コラム

2025-11-26

時系列分析とは?方法や手順、ビジネスにおける活用事例をご紹介

過去のデータから、将来の売上や需要を予測したいと考えたことはありませんか?時系列分析は、そうしたビジネス課題を解決するための強力な手法です。 本記事では、時系列分析の基本からメリット、具体的な手順、ビジネスでの活用事例までを分かりやすく解説します。

時系列分析の基本

ビジネスの現場では、過去のデータから未来を予測する場面が多くあります。その際に強力な武器となるのが時系列分析です。本章では、まず時系列分析の方法がどのようなものなのか、その基本的な考え方を解説します。

時系列分析とは

時系列分析とは、時間の経過とともに観測されるデータを分析し、その規則性やパターンを見つけ出す手法のことです。時系列分析の対象となるものは「時系列データ」と呼ばれ、以下のようなデータが該当します。

 


時系列データの具体例

・日々の売上データ

・株価の変動データ

・Webサイトのアクセス数

・気象データ


 

これらのデータから長期的な「傾向」や季節ごとの周期性といった「周期的な変化」を統計的に捉えます。データに潜む隠れたパターンを読み解き、将来の値を高い精度で予測することが時系列分析の主な目的です。

回帰分析との違い

時系列分析と回帰分析は、どちらもデータから将来を予測する際に用いられる代表的な手法です。しかし、分析の目的や扱うデータの性質に違いがあります。

 

時系列分析と回帰分析の違い

最大の違いは、時間の流れを考慮するかどうかという点です。時系列分析は、過去のデータが未来に影響を与える「自己相関」を前提に、時間のパターンを分析します。一方、回帰分析は広告費と売上の関係のように、複数の変数が結果にどう影響するかを分析する際に適しています。

時系列分析のメリット

時系列分析の活用は、ビジネスに多くのメリットをもたらします。未来の数値を予測するだけでなく、過去の施策評価やリスク管理にも応用可能です。ここでは、時系列分析が持つ主要な3つのメリットを具体的に見ていきましょう。

過去のデータから将来予測ができる

時系列分析の最大のメリットは、過去のデータに基づいて未来の出来事を予測できる点です。これまでの売上金額や来客数といったデータの傾向を分析し、予測値を算出することで、将来のシナリオを高い精度で想定できます。

 

例えば、売上を予測できれば、生産計画や広告戦略を効果的に立てることが可能です。需要予測や在庫の最適化にもつながり、将来のリスクを減らして効率的な経営を実現します。

施策の効果検証や要因分析に活用できる

時系列分析は、将来の予測だけでなく、過去に実施した施策の効果検証にも役立ちます。たとえば、キャンペーン開始後の売上データを追うことで、効果の数値を算出し、施策の有効性を客観的に評価できます。

 

さらに、売上が急に増減した際には、その要因を探るヒントにもなります。過去のデータから顧客の行動パターンを把握しておくことは、次の施策をより効果的に設計するうえで非常に役立ちます。

データの異常を検知できる

時系列分析は、データの平常時とは異なる動きを捉える「異常検知」にも活用できます。例えば、工場の機械の稼働データや、金融機関での不正取引の監視などに使われます。

 

Webサイトのアクセス数が突然ゼロになった場合、システム障害を早期に発見するきっかけにもなるでしょう。このように、時系列分析は問題の兆候をいち早く発見し、迅速な対応を実現することで、大きな損失の防止に役立ちます。

時系列分析の注意点

多くのメリットがある時系列分析ですが、その効果を最大限に引き出すには注意すべきデメリットがあります。時系列分析を始める前に必ず確認しておきたいポイントを解説しますので、しっかり押さえておきましょう。

分析に必要なデータ量を確保する

時系列分析の精度を高めるには、十分なデータ量を確保することが重要です。データの蓄積量が少ない状態で時系列分析を行うと、結果が不適切なものとなるデメリットがあります。

 

例えば、直近1週間のデータだけを用いて年単位の変動を予測しようとしても、予測の確度は大きく下がってしまいます。信頼できる時系列分析の結果を得るためには、目的に応じた量のデータを準備するようにしましょう。

予測は仮説であることを理解する

時系列分析によって導き出された将来予測は、ビジネスの意思決定において有力な情報となります。しかし、その予測が必ずしも的中するわけではないことを理解しておく必要があります。

 

予測はあくまで過去のデータに基づいた一つの仮説に過ぎません。そのため、予測が外れるデメリットやリスクを常に考慮しておくことが大切です。時系列分析の結果だけを頼るのではなく、他のさまざまな分析結果と併用し、総合的な視点で判断するようにしましょう。

時系列分析データの変動要因

時系列分析を正しくするためには、そのデータがどのような要因で変動しているかを理解する必要があります。ここでは、分析の基礎となる変動要因の種類について、特徴を詳しく見ていきましょう。

傾向変動(トレンド)

傾向変動(トレンド)は、数年から数十年といった長期にわたる持続的な変動です。データの値が時間の経過とともに、全体として一方向に増加または減少する大きな流れを指します。

 


傾向変動の具体例

・日本の総人口の減少傾向

・地球温暖化による平均気温の上昇

・経済成長に伴うGDPの増加


 

これらの例のように、短期的な上下はあっても、全体として一方向への大きな流れが見られるのが特徴です。時系列分析では、まずこの傾向変動を捉えることが重要になります。この変動を把握することで、将来の動向を予測し、長期的な事業計画を立てるうえでの基礎となるのです。

季節変動

不規則変動とは、傾向変動や季節変動のような規則性を持たない、予測不可能な変動のことです。ノイズとも呼ばれ、突発的な出来事や偶然の要因によって発生します。

 


不規則変動の具体例

・自然災害による売上の急減

・企業の不祥事による株価の暴落

・測定ミスによるデータの異常値


 

これらの変動は予測することが困難であり、データ全体の傾向を把握する妨げとなる場合があります。時系列分析では、こうした不規則変動をモデルから適切に分離・処理することで、予測精度を高めることができます。

 

時系列分析の際には、これらの要因が含まれている可能性を常に考慮する必要があるでしょう。

 

時系列分析の代表モデル

時系列分析で精度の高い予測を行うには、データの特性に合った分析モデルの種類を選択することが重要です。ここでは、数あるモデルの種類の中で最も基本的で、多くの時系列分析の土台となっている代表的なモデルを紹介します。

ARモデル|自己回帰モデル

ARモデル(自己回帰モデル)は、過去の自分自身のデータに基づいて将来の値を推定・予測する、時系列分析の代表的なモデルです。例えば、過去数ヶ月間の売上データを用いて、今月の売上を予測するようなケースで活用されます。

 

このモデルの基本的な考え方は、今日のデータは昨日のデータに、昨日のデータは一昨日のデータに影響されている、というものです。つまり、過去のデータの動きや変動そのものが、未来のデータを予測するための重要な手がかりとなります。

MAモデル|移動平均モデル

MAモデル(移動平均モデル)は、こちらもARモデルと並ぶ時系列分析の代表的なモデルの一つです。過去のデータそのものではなく、過去の予測がどれだけ外れたかという「誤差」に着目するのが特徴です。

 

このモデルでは、過去に生じた予測誤差が現在の値に影響を与えていると考え、昨日までの予測誤差を用いて今日の売上を推定するといったアプローチを取ります。この方法で将来の値を算出していきます。

 

短期的なデータの変動やノイズを捉えるのに優れているため、一時的な変動が多い金融分野などでよく活用されます。

時系列分析の基本的な手順

時系列分析を実践するためには、押さえておくべき基本的な手順があります。データを準備する手順から、予測モデルを評価するまでの流れを理解することが、分析を成功させる上で重要です。ここでは、分析の核となる3つの手順を解説していきます。

①データの収集と可視化

時系列分析の最初のステップは、分析対象となるデータを集め、その観測された状態を視覚的に確認することです。単に観測した数値を眺めるだけでなく、データをグラフにして可視化することで、隠れたパターンや特徴を発見できます。

 


可視化で確認するポイント

・データの全体的な傾向(トレンド)

・周期的な変動(季節性)

・極端に異常な値(外れ値)


 

まずは収集したデータを折れ線グラフなどにして、長期的な上昇・下降といった「傾向」や、毎年繰り返される「季節性」といった全体像を捉えます。同時に、他の値から大きく外れた「外れ値」がないかも確認します。

 

この可視化の工程が、後のモデル選択や分析の方向性を決めるうえで非常に重要な役割を果たします。

②モデルの選択と構築

データの可視化で全体像をつかんだら、次はその特性に合わせた分析モデルを選び、構築する段階に移ります。精度の高い予測のためには、いくつかの準備手順を経て最適なモデルを選択することが重要です。

 


モデル選択と構築の主な流れ

1.移動平均によるデータの平滑化

2.データ系列の変換

3.最適な分析モデルの選択


 

まずは移動平均などの手法でデータを滑らかにし、大まかな傾向を明確にします。次に、分析しやすいようにデータの性質を整える「データ系列の変換」を行います。これは、時間の経過とともに平均や分散が変化してしまうような不安定なデータを、安定した状態に変換する作業です。

 

こうした準備を経て、ARモデルやMAモデルといった候補の中からもっとも適したモデルを選択し、予測モデルを構築していきます。

③モデルの評価と改善

モデルを構築したら、最後にその予測精度が実用に耐えるレベルにあるかを評価し、必要に応じて改善を加えます。作ったモデルがどれだけ正確かを客観的に判断するための、重要な仕上げの手順です。

 


モデルの評価と改善で行うこと

・予測値と実績値の比較

・予測誤差の分析

・モデルやパラメータの再調整


 

構築したモデルを使って過去のデータに対する予測値を算出し、観測された実際の値とどれくらい差があるかを確認します。この誤差を算出することでモデルの精度を評価します。

 

推定値と観測された実績の乖離が大きい場合は、分析モデルの種類を見直したり、パラメータを再算出したりといった改善作業が必要です。

 

この観測値との比較と改善のサイクルを繰り返すことで、より信頼性の高い予測モデルを完成させることができます。

時系列分析のビジネス活用事例

時系列分析の理論や基本的な方法を理解したところで、実際のビジネスでどのように役立つのかを見ていきましょう。具体的な活用事例を知ることで、この分析手法の価値をより深く理解できます。ここでは、特にイメージしやすい2つの業界での事例を紹介します。

小売業における売上・需要予測

小売業では、POSデータに記録される日々の売上などの時系列データを分析することが、店舗運営を最適化するうえで欠かせません。売上や需要を予測することで、さまざまな経営判断に活用されています。

 

小売業における時系列分析の活用シーン

このように、時系列分析は単に過去のデータを振り返るだけではありません。将来を定量的に予測し、効率的な店舗運営を実現するための重要な方法です。

 

購買データはどう活用する?活用したいデータやメリットを基礎から解説

Webマーケティングにおけるサイトアクセス数予測

Webマーケティングの領域においても、時系列分析はサイト運営のさまざまな場面で活用されています。日々のアクセス数を分析し将来のトラフィックを予測するこの方法で、より効果的な戦略立案が可能になるのです。

 

Webマーケティングにおける時系列分析の活用シーン

時系列分析を用いることで、これまでの「結果の分析」から一歩進んだ「未来の予測」へと変革できます。アクセス数を予測することは、広告の費用対効果の改善や、サイトリニューアルのタイミングを見極めるうえで重要な役割を果たします。

時系列分析データを活用するならロイヤリティ マーケティングへ

時系列分析は、将来の売上予測や施策の効果検証に役立つ強力な分析方法です。しかし、その分析精度は元となるデータの質と量に大きく左右されます。特に、顧客のリアルな購買データを長期にわたって十分に収集し、分析に活かすことは容易ではありません。

 

弊社ロイヤリティ マーケティングは、1億人を超えるPonta会員の膨大な購買データを活用し、貴社の時系列分析を強力にサポートします。属性データや多様な業種での利用実績を掛け合わせることで、より多角的で精度の高い需要予測や顧客分析を実現できます。

 

さらに、Pontaリサーチを通じて得られるアンケート結果と購買データを組み合わせることで、より深い顧客インサイトの獲得も可能です。データに基づいた将来予測でマーケティング施策を成功させたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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