コラム
2025-02-20
市場占有率とは?調べ方やメリット・デメリットなどをわかりやすく解説

競争力を強化してビジネスを成長させたいなら、「市場占有率」の把握が欠かせません。正確に理解することで現状が明確になり、効率的な戦略の立案が可能になります。今回は、市場占有率の基本的な概念や計算方法、調べ方をわかりやすく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
市場占有率とは?
市場占有率とは、特定の市場で自社の商品がどれだけのシェアを持っているかを示す重要な指標です。製品の売上などに基づいて算出され、企業が自身の立ち位置を把握し、競合と比較する際に活用されます。
市場占有率をより具体的に説明すると、「市場規模に対して自社の製品が占める割合」です。市場規模とは、市場全体の大きさを示す指標であり、特定の期間内における業界全体の総売上や取引金額を指します。
例えば、ある製品の市場規模が10億円で、企業Aの売上が1億円だった場合、Aの市場占有率は10%です。市場占有率を正しく算出し、結果に基づいて効果的な戦略を立案するなら、市場規模への理解が欠かせません。市場規模の調べ方や活用方法については、下記をご覧ください。
市場を占有するメリット・デメリット

市場占有率が高いとビジネスの成功につながるように見えますが、実際にはそう単純ではありません。実は、市場占有率が高まることでデメリットも生じます。市場を占有するメリットとデメリットを比較し、それぞれが企業活動にどのような影響を与えるのかを深堀りしましょう。
メリット
市場占有率が高いと、顧客や取引先からの信頼が向上し、購買意欲を引き出す効果が期待できます。トップシェアを持つ商品は「多くの人に選ばれている」というイメージを与え、さらなる売上拡大につながるでしょう。
また、取引先との交渉においても有利な条件を引き出しやすくなり、生産や物流コストを削減することで競争力のある価格設定が可能になります。つまり、市場占有率を高めることは、ブランド価値の向上と収益基盤の強化につながるのです。
デメリット
一方、市場占有率が高いと、取引の障害になり得ることがデメリットです。例えば、中小企業との取引では、「強い企業に飲み込まれるのではないか」と警戒される可能性があります。
また、市場占有率が高すぎると、競争環境を阻害していると見なされることもデメリットです。公正取引委員会の調査対象となるリスクが生じ、事業の進捗が遅れる可能性があります
市場占有率が役立つ場面

市場占有率は、さまざまなビジネスシーンで活用されています。ここでは、市場占有率が具体的にどのような場面で役立つのかを探っていきましょう。
既存の製品やサービスの戦略を見直すとき
既存の製品やサービスをより効果的に市場で展開するためには、市場占有率の把握が欠かせません。市場占有率を把握することで、競合他社との違いや改善点が明確になり、製品の改良やターゲット層の再設定など、具体的な戦略を立案する基盤が整います。
例えば、市場占有率が高い場合、顧客から支持されているデザインや機能、アフターサービスの向上などに注力することで、さらなるシェア拡大が見込めます。逆にシェアが低いときは、顧客のニーズに合致していない原因を探り、改善点を特定できるしょう。
新規事業を立ち上げるとき
新しい市場に参入する際も、市場占有率の分析は非常に重要です。市場で競合がどれほどのシェアを持っているのかを把握することで、適切なポジションを見つけやすくなります。競合との差別化ポイントを見極め、効率的に市場に進出できるでしょう。
例えば、市場占有率を調べた結果、競合が少ない市場だとわかれば、参入初期に優位な立場を確保できる可能性が高いです。一方で、競争が激しい市場の場合、他社にはない強みを活かすことで一定のシェアを獲得できる場合があります。
市場占有率の種類と計算方法
市場占有率は2種類あり、それぞれ異なる視点からシェアを分析するために用いられます。それぞれの特徴や計算方法を理解し、競合との比較や自社の強みの把握に役立てましょう。
絶対的市場占有率

絶対的市場占有率とは、特定の市場規模に対して自社の商品がどれだけのシェアを獲得しているかを示す指標です。具体的には、自社の商品の売上を市場全体の売上高で割ることで算出されます。以下が計算式です。
計算式
絶対的市場占有率(%)=自社の対象商品の売上高 ÷ 特定の市場全体の売上高
例えば、ある製品の市場規模が500億円で、自社の対象商品の売上が50億円の場合、絶対的市場占有率は10%です。絶対的市場占有率の数値を活用することで、自社が市場全体にどれほどの影響力を持っているのかを把握でき、さらなる成長戦略を立てる際の基盤となるでしょう。
相対的市場占有率

相対的市場占有率は、競合他社と比較しながら自社のシェアを評価する指標です。特に主要な競合と自社の数値を比較することで、自社が市場でどの程度競争力を持っているのかを明確化できます。計算式は以下の通りです。
計算式
相対的市場占有率(%)=自社の絶対的市場占有率 ÷ 競合の絶対的市場占有率
例えば、自社の絶対的市場占有率が20%で、競合の絶対的市場占有率が40%であれば、相対的市場占有率は50%です。相対的市場占有率の数値は、自社が競合よりどれだけ優位に立っているかを示すだけでなく、競争環境を理解するための重要な手がかりとなります。
市場占有率の目標値
市場占有率を戦略的に活用するには、具体的なシェア目標の設定が必要です。具体的なシェア目標の設定をする際に「クープマン目標値」が参考になります。
クープマン目標値は、市場シェアを評価する際のポイントを複数のステージに分けて体系的に示した指標で、第一次世界大戦中に英国の自動車・航空技術者フレデリック・W・ランチェスターが提唱した「ランチェスターの法則」という理論を参考に、アメリカの数学者B.O.クープマンによって提唱されました。
クープマン目標値を活用すれば、自社がどのポジションを目指すべきかが明確になり、具体的な戦略立案に役立ちます。新規参入や競合とのシェア争いにおいて、どの段階でどのような施策を取るべきかを示す効果的なガイドラインとなるでしょう。
目標値の各段階について、以下で詳しく解説します。
独占的市場シェア

独占的市場シェアとは、2〜3社の上位企業が市場の73.9%を超えるシェアを独占している状態です。競合他社が市場に参入してもシェアを奪うことが難しく、圧倒的な競争優位を確立できます。ただし、独占的なシェアを維持するには、高度なスキルや十分な資金力が欠かせません。
相対的安定市場シェア

相対的安定市場シェアは、市場シェアが41.7%を超え、安定的なポジションを築いている状態です。競合他社との競争があっても大きなシェア変動は起こりにくく、安定した収益を確保できるでしょう。
市場影響シェア

市場影響シェアは、26.1%を超えるシェアを獲得し、業界内での発言力や影響力が高まっている状態です。ただし、他社に市場シェアを奪われるリスクもあるため、現状の維持に加えて、競合との差別化戦略などさらなる拡大を継続的に追求する取り組みが欠かせません。
並列的競争シェア

並列的競争シェアは、19.3%を超えるシェアを指し、横並びの競合と激しいシェア争いが展開される状態です。市場での差別化が非常に重要であり、価格競争やプロモーション施策を適切に行うことで、上位を目指す競争力を手に入れる必要があります。
市場認知シェア

市場認知シェアは、10.9%を超えるシェアを指し、消費者や競合他社から認知されている状態です。市場での存在感を確立しつつ、徐々にブランド力を高めていく戦略が求められます。認知度を上げるための効果的なマーケティングがカギとなるでしょう。
市場存在シェア

市場存在シェアは、6.8%を超えるシェアを指し、市場に存在はしているものの、消費者や競合他社に影響を与えていない状態です。6.8%を下回る場合は、市場での影響力が低くなるため、戦略の見直しや市場撤退も検討する必要があるでしょう。
市場橋頭堡(きょうとうほ)シェア

市場橋頭堡シェアとは、2.8%を超えるシェアを指し、市場で存在できる最低基準のことです。新規参入企業が最初に目指すべき基準であり、市場での認知を高め、競争環境に適応するための第一歩となります。
市場占有率の調べ方
市場占有率を正確に把握するためには、信頼性の高いデータを収集し、適切な方法で分析する必要があります。ここでは、データの収集方法から、市場占有率を計算して目標値に照らし合わせて評価するまでの具体的な調べ方について見ていきましょう。
必要なデータを集める

市場占有率を計算するためには、まず必要なデータを集めることが重要です。自社のデータはもちろん、市場全体に関するデータや、競合他社に関するデータが必要となります。信頼できる情報源を基にしたデータの調べ方は次の通りです。
各省庁の統計
政府機関が公開している統計データは、信頼性が高く無料で利用できることが多いです。例えば、総務省や経済産業省が発表する市場調査に関するレポートには、業界全体の動向や主要な数値が含まれています。公的機関のデータを活用し、業界全体の規模を把握しましょう。
業界団体のレポート
特定の業界団体が発行するレポートには、業界に関する詳細なデータが含まれており、自社が属する業界の状況を理解するのに有効です。例えば年次報告書や年次レポートを参考にすると、市場シェアの推移や販売数などがわかり、市場規模や競合シェアを知る手がかりとなります。
民間企業のデータ
民間企業のデータを活用した市場占有率の調べ方には、いくつかの方法があります。
まず、業界や企業の最新情報を把握するために役立つのが新聞や雑誌です。速報性が高く、競合や新規参入企業の動きがリアルタイムでわかり、掲載記事から業界シェアを確認できる場合もあります。
市場全体の概要を理解したいときは、シンクタンクや金融機関が発行するレポートを活用しましょう。さまざまなデータがグラフなどでわかりやすくまとめられており、視覚的に情報を把握できる利点があります。
官公庁や業界団体の統計、新聞、金融機関のデータよりもさらに効率よく詳細な情報を収集したい場合は、調査会社が発行するデータを活用しましょう。企業シェアやチャネル別の詳細な情報を含むため深い洞察が得られ、自社が属する市場の競争環境を効率的かつ詳細に分析できます。
共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する弊社では、Pontaのビッグデータ運用で培ったノウハウを活かして企業のマーケティング活動を支援しており、市場占有率分析のサポートも実施しています。
例えば「Ponta Adsリテール業態横断」は、コンビニエンスストアやドラッグストア、ECなど複数の業態を横断した購買データを活用し、効果分析を行うサービスです。実際の売上高に基づく精緻な市場占有率を算出でき、購買状況を多面的に捉えたプロモーションの実現で、効率的なマーケティング活動をサポートします。
コンビニ・ドラッグストア・スーパー・ECを横断した購買データの活用プラン「Ponta Adsリテール業態横断」を提供開始 ~
また、「COM-BI(コンビ)」というマーケティングBI構築サービスでは、Ponta会員データと企業の保有データを組み合わせたダッシュボードを提供し、データの有効活用を支援します。官民データを統合し、複数の観点における市場占有率を一度に確認することも可能です。データに基づく意思決定により、具体的な売上向上策を見出す支援をいたします。
市場占有率を計算する

データが集まったら、市場占有率を計算しましょう。先述のように、計算方法は絶対的市場占有率と相対的市場占有率で異なります。
目標値に照らし合わせて判断する

市場占有率を計算した後、結果を「クープマン目標値」に基づいて評価しましょう。例えば、占有率が19.3%を超え、26.1%未満であれば並列的競争シェアに該当し、差別化戦略やプロモーション施策が重要です。目標値を参考に評価し、次の目標を立てて具体策を検討します。
市場占有率を活用するときの注意点
市場占有率は、マーケティング戦略を考える上で非常に重要な指標です。しかし、目的に適さない調べ方をしたり、データを誤って解釈したりすると、無意味な分析になることがあります。市場占有率を活用する前に、下記の4つの注意点を確認しましょう。
シェア拡大を無条件で狙うのは避ける

1つ目の注意点は、市場占有率を無条件に追求しないことです。シェア拡大に注力するとさらなる拡大のための費用が膨大になったり、競争環境が激化して価格競争に巻き込まれたりします。現状を把握し、目標値と照らし合わせながら段階的に拡大しましょう。
未来予測には活用しない

市場占有率は過去と現在の状況を示す指標であり、未来を予測するためのツールではありません。市場占有率を活用する際、あくまで「一定期間における市場でのポジションを理解する指標である」と心得ておくことが注意点です。
競合のシェア率の変動を考慮する

市場占有率を分析する際には、競合の動向を見逃してはいけません。例えば、競合が新製品を投入したり、価格戦略を変更したりした場合、自社のシェアが変動する可能性があります。競合の動きに注意を払いながら、自社の戦略を柔軟に見直すことも注意点の1つです。
トレンドを考慮して分析する

トレンドを無視すると、市場占有率の分析が不十分になることも注意点です。市場は常に変化し、特定のトレンドが急速に拡大することがあります。変化を考慮しないまま市場占有率を分析すると、正しい現状評価にはなりません。トレンドを適切に把握し、戦略に反映させましょう。
市場占有率を活かした戦略で競争優位に立つならロイヤリティ マーケティングへ
市場占有率は、自社のポジションを明確にし、戦略を立案するために重要な指標です。活用することで、競争優位を確立し、持続的な成長を実現する施策の立案につながります。しかし、データや分析スキルが不足し、市場占有率の把握や活用に悩む企業も少なくありません。
弊社では、このような課題を解決するために、Pontaリサーチを活用した高度なデータリサーチを提供しています。約240万人のリサーチ会員の購買データや行動データに基づき、ファクトデータに基づく市場占有率の算出や、競合状況の可視化、最適なプロモーション戦略の立案、効果検証のサポートが可能です。
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