コラム
2025-04-30
顧客エンゲージメントとは?獲得するメリットや高める方法、計測指標を解説
顧客との関係構築が重視される今、注目されているのが顧客エンゲージメントです。本コラムでは、意味やメリット、計測指標を初心者にもわかりやすく解説します。さらに、顧客エンゲージメントを高める方法やコツも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
顧客エンゲージメントとは
顧客エンゲージメントとは、顧客が企業やブランドに対して示す「関わりの深さ」や「継続的なつながりの強さ」を表す指標です。単に製品を購入したりサービスを利用したりするだけでなく、企業に共感し、積極的に関わろうとする姿勢が含まれます。
例えばSNSでの投稿、口コミによる紹介、定期的な購買など、企業との関係性を主体的に築いている状態は「顧客エンゲージメントが高い」といえるでしょう。
このような関係性は、ブランドに対する信頼や愛着だけではなく、顧客の行動として現れます。つまり、「好き」という感情にとどまらず、「選ぶ」「共有する」「リピート購入する」といったアクションを通じて、エンゲージメントの高さが可視化されるのです。
近年では、単発的な購買を追うよりも、長期的な関係構築を重視する企業が増えており、顧客エンゲージメントは重要なマーケティング指標として注目されています。

顧客エンゲージメントが重視される背景
顧客エンゲージメントがこれほど注目されるようになったのには、ビジネス環境や消費者の意識の変化が関係しています。以下の項目から、その背景を詳しく見ていきましょう。
市場のコモディティ化と競争の激化
多くの製品やサービスが市場にあふれる現在、機能や価格だけでは差別化が難しくなってきました。どのブランドを選んでも性能や品質に大差がないといわれる時代に、企業が優位性を築くには「関係性」の質が問われているのです。
つまり、顧客との信頼関係や共感をどう築くかがカギになります。顧客エンゲージメントの高い状態をつくることで、他社と比較されにくくなり、長く選ばれ続けるブランドになることが可能です。
デジタル化と顧客の発信力の増大
スマートフォンの普及やSNSの浸透によって、消費者は「情報を受け取る側」から「発信する側」へと変化しました。企業による一方的な情報提供ではなく、顧客自身が発信する声がブランドイメージを左右する時代です。
このような環境では、企業と顧客の双方向コミュニケーションが欠かせません。顧客エンゲージメントを高めることで、ポジティブな発信を促し、信頼と好感度を構築できます。
顧客生涯価値(LTV)の重視
新規顧客の獲得には多くのコストがかかります。そのため、既存顧客との長期的な関係性を維持し、1人の顧客から得られる価値(LTV=ライフタイムバリュー)を高めることが、企業にとって効率的な戦略の1つです。
顧客エンゲージメントを獲得・強化すれば、継続的な購入やサービスの利用が期待でき、結果としてLTVの向上につながります。顧客の満足度だけではなく「関係の深さ」にも目を向ける必要があるのです。
顧客エンゲージメントと似た言葉との違い

「顧客エンゲージメント」という言葉は、他のマーケティング用語と混同されやすい側面があります。ここでは、「顧客ロイヤリティ」「顧客体験価値(CX)」「顧客満足度(CS)」と比較し、それぞれの違いを整理しておきましょう。
顧客ロイヤリティ
顧客ロイヤリティとは、製品やブランドに対して顧客が感じている信頼や愛着の度合いを示します。感情的なつながりを指す点で、顧客エンゲージメントと似ていますが、実際の行動には必ずしも直結しません。
例えば「好きだけど最近は買っていない」という状態は、ロイヤリティは高いものの、顧客エンゲージメントは低いといえるでしょう。行動面での関わりを重視する点で、顧客エンゲージメントはより実務的な指標といえます。
顧客体験価値(Customer Experience)
顧客体験価値とは、商品やサービスを通じて顧客が得る体験の質のことです。購入前の情報収集から、購入、使用、アフターサポートに至るまで、すべての接点で感じた印象が顧客体験価値に影響します。
顧客体験価値と顧客エンゲージメントの違いは「時間軸」です。顧客体験価値は企業との各接点で感じる「瞬間の体験」であり、顧客との間に信頼関係が育まれると、やがて「長期的な関係性」である顧客エンゲージメントへとつながります。すなわち、顧客体験価値は顧客エンゲージメントの土台となる存在です。
顧客満足度(Customer Satisfaction)
顧客満足度とは、商品やサービスを利用した際に感じる評価のことです。価格や品質、利便性など、顧客が期待していた水準と実際の体験とのギャップから生まれる指標として活用されます。
顧客満足度と顧客エンゲージメントの違いは、対象となる評価の軸です。満足度はあくまで「商品やサービスそのもの」に対する評価であるのに対し、顧客エンゲージメントは「企業やブランドそのもの」への信頼や親近感を示します。
つまり、製品に満足しても、企業との関係性が築かれていない場合は、エンゲージメントが高いとはいえません。一方で、商品への満足が高いことは、企業への信頼形成につながる起点でもあります。顧客満足度の獲得は、顧客エンゲージメントを高める入口と捉えるとよいでしょう。
顧客エンゲージメントを高めるメリット
顧客エンゲージメントを高めることは、企業にとって単なる関係性の強化にとどまりません。長期的な利益の確保やサービス改善にもつながる、多くのビジネス上のメリットがあります。
継続利用やリピート利用を促進する

エンゲージメントの高い顧客は、製品やサービスに対して強い親しみや信頼を持っているため、他社へ乗り換えることなく、継続的に利用し続ける傾向があります。
特にサブスクリプション型のビジネスや定期購入モデルでは、こうした傾向が見られることも少なくありません。長期的な関係が築ければ、解約率の低下やアップセル・クロスセルのチャンスが広がる可能性もあります。
このように、顧客エンゲージメントの向上は、企業にとって継続的な売上確保というメリットをもたらす可能性があるのです。
新規顧客の獲得が期待できる

顧客エンゲージメントが高まると、既存顧客が自発的に企業や商品についての情報を発信してくれるようになります。SNSの投稿や口コミサイトでのレビューなど、ユーザー自身がプロモーターとして機能するのです。
顧客のポジティブな声は、新たな顧客の関心を引き、信頼の後押しとなります。広告とは異なる自然な形で認知が広がるため、広告費を抑えつつ集客につながる点も大きなメリットです。
さらに、熱量の高いユーザーがファンを呼び込むことで、長期的なブランド価値の向上という副次的なメリットも期待できます。
製品やサービスの質の向上につながる

エンゲージメントの高い顧客は、製品やサービスの改善に対しても積極的です。不満点を直接フィードバックしてくれることで、企業側は課題に気づきやすくなります。
また、こうした顧客の声は単なるクレームではなく、「もっとよくなってほしい」という期待の表れであるケースも多いため、真摯に受け止めることで、商品開発やサービス向上のヒントになります。
エンゲージメントの高い顧客との双方向のやりとりは、企業にとって継続的な改善と進化を支える貴重なメリットとなるでしょう。
顧客エンゲージメントの計測指標
顧客エンゲージメントは感情や関係性に基づくものであり、目に見える形で把握するのが難しい側面があります。いくつかの定量的な指標を用いて、現状のエンゲージメントレベルを測定することが重要です。ここでは、代表的な4つの指標を紹介します。
リピート率

リピート率は、一度商品やサービスを利用した顧客のうち、再度購入や利用をしてくれた人の割合を示すものです。高いリピート率は、顧客との信頼関係が構築されている証といえるでしょう。
リピート率の計算方法
・リピート率(%) = リピート購入者数 ÷ 新規顧客数 × 100
例えば、1ヶ月の新規顧客数が500人で、そのうち50人が再購入した場合、リピート率は 50 ÷ 500 × 100 = 10% です。この数値は、顧客満足やエンゲージメントの高さを測るうえで役立ちます。
解約率(チャーンレート)

解約率とは、一定期間内に顧客がサービスを離れた割合を示す指標です。エンゲージメントが低下すると解約の可能性が高まりやすく、逆に高いエンゲージメントを維持している場合は、継続利用される傾向があります。
解約率の計算方法
・解約率(%) = 解約した顧客数 ÷ 既存顧客数 × 100
例えば、ある月の既存顧客が1,000人で、そのうち30人が解約した場合、解約率は 30 ÷ 1,000 × 100 = 3% です。この数値をもとに、顧客との関係性の深さや改善の必要性を判断できます。
顧客満足度

顧客満足度は、商品やサービスに対する顧客の評価を数値で把握するための指標です。アンケートやヒアリングなどを通じて調査し、改善すべきポイントの発見に役立ちます。
満足度が高いからといって必ずしもエンゲージメントが高いとは限りませんが、満足度はエンゲージメントの土台を築く重要な要素です。調査結果は商品やサービスの改善、リピーター獲得、口コミ促進など幅広い場面で活用できます。具体的なやり方については以下をご覧ください。
NPS®(Net Promoter Score)

NPS®は、顧客の推奨度を測定する指標です。数値化されたスコアは、顧客がどれだけ企業に愛着を持っているかを表し、顧客エンゲージメントの可視化に活用できます。
まず、顧客に「この商品を友人や同僚にすすめたいと思いますか?」という質問を投げかけ、0〜10点で評価してもらいましょう。
評価結果に応じて、回答者は「推奨者(9〜10点)」「中立者(7〜8点)」「批判者(0〜6点)」の3つに分類されます。そして、全体に占める推奨者の割合から批判者の割合を差し引いた数値がNPS®スコアです。
例えば、100人のうち40人が推奨者、30人が批判者だった場合、NPS®は「40% − 30% = +10」と計算されます。スコアは−100から+100の範囲で示され、プラスの数値が高いほど、顧客からの支持が強いです。詳細は下記のコラムをご覧ください。
注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです。
NPS®/推奨度調査とは?メリット・デメリットや調査方法などをわかりやすく解説 | 株式会社 ロイヤリティ マーケティング
顧客エンゲージメントを高める方法
顧客エンゲージメントは、単発の施策で獲得できるものではありません。段階を追って計画的に取り組むことで、初めて持続的な関係性が構築されます。そのために必要な6つの手順を確認しておきましょう。
①顧客エンゲージメントのゴールを設定する

最初のステップは、どのような関係性を顧客と築きたいかというゴールを明確にすることです。例えば、「継続利用の促進」や「口コミによる紹介者の増加」など、顧客にどんな行動を期待するのかを具体的に描きます。
この段階では、短期的な成果ではなく、中長期的な視点でゴールを設定することが重要です。設定したゴールは、以降の施策やKPI設計の指針となります。
②現状把握と課題抽出を行う

ゴールが決まったら、次は現状とのギャップを可視化するフェーズです。顧客データやNPS®、チャーンレートなどの計測指標を活用して、どのプロセスに課題があるかを見極めます。
分析結果からは、「エンゲージメントの弱い接点」や「顧客体験の質にばらつきがある場面」など、改善のヒントが見えてくるはずです。
③カスタマージャーニーマップを作成する

課題のある接点を明らかにしたら、顧客の行動を時系列で整理した「カスタマージャーニーマップ」を作成します。マップには、顧客がブランドと出会い、接触し、購入・利用に至るまでの体験や心理の流れを反映させましょう。
顧客視点に立って、どのタイミングで感情が動いているかを把握することで、エンゲージメントを高めるための具体的な打ち手が明確になります。
④パーソナライズされた体験を提供する

顧客ごとの嗜好や行動パターンに応じた、パーソナライズされた体験は、エンゲージメントの強化に有効です。例えば、購入履歴に応じたレコメンドや、関心に沿ったコンテンツの提供が該当します。
一人ひとりに合った情報が適切なタイミングで届くことで、「この企業は自分のことを理解してくれている」という信頼感につながるでしょう。
⑤複数チャネルで一貫したコミュニケーションを行う

顧客との接点は、メールやWebサイト、SNS、店頭など多岐にわたります。どのチャネルであっても一貫したメッセージや対応を心がけ、ブランドに対する信頼と安心感を育みましょう。部門間で顧客情報を共有し、過去のやり取りを踏まえた対応ができる体制づくりが求められます。
⑥継続的なPDCAサイクルを回す

最後に重要なのが、改善を前提とした運用体制の構築です。エンゲージメント施策は一度実行して終わりではなく、継続的に見直しを行う必要があります。
実施した施策の効果を数値で計測し、KPIを通じて改善点を見つけて再び施策に反映させましょう。このPDCAサイクルを繰り返すことが、エンゲージメントの長期的な向上につながります。
顧客エンゲージメントを効果的に高めるコツ
顧客エンゲージメントを高めるための施策は多く存在しますが、継続的に成果を出すには、日々の運用においてコツを押さえることが必要です。ここでは、施策をより効果的にするための視点を紹介します。
ブランドイメージを一貫して守る

顧客エンゲージメントの高い顧客は、製品そのものだけでなく、企業のブランドに対しても強い親近感を抱いています。だからこそ、発信するメッセージやトーン、ビジュアル表現などに一貫性が不可欠です。
顧客がブランドに期待するイメージがチャネルごとにブレてしまえば、これまで築いてきた関係性が損なわれる恐れがあります。一貫したブランド体験を提供するには、部署を横断してガイドラインを整備し、顧客との接点すべてで統一された表現を心がけることが大切です。
顧客視点でのコミュニケーションを重視する

顧客との信頼関係を築くうえで、コミュニケーションのあり方は非常に重要です。企業が一方的に情報を押しつけるのではなく、「顧客がどんな情報を求めているのか」「どんなタイミングで必要としているのか」を理解したうえで対応する姿勢が求められます。
例えば興味のないタイミングで届くDMや、関心とズレたキャンペーン告知は、逆効果となるでしょう。顧客の行動履歴や属性をもとに、最適なチャネルとタイミングを見極めることで、「この会社は自分を理解してくれている」という信頼感につながります。
社内全体で意識を統一する

どれだけ優れた戦略を立てても、実行の段階でバラつきがあれば、顧客の体験は断絶されてしまいます。顧客エンゲージメントの向上を目指すなら、全社員がその目的を理解し、共通の意識を持って取り組むことが不可欠です。
部署ごとの対応に差があると、顧客は混乱し、違和感を覚えてしまいます。そうしたズレを防ぐには、社内の情報共有やトレーニングを通じて、顧客対応の基準をすり合わせておきましょう。組織全体で一体となって動くことが、長期的なエンゲージメント構築につながります。
顧客エンゲージメントの向上を加速させるならロイヤリティマーケティングへ
顧客エンゲージメントを高めるには、顧客満足度やNPS®などの指標を用いた、顧客との関係性の可視化や分析が欠かせません。サービスの改善や、一人ひとりの顧客と長く付き合うための関係構築において、アンケート調査を用いたこれら指標の計測・蓄積は重要なデータの基盤となります。
一方で、こうした調査には「対象者の抽出が難しい」「集計後の活用が進まない」といった課題がつきものです。調査自体が形骸化し、戦略に結びつかないケースも少なくありません。
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