コラム
2023-08-25
機械学習とディープラーニングの違いとは?AIの基本技術をわかりやすく解説
AI関連の話題で登場する「機械学習」と「ディープラーニング」。この2つの違いをご存知でしょうか?本記事では、定義・手法・メリットといったさまざまな切り口で両者の違いを解説します。
目次
機械学習とディープラーニングの定義からわかる違い
「機械学習」と「ディープラーニング」は、AIの技術革新に関する話題でよく登場する言葉です。どちらもデータマイニング、つまりAIや統計学で大量のデータを分析して知見を得る活動で使われます。
機械学習(マシンラーニング)の定義
機械学習とは、コンピュータが膨大なデータからルールを学習し、学んだルールに則った処理や判断を実現する技術のことです。機械学習のプロセスは「入力・モデル・出力」となっており、入力されたデータに対して、モデルと呼ばれる仕組みが評価や判断を出力します。
機械学習のプロセス:迷惑メールを分類するときの例
1.機械学習モデルに膨大なサンプルを与えて学習させる
2.学習済みの機械学習モデルにメールを当てはめる
3.学習から得たルールをもとに、機械学習モデルが迷惑メールをフォルダに分ける
ディープラーニング(深層学習)の定義
ディープラーニング(深層学習)とは、コンピュータが膨大なデータからルールを学習し、学んだルールに則って複雑な処理や状況に合った最適な判断をおこなう機械学習方法の1つです。日本語の「深層学習」という名の通り、より深いレベルでデータ分析をおこないます。
ニューラルネットワークとは
ディープラーニングではニューラルネットワークというモデルを使いますが、これは人間の神経細胞ニューロンの構造を数学的に表現したものです。入力層・隠れ層・出力層の3層から成り、神経細胞のように結びついて入力・分析・出力をおこないます。
ニューラルネットワークが判断を下すまでのプロセス
1.【入力層】判断を下すためのデータを入力する。
2.【隠れ層】データを分析する。隠れ層が多いほど複雑な分析が可能になる。
3.【出力層】分析を踏まえて最終判断を出力する。
機械学習とディープラーニングの関係性
定義からわかるように、機械学習とディープラーニングは非常によく似ています。それは、両者が別物ではなく内包関係にあるからです。具体的にはAIという技術の中に機械学習が含まれ、さらにその機械学習の中にディープラーニングが含まれるという構造になっています。
機械学習とディープラーニングの違いを知るべき理由
AI技術の多くが機械学習とディープラーニングに分類されるため、両者の違いを理解して使い分けることがAIの理解につながります。また、機械学習とマーケティングはさまざま分野で活用が進んでおり、両者を使い分けることで、AIを使いこなすためのスキルの向上につながるのです。
機械学習とディープラーニングの手法の違い
機械学習とディープラーニングの定義がわかったところで、今度はそれぞれの手法について比較していきます。機械学習とディープラーニングにはさまざまな学習手法があり、目的によって手法が変わります。両者の手法の大まかな違いは以下の通りです。
機械学習とディープラーニングの手法の大まかな違い
●【機械学習】人間がデータの特徴を判断する(学習の目的や内容に人間が手を加える)
●【ディープラーニング】AIがデータの特徴を判断する(学習すべき内容もAIが判断する)
機械学習の手法
機械学習の手法は、教師あり学習・教師なし学習・強化学習の3つに分類されます。ここでは各手法の概要について解説しますので、具体的なアルゴリズムの内容について知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。
教師あり学習
教師あり学習とは、正解がわかっている学習データを読み込ませる機械学習の手法です。まるで正解を教えてくれる教師が存在するかのような仕組みで、システムの不正検出やメールのスパム判定など、正解・不正解が明確な問題解決において活用されます。
教師あり学習のアルゴリズムの例
●ロジスティック回帰…ある事象が起こる確率を予測・解析する分類アルゴリズム
●SVM(サポートベクターマシン)…基準を明確にしてクラス分類を予測するアルゴリズム
●決定木…樹形図を使ってデータを解析する手法
教師なし学習
教師なし学習とは、正解を与えずに学習データを読み込ませる機械学習の手法です。正解を教えてくれる教師のような存在はいないため、明確な正解が必要な場面ではなく、未知の規則性を発見したいときに活用されます。例えば、新しく開発した商品のターゲット予測などの場面です。
教師なし学習のアルゴリズムの例
●クラスター分析…データの中で類似する集団を見出す手法
●SOM(自己組織化マップ)…高次元のデータを可視化するアルゴリズム
強化学習
強化学習とは、単にデータを学習するだけではなく、最大の利益を得るために何を学習すべきかまで判断できる機械学習の手法です。例えば、掃除ロボットが過去のデータからゴミの量を予測するのは教師なし学習ですが、効率よくゴミを集める方法まで判断すると強化学習になります。
強化学習のアルゴリズムの例
●モンテカルロ法…行動から得られる報酬の平均値を割り出し、高い平均値を得られるように学習する手法
●Sarsa…将来的に価値のある行動だけでなく、実際の行動も考慮して最適な策を導き出す手法
ディープラーニングの手法
ディープラーニングは、別名「深層学習」とあるように、ニューラルネットワークの隠れ層(中間層)を深めた学習ですので、複雑な処理を伴う画像や音声などに関する手法がメインです。ここでは、ディープラーニングの手法として知られている代表的な4つを紹介します。
CNN(畳み込みニューラルネットワーク)
CNNとは、画像認識の分野で使われるディープラーニングの手法です。深層学習によってデータから画像の特徴を抽出することで、一部が見えにくくなっている画像でも解析できるようになります。CNNはディープラーニングの基本構造となる重要な技術です。
RNN(リカレントニューラルネットワーク)
RNNとは、ニューラルネットワークを拡張して時系列データを学習するディープラーニングの手法です。CNNなどの従来のニューラルネットワークと違い、過去の情報を記憶し、それに基づいて新しい事象を処理できます。人間が過去の経験から学んで行動するのと似た仕組みです。
LSTM(長・短期記憶)
LSTMネットワークはRNNの1つで、従来のRNNと違って長期の時系列データも処理できます。例えば店舗の売上データを解析する場合、RNNは毎日の売上データから今後を予測するのみでしたが、LSTMになると長期的な売上データも処理できるようになるのです。
GAN(敵対的生成ネットワーク)
GANとは、データの特徴を学習し、存在しないデータを生成できるディープラーニングの手法です。偽物を作る生成ネットワークと本物を判定する識別ネットワークを競い合わせ、精度を高めます。文章からの画像生成も可能で、従来は粗い画像でしたが今は高品質になりつつあります。
機械学習やディープラーニングに使われるプログラミング言語
機械学習やディープラーニングによるシステム開発には、プログラミング言語が必要です。よく使われる言語として、以下のようなものがあります。
機械学習や深層学習で使うプログラミング言語の例
●Python…シンプルなため他の言語より学習が簡単。機械学習やディープラーニングでよく使われるが、実行速度が遅い
●R言語…機械学習でよく使われるが、専門的な知識が必要
●Java…汎用性は高いが、機械学習に特化しているわけではない
●Scala…Javaの知識が必要で、機械学習に特化しているわけではない
機械学習とディープラーニングのメリット・デメリット
ディープラーニングは機械学習に内包されていますが、それぞれにメリット・デメリットが存在します。ここからは、機械学習とディープラーニングのメリット・デメリットを比較していきます。
機械学習のメリット
機械学習は、学習データからルールを見つけ出して判断することを得意とするため、学習済みのデータに関して正確かつ迅速に処理できることがメリットです。AIによって人間では追いつかない処理が可能となり、客観的データに基づいた未来予測やタスクの自動処理などが実現します。
機械学習のデメリット
機械学習は、学習したこと以外の判断ができない特徴があり、未学習の判断を問われると誤った決断を下す可能性があることがデメリットです。例えば「青は進め」と学習すればその通りに実行できますが、「赤は止まれ」が未学習だと赤が出ても進み続けることになります。
ディープラーニングのメリット
ディープラーニングはより多くの情報解析をおこなえるため、画像や言語の高度な認識を実現できるのがメリットです。これにより、医療やマーケティングといった専門知識が必要な場面だけでなく、スマートフォンの顔認証や自動翻訳など、日常を快適にするシステムも生まれています。
ディープラーニングのデメリット
ディープラーニングを活用するためには、長時間の学習時間や開発コストが必要になることがデメリットです。機械学習の中には少ない学習データでも十分な手法がありますが、ディープラーニングになると膨大なデータが必要になり、他の機械学習よりも時間やコストがかかります。
機械学習とディープラーニングのメリット・デメリット比較
●【スピード】機械学習>ディープラーニング
●【コストの低さ】機械学習>ディープラーニング
●【高度な処理】機械学習<ディープラーニング
●【必要なデータ量の多さ】機械学習<ディープラーニング
機械学習とディープラーニングの使い分け
機械学習とディープラーニングはそれぞれに適した場面があり、状況に応じた使い分けが重要です。ここでは身近な例とともに、機械学習とディープラーニングの使い分けについて深堀りしていきます。
機械学習が適している場面
機械学習はディープラーニングよりも学習スピードが速いため、できるだけ迅速に結果を出力したい場合に最適です。また、アルゴリズムによってはディープラーニングよりも少ないデータで済むため、膨大なデータを用意できないときにも適しています。
身近な活用事例:ターゲティングへの活用
機械学習は、マーケティングにおけるターゲットの絞り込みにも有効です。例えば不動産業において住宅データを使って機械学習を実施すると、住宅提供エリアを特徴別に分類でき、アプローチすべき顧客が明確になります。このような活用方法は、弊社のサービス内容の1つです。
身近な活用事例:レコメンド機能
レコメンド機能は、ECサイトや動画サイトなどにおいてユーザーの検索・購入履歴に基づいておすすめする機能のことです。教師なし学習のクラスター分析を活用し、「この商品を買った人はこちらも買っています」といった表示をすることで、売上げアップにつなげています。
身近な活用事例:異常検知
異常検知とは、機械学習で学んだルールに照らし合わせた結果、正常ではないと判断したデータを検出する技術のことです。例えば製造業では、AI搭載の異常検知システムで不良品の発見が容易になり、業務効率化やコストの削減に役立っています。
ディープラーニングが適している場面
ディープラーニングは、画像認識・音声処理・言語処理といったプロジェクトに最適です。膨大なデータの学習と高度な分析を必要とするため、短期間で結果を出すプロジェクトには向いていません。プロジェクトの内容や期間に合わせて使い分ける必要があります。
身近な活用事例:画像処理技術
ディープラーニングを活用した身近な画像処理技術の例として、スマートフォンのカメラに関する機能が挙げられます。例えば、写真の顔を識別して個人ごとにフォルダ分けする方法や、カメラで撮った手書き文字を認識してテキストに変換する活用方法などです。
身近な活用事例:自動運転
ディープラーニングを活用した自動車の自動運転は、近年特に注目されている技術です。AIが取得した膨大な画像データなどから歩行者・標識・信号などの識別方法を学び、自動車の適切な制御方法を瞬時に判断することで、人間が運転しているかのように走行します。
身近な活用事例:医療診断
医療の分野でのディープラーニングの活用として挙げられるのが、AIによる診断です。ディープラーニングでレントゲン写真を学習し、病状に関する過去のデータと組み合わせることで、AIによる診断の迅速化を進めています。
機械学習でスピーディーなプロモーションを実現
今回ご紹介した機械学習やディープラーニングは、今後さまざまな発展に伴ってますます重要性が高まっていく分野です。特にマーケティング領域では、膨大なデータを機械学習やディープラーニングを活用して分析していく必要があります。
弊社は機械学習を活用した統計解析によって、効率的でスピーディーなマーケティング施策の実現をサポートいたします。新たな視点のアプローチを模索されている場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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