいて行えるようになります。

 

例えば、「不便」「わかりにくい」などのネガティブワードの頻出を可視化することで、UX(ユーザー体験)の改善ポイントの可視化が可能です。顧客の声を活かした商品改善やサービス向上に直結するため、マーケティングや開発部門でもテキストマイニングの活用が進んでいます。

ビッグデータを活用して市場予測できる

SNSやブログなど、日々大量に発信されるテキストデータを分析することで、世の中の空気感や消費者の関心を捉えることが可能です。ビッグデータの解析にテキストマイニングを用いると、トレンドの兆しをいち早く察知し、マーケティング施策や新商品の企画に活かせます。

 

例えば、特定のキーワードが急上昇しているタイミングで、関連する商品を展開するなど、テキストマイニングを活用することで需要の先回りをした戦略も実現可能です。

社内でのナレッジ共有に役立つ

日報や議事録、社内チャットなどに蓄積されるテキスト情報は、業務のノウハウや気づきの宝庫です。テキストマイニングを活用すれば、社内の文書から有用な知見を抽出し、部署間で共有できます。

 

特に属人化しやすい営業活動やカスタマーサポートのナレッジを整理・共有することで、組織全体の対応力の底上げが期待できるでしょう。また、人材の入れ替わりが激しい現場においても、業務の引き継ぎや教育がスムーズに進むようになります。

テキストマイニングの分析手法

テキストマイニングの分析手法として、代表的な4つの方法を紹介します。

センチメント分析(感情分析)

センチメント分析とは、文章に含まれる感情の傾向を読み取る手法です。ポジティブ、ネガティブ、中立といった感情の方向性を判別し、消費者の満足度や評判の傾向を把握します。口コミやレビューの評価分析に広く活用され、顧客体験の改善やブランドイメージの把握に有効です。

対応分析(コレスポンデンス分析)

対応分析とは、アンケートやクロス集計の結果など、カテゴリ同士の関係性を可視化するための手法です。マップを生成することで、ターゲット層の特性を直感的に把握できるようになります。

 

例えば、「20代」「30代」「40代」といった年代と、「食パン」「クリームパン」「あんぱん」といったカテゴリのクロス集計があるとしましょう。対応分析を実施すると、どの年代がどの種類のパンを好む傾向があるのかについて、グラフ上で直感的に把握できるのが利点です。

主成分分析

主成分分析は、情報量の多いビッグデータを整理し、特徴をわかりやすく要約するための手法です。

 

例えば、アンケートで「好みの色」「よく使うアプリ」「好きな音楽ジャンル」「興味のあるテレビ番組」といった多くの質問に回答があったとします。こうしたバラバラな情報を個別に見ても、それぞれの関係性や全体傾向をつかむのは難しいものです。

 

主成分分析では、これらの項目を統計的にまとめ、「カルチャー嗜好」や「デジタル志向」といった新たな指標(=主成分)を作成します。複雑なデータを少ない視点で整理することで、全体像をつかみやすくし、傾向や特徴を把握しやすくなるのがメリットです。

 

主成分分析や、よく似た因子分析との違いについて理解を深めたい方は、下記をご覧ください。

 

因子分析と主成分分析の違いとは?それぞれのメリットや事例をわかりやすく解説 | 株式会社 ロイヤリティ マーケティング

共起分析

共起分析は、文章の中で一緒に使われやすい単語の組み合わせを見つけることで、言葉と言葉の関係性を明らかにする分析手法です。単語同士のつながりを共起ネットワーク図で視覚的に表示し、ユーザーの潜在的な不満や興味関心を見つけやすくします。

 

例えば、アプリのレビューで「有料」と「使いやすい」が頻繁に同時出現していれば、「お金を払ってでも使いたい価値のある」と受け取られている可能性があるでしょう。一方、「有料」と「後悔」という言葉が一緒に使われていれば、料金に対するネガティブな印象が読み取れます。

テキストマイニングの基本手順

テキストマイニングを活用して有益な情報を導き出すには、いきなり分析を始めるのではなく、いくつかの段階を踏む必要があります。テキストマイニングの基本的な流れを把握して分析の実施に備えましょう。

手順①分析に必要なデータを収集する

最初に行うのが、分析の対象となるテキストデータの収集です。SNSの投稿、アンケートの自由記述欄、問い合わせフォーム、レビュー、チャットログなど、日々さまざまなチャネルで膨大な量の文章が発生しており、いずれもテキストであれば分析対象となります。

 

テキストマイニングを実施して有益な情報を得るには、目的に合った情報を収集することが不可欠です。例えば、商品の改善が目的であればレビューやクレーム対応履歴、マーケティング施策を検討したい場合はSNSの投稿やコメントなどを活用できます。

手順②データの前処理と質の確保を行う

収集したデータは、そのままでは分析に適しません。文章を単語単位に分ける「形態素解析」や、文の構造を把握する「構文解析」などの前処理を行い、テキスト内の意味や関係性を捉えやすくしましょう。

 

また、テキストマイニングの結果を信頼できるものにするには、データの質を高める工夫も欠かせません。誤字脱字を補正したり、分析に不要な単語を除去したりするなど、分析結果の精度を向上させる取り組みが必要となります。

手順③構造化データへ変換する

前処理を終えたテキストデータは、そのままでは分析に不向きな場合が多いため、構造化データに変換する作業が必要です。構造化データとは、データが行と列の形式で整理されたもので、ExcelやCSVファイルのように、項目ごとに整然と並んだ状態を指します。

 

検索や集計、比較といった操作がしやすくなり、分析作業の精度が向上し、効率よく作業できるようになるでしょう。例えば、センチメント分析の評価結果を「ポジティブ・ネガティブ・ニュートラル」の3段階で分類し、投稿者の属性とともに一覧化すると便利です。

 

ただし、テキストを正確に構造化するには、データの整理や項目の設計が必要なうえ、処理量も膨大になることがあります。したがって、基本的にはテキストマイニング専用のツールを利用するケースが主流です。自社の分析目的に合わせて、柔軟にデータを扱える環境を整えましょう。

手順④データを分析・可視化して傾向を把握する

最後に、構造化されたデータを用いて分析を行いましょう。センチメント分析で感情の傾向をつかんだり、共起分析で単語同士のつながりを見たりして、結果をグラフや図にまとめ、人の目だけでは捉えきれないインサイトを可視化します。

 

数字では見えなかった声を見える化し、社内で共有して、次のアクションにつなげましょう。

テキストマイニングを導入する際の注意点

テキストマイニングはマーケティング活動に多くのメリットをもたらしますが、実際に活用する際にはいくつかの留意点があります。気をつけるべきポイントを踏まえ、適切な準備をしたうえで導入することが重要です。

大量のデータが必要となる

テキストマイニングの精度は、分析に使用するデータ量に大きく左右されます。特に単語の出現頻度や文脈の傾向を捉えるには、一定以上の文章量が必要です。

 

少量のテキストでは傾向が偏りやすく、分析結果が誤解を生むリスクもあるため、SNS投稿やアンケートなど、目的に応じて十分なサンプルを確保しましょう。

文脈を正しく理解できるわけではない

テキストマイニングは単語の抽出や相関を得意としますが、文全体の意図や感情の機微を完全に読み取れるわけではありません。例えば「〇〇を好きにならないわけがない」といった二重否定をネガティブに解釈したり、「これ」や「それ」の解釈を誤ったりすることがあります。

 

こうした誤解を防ぐためには、テキストマイニングの分析結果をそのまま鵜呑みにせず、人の目で確認しながら解釈するプロセスも欠かせません。

無料ツールの上限と制約を理解する

テキストマイニングのツールは無料で使えるものもありますが、機能やデータ量に制限が設けられているものも少なくありません。処理できるテキストの件数や、保存期間、出力形式などに上限があるケースが一般的です。

 

試用段階では無料ツールでも対応できますが、継続的かつ本格的な活用を目指す場合は、有料プランや業務に適したツールの導入を検討しましょう。

テキストマイニングの活用事例

テキストマイニングは、多様な業種・テーマにおいて、定性的なデータを可視化し、意思決定の質を高めるために活用されています。4つの事例をチェックし、ビジネスで活用する際のヒントにしましょう。

事例①トレンドを把握する

テキストマイニングを活用すると、消費者の声に基づいて購買行動の傾向や市場のムードをいち早く捉えることが可能です。

 

共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する弊社は、Pontaリサーチを通じて企業のマーケティング活動を支援しており、テキストマイニングを活用した分析を通じてトレンドを把握するなどの活動も行っています。

 

2023年には、Pontaリサーチ会員を対象に「今年の世相を表す漢字一字」に関する調査を実施しました。寄せられた自由回答をテキストマイニングで分析し、世代や地域ごとに「変」「虎」「争」「税」など、キーワードの出現頻度や関連性を可視化しています。

 

例えば「変」は10〜30代と60代に多く見られ、「虎」は40〜50代に多く選ばれるなど、世代ごとの世相の感じ方に違いがあることが明らかになりました。このように、自由回答をテキストマイニングで分析することで、トレンドや消費者の価値観を深く読み解くことが可能です。

 

Pontaリサーチ会員が選ぶ2023年を表す漢字を発表 | 株式会社 ロイヤリティ マーケティング

事例②市場を予測する

テキストマイニングは、消費者の自由な記述から潜在的なニーズを見つけ出し、今後の市場動向を予測する手法としても有効です。定量調査だけでは見えにくい「理由」や「背景」を言葉の中から抽出し、生活者の意識の変化を先取りできます。

 

例えば弊社の「いま関心のあるコト・モノ」の調査では、自由回答をテキストマイニングで分析しました。「食」に関する分野では、「糖質」「タンパク質」「プロテイン」など健康志向を示す言葉が頻出し、今後もヘルシー食の市場は拡大すると予測できます。

 

テキストマイニングを活用すれば、過去の傾向から一歩進み、これから求められる価値をいち早く把握することが可能です。

 

テキストマイニングで今年の消費者ニーズを発見⁉ | 株式会社 ロイヤリティ マーケティング

事例③インサイトを発掘する

テキストマイニングは、消費者の自由記述から潜在的な心理や価値観を読み解くのに役立ちます。単語の頻出傾向や関連語の出現パターンから、数値データだけでは捉えきれないインサイトを発掘可能です。

 

例えば弊社の「国産品に関する調査」では、回答に「品質」「安心」「信頼」といったワードが多く見られ、特に60代では「安心感」を重視する傾向が強いことが明らかになりました。また、20〜30代の層からは「地元を応援したい」など地域経済への関心も見られました。

 

このような顧客の声は、選ばれる理由や価値観の傾向を示しており、企業のブランディング戦略や商品訴求に活かせます。

 

『国産品に関する調査』ラジオ番組「馬渕・渡辺の#ビジトピ」と共同調査 | 株式会社 ロイヤリティ マーケティング

事例④顧客の声を店舗改善に役立てる

テキストマイニングは、顧客満足度向上やサービス品質の改善にも活用できます。自由記述による「生の声」を分析することで、店舗ごとの課題やニーズを可視化し、現場にとって納得感のある改善アクションへつなげることが可能です。

 

弊社は、来店客にWebアンケートを実施し、テキストマイニングによって回答内容をレポート化する「Customer X(カスタマーエックス)」を提供しています。商圏内のPonta会員に対して配信を行い、自社・競合他社の店舗を横断的に比較できる点が特徴です。

 

レポートはExcel形式で納品され、スーパーバイザーや店長といった現場スタッフはもちろん、経営層にとってもわかりやすい形式に加工されています。例えば、店舗利用者の印象や改善点、よかった点などを視覚的に捉えることで、サービスの強み・弱みを明確にし、的確な打ち手を検討する材料として活用可能です。また、店舗利用者の意見や感想について感情分析を行い分類化しているため、知りたい意見をすばやく把握することができます。

 

店舗サービスの課題・ニーズを把握する「Customer X」

テキストマイニングをスムーズに導入するならロイヤリティ マーケティングへ

テキストマイニングには、顧客ニーズの可視化、トレンド分析、業務改善といったさまざまなメリットがあります。しかし実際に導入しようとすると、データ収集・前処理の負荷や、文脈の解釈ミス、無料ツールの制限など、さまざまな課題に悩むケースが少なくありません。

 

弊社では、約250万人のPonta会員を対象に、購買データと連動した自由記述の収集・分析をワンストップで提供しています。仮説の立案から実施、報告、プロモーション設計まで、一貫したサポートが可能です。

 

テキストマイニングによって複雑なテキストデータを正しく読み解き、マーケティング施策に活かしたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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