コラム
2025-10-28
グループインタビューのメリット・デメリットとは?調査の流れやコツを解説
グループインタビューは、ユーザーの本音を引き出し、企画の精度を高める強力な調査手法です。 本記事では、その基本や進め方、成功のコツまでをわかりやすく解説します。 ユーザー理解を深め、次のアクションにつなげたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
グループインタビューとは
グループインタビューは、アンケートでは得られない消費者の本音や深層心理を探ることができます。ここでは、グループインタビューとは何か、その基本的な部分について解説します。
座談会形式で本音を引き出す定性調査

グループインタビューは、複数の対象者を集めて座談会形式で実施する定性調査です。モデレーターと呼ばれる司会者の進行のもと、4~6名程度の参加者が一つのテーマについて自由に意見を交わします。
参加者同士がそれぞれの発言に刺激を受け、活発な意見交換が生まれるのが大きな特徴です。商品レビューやサービスの感想などをテーマにすることが多く、消費者自身も気づいていなかった本音や、幅広いアイデアを効率的に引き出すことができます。
グループインタビューの目的

グループインタビューの目的は、アンケートのような定量調査では把握しきれない、消費者のリアルな声や深層心理を探ることです。
グループインタビューの具体的な目的とは
・消費者の価値観やニーズの把握
・多角的なアイデアの抽出
・特定の顧客層における共通要素の発見
商品やサービスの利用実態や購買動機など、定量データだけでは把握できない詳細な情報を得るために実施されます。複数の生活者から一度に多くの情報を取得できるため、ユーザー視点に立ったマーケティング施策を立案するうえで非常に重要な調査といえるでしょう。
グループインタビューの活用場面

グループインタビューは、マーケティングのさまざまな段階で活用できます。
グループインタビューの具体的な活用場面
・商品やサービスのコンセプト開発
・既存商品の改善点や課題の洗い出し
・プロモーション施策のアイデア出し
・Webサイトや広告クリエイティブの評価
特定のターゲット層が持つイメージや評価を把握する際は特に有効です。例えば、コアユーザー、ライトユーザー、競合商品の利用者に分けて意見を比較すれば、自社商品の強みや課題を浮き彫りにできます。
グループインタビューとデプスインタビューの違い

グループインタビューと類似した調査手法に、デプスインタビューがあります。どちらも対象者の本音を引き出す定性調査ですが、目的や形式に違いがあるため、調査したい内容に応じて使い分けると良いでしょう。
グループインタビューとデプスインタビューの違い

デプスインタビューは、インタビュアーと対象者が1対1で対話する調査形式です。そのため、他者の意見に左右されず、個人の価値観や意思決定のプロセスをじっくり深掘りしたい場合に適しています。
一方、グループインタビューは、一度に多くの意見を収集したい場合や、参加者同士の会話から多様なアイデアを得たい場合に有効です。
グループインタビューのメリット
グループインタビューには、効率的な情報収集以外にもさまざまなメリットがあります。グループインタビューの具体的なメリットについて見ていきましょう。
一度に多くの意見を収集できる

グループインタビュー最大のメリットは、一度に複数の対象者から効率的に意見を収集できる点です。1回のインタビューで4~6名程度の参加者を集めるため、短時間で多角的な情報を得られます。
参加者には自由に発言してもらうため、企業が想定していなかった生の声を直接聞くことが可能です。例えば、新しいサービスについてさまざまな意見を聞くことで、ターゲット顧客の趣向性やライフスタイルをより深く理解することにつながります。
一人ひとりを深掘りするデプスインタビューとは異なり、一度に多くの定性情報を効率よく集めたい場合に有効な手法です。
参加者同士の相互作用で意見が深まる

グループインタビューは座談会形式で行うため、参加者同士の相互作用によって議論が深まりやすいという特長があります。一人の発言が他の参加者に刺激を与え、新たな視点やアイデアが生まれることは少なくありません。
自分では気づかなかった意見に触れることで、記憶が喚起されたり、考えが整理されたりすることもあります。こうした会話の連鎖は「グループダイナミクス」と呼ばれ、グループインタビューならではの大きな利点です。
参加者同士の活発な議論を通じて、一人ひとりの意見がより深掘りされ、質の高い情報を得られる可能性が高まります。
比較的低コスト・短時間で実施できる

比較的低コストかつ短時間で実施できる点も、グループインタビューのメリットです。一度に複数の対象者から話を聞けるため、個別に行うデプスインタビューに比べて効率的といえます。
例えば対象者が6名の場合、デプスインタビューであれば6回実施する必要がありますが、グループインタビューなら1回で済みます。これにより、インタビュアーや会場の費用、時間的なコストを大幅に削減できます。
予算やスケジュールが限られている場合でも、迅速に消費者の生の声を集められる点は、多くの企業にとって魅力的なポイントといえるでしょう。
言葉以外の非言語情報も得られる

グループインタビューは対面で行われるため、発言内容だけでなく、表情や声のトーン、しぐさといった非言語情報も得られる点がメリットです。アンケートなどのテキスト調査では、回答の背後にある感情やニュアンスまで正確に読み取ることは困難です。
しかし、グループインタビューでは、参加者が商品に触れたときの表情や、特定の意見に対する反応などを直接観察できます。例えば、言葉では肯定的な意見を述べていても、表情が曇っていたり、声のトーンが低かったりすれば、何か懸念点がある可能性を推測できます。
こうした非言語情報は、消費者のより深いインサイトを理解するための重要な手がかりとなります。
グループインタビューのデメリット
多くのメリットがあるグループインタビューですが、実施前に知っておくべきデメリットも存在します。ここでは、グループインタビューで注意すべき点を解説します。
周囲の意見に流される可能性がある

グループインタビューは複数人で議論する特性上、特有の場の空気が生まれがちです。そのため、他の参加者に遠慮したり、多数派の意見に同調したりする「グループシンク」と呼ばれる現象が起こりやすくなります。
このような同調圧力が働くと、参加者が本来持っていた意見を言えなくなり、当たり障りのない建前の意見に終始してしまう可能性があります。結果として、正直な本音や少数派の貴重な意見が埋もれてしまい、調査情報の質が低下するというデメリットがあるのです。
これを防ぐには、モデレーターが場をうまくコントロールし、全員が発言しやすい環境を整える必要があります。
モデレーターのスキルが調査結果を左右する

グループインタビューの成否は、モデレーター(司会者)のスキルに大きく依存します。なぜなら、モデレーターは単に場を進行するだけでなく、参加者の緊張をほぐし、本音を引き出す重要な役割を担うからです。
進行のポイント
・全員から意見を引き出す
・話が脱線しないよう誘導する
・対立意見も尊重する
スキルが低いと、一部の人しか発言しなかったり、話が脱線してしまったりと、目的とする情報を十分に得られないおそれがあります。調査の質を左右するため、モデレーターの選定は慎重に行いましょう。
一人ひとりを深く掘り下げるのは難しい

グループインタビューは、限られた時間で複数の参加者から意見を聞く形式です。そのため、一人ひとりに割り当てられる発言時間が短くなり、個人の経験や価値観といった深い部分まで掘り下げるのは困難です。
特に、プライベートな内容や人前では話しにくいテーマの場合、どうしても表面的な回答にとどまってしまう傾向があります。あくまでも、話しやすいテーマについて幅広い意見や仮説を収集するのに適した手法だと理解しておくことが大切です。
グループインタビューの企画から実施までの流れ

グループインタビューで確かな成果を得るには、計画的な準備と正しい手順が求められます。ここでは、グループインタビューを成功に導く具体的な流れを解説します。
①調査の企画(目的・テーマ設定)
グループインタビューの最初のステップは、調査の全体像を描く企画段階です。ここで最も重要なのは、「この調査で何を明らかにしたいのか」という目的を明確にすることです。
例えば、「新商品のアイデア検証」や「既存サービスの不満点洗い出し」のように具体的に設定しましょう。目的が定まったら、グループインタビューで尋ねるテーマや質問項目を計画します。この企画は調査の土台となり、全体の流れを左右する重要なプロセスです。
②対象者のリクルーティング
調査の目的を達成するためには、適切な対象者を選ぶことが極めて重要です。まず、年齢や性別、商品の使用経験といった調査対象としたい属性を具体的に定義します。その条件に基づき、SNS広告やコミュニティなどで参加者を募集し、条件に合う人を選び出します。
ただし、一般的には調査会社が保有する調査パネルを利用するのが主流であり、SNSやコミュニティからの募集はコストを抑えられる一方で、偏り(バイアス)が生じやすい点に留意が必要です。
自社で顧客リストなどを持っている場合は、それを活用するとよりスムーズに対象者を集められます。誰に話を聞くかで調査の質は大きく変わるため、慎重に進めるべきステップです。
③インタビューフローの作成
当日のグループインタビューを円滑に進め、聞き漏れを防ぐために、進行の台本となるインタビューフローを作成します。具体的には、まず参加者の緊張をほぐす導入(アイスブレイク)から始めます。
次に、主題となる質問へと移り、さらに意見を深掘りする質問を重ね、最後に全体をまとめるというシナリオを準備します。
ただし、これはあくまで議論の道しるべです。参加者同士の相互作用を尊重し、話の流れに応じて臨機応変に対応する柔軟さを持つことも、有益な情報を引き出すうえで大切です。
④インタビューの実施
準備が整ったら、いよいよグループインタビューの実施です。通常、4〜6名程度の参加者を集め、1時間半から2時間ほどかけて行います。当日はモデレーターが中心となり、参加者全員が対等に発言できるよう配慮しながら議論を進行します。
また、話の流れを見ながら、調査目的に直結する重要な意見が出た際には、その場で深掘りすることも重要です。後から分析できるよう、当日の会話は忘れずに録音・録画しておきましょう。
⑤分析とレポート作成
グループインタビューを終えたら、最後の仕上げとして分析とレポート作成の工程に入ります。まず、参加者に同意を得たうえで録音・録画したデータをもとに、参加者の発言を文字に起こした「逐語録」を作成します。
この逐語録から共通のキーワードや意見の流れ、対立する意見などを整理し、調査目的の答えとなるインサイトを抽出します。最終的に、分析結果を商品開発などの次のアクションにつなげられるよう、PDCAサイクルに組み込める形で報告書にまとめます。
なお、近年ではAIで逐語録を自動作成し、分析を効率化する手法も増えています。
グループインタビューを成功させるコツ
グループインタビューの成果を最大化するには、押さえておくべき重要なコツがいくつかあります。参加者の選び方から当日の場の作り方まで、成功に導くコツを具体的に解説します。
適切な人数と属性を設定する

グループインタビューを成功させる最初のコツは、「人数」と「属性」を適切に設定することです。最適な人数は4〜6名程度とされており、多すぎると発言できない人が出たり、逆に少なすぎると意見が広がりにくかったりする傾向があります。
次に重要なのが属性の選定で、具体的には以下のような項目が挙げられます。
グループ選定の際に意識すべき「属性」
・年齢
・性別
・職業
・ライフスタイル
・商品の利用経験 など
「新商品のターゲット層」や「サービスのヘビーユーザー」など、調査目的から逆算して、誰の意見を聞きたいのかを具体的に定義し、属性を決定しましょう。
参加者の共通点や環境をそろえる

適切な属性の人を集めたら、次は議論を活性化させるための工夫をしましょう。そのコツは、参加者の共通点や環境をそろえ、ライフスタイルなどの「同質性」を高めることです。例えば、同じ年代の既婚女性であっても、「専業主婦」と「共働き」では価値観が異なる場合があります。
共通項がある参加者でグループを構成すると、安心感が生まれ、より本音に近い意見が出やすくなります。また、商品知識に差がありすぎると議論が偏るため、参加者の知識レベルをある程度そろえることも、質の高い意見を引き出すうえで有効です。
発言しやすい雰囲気と環境を作る

参加者の貴重な本音を引き出すには、安心して話せる雰囲気と環境作りが重要です。モデレーターが意識的に場をコントロールすることで、議論の質は大きく向上します。
発言しやすい雰囲気・環境作りのポイント
・心理的な安全性を作る
・リラックスできる会場を選ぶ
・話しやすいテーマを設定する
最初に「他人の意見を否定しない」といったグランドルールを共有すると、参加者は安心して発言できます。
また、飲み物を用意したり、堅苦しくない会場を選んだりといった物理的な配慮も有効です。年収や家庭の事情など、人前で話しにくいデリケートなテーマは避け、参加者同士が共感しやすい話題を中心に議論を進めることで、より活発な意見交換が期待できます。
ロイヤリティ マーケティングは効果的なグループインタビューで深い情報を収集・把握します
グループインタビューは、ユーザーのリアルなインサイトを捉え、商品開発やサービス改善の企画を成功に導く強力な手法です。しかし、その効果を最大化するには、調査目的に合った対象者の的確なリクルーティングや、専門的な分析ノウハウが求められます。
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