コラム

2026-11-02

人口が増えている自治体の特徴とは?
120市町村の人口動向を分析

全国で人口減少が進むなか、2020年から2025年にかけて人口が増えた市町村があります。東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)を除いても、その数は120にのぼります。 「人口が増えた町」と聞くと、若い世帯が移り住み、子どもが増えていく姿を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、データで中身を見ると、実態はそれほど単純ではありません。 本記事では、公的統計をもとに120市町村の人口増加を「増え方(転入か出生か)」「増えた年齢層」「転入元」「増加の続き方」に分解しました。そのうえで、人口増加の型を5つのタイプに整理しています。

詳しく話を聞きたい方はこちら

人口を押し上げているのは「出生」ではなく「転入」

120市町村の85.8%(103市町村)は、転入者数が転出者数を上回る「社会増」でした。一方、出生数が死亡数を上回る「自然増」だった自治体は24.2%(29市町村)でした。

今回の対象では、人口が増えた120市町村の多くで社会増が確認されました。一方、自然増型に分類された自治体は5市町村で、全体のごく一部です。

また、増え方は一様ではありません。5年間毎年人口が増え続けた町は35.8%(43市町村)でした。残りの多くは、増減を繰り返しながら、5年間の合計で増加に転じています。一時点の増加率だけでは、地域の勢いは測れないといえます。

▼転入超過率と自然増率(n=120市町村)(人口千人当たり)

出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数調査」(2020〜2025年)より作成。点は1市町村

▼2020年から2025年までの5年間に、人口が前年より増えた年数(n=120市町村)(市町村数・%)

※対象は国勢調査で人口が増えた市町村。増加年数は時点や数え方が異なる住民基本台帳で集計しているため、0年の市町村も存在。

出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数調査」(2020〜2025年)より作成

最も伸びたのは「50歳以上」。30~49歳の子育て世代が増えた自治体は1割強

年齢を0〜14歳、15〜29歳、30〜49歳、50歳以上の4つに分けて見ると、最も増加率が高かった年齢層は「50歳以上」という自治体が75.8%(91市町村)を占めました。

一方、30~49歳人口が増えた自治体は12.5%(15市町村)でした。人口が増えていても、子育て世代の人口まで増えている自治体は限られます。

人口増加自治体=若者や子育て世代が増えている自治体とは限りません。なお、ここでの「最も伸びた」は増加数ではなく増加率で比べたものです。また、50歳以上の増加には、もともと住んでいる人が年齢を重ねて50歳以上になった分も含まれます。

▼最も人口増加率が高い年齢層(n=120市町村、市町村数・%)

出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数調査」(2020年・2025年)より作成

▼年齢層別に人口が増えた自治体の割合(n=120市町村・%)

出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数調査」(2020年・2025年)より作成。50歳以上には、住民の加齢による移行分も含む

▼出生数の変化(2020年→2025年、n=120市町村、市町村数・%)

出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数調査」(2020年・2025年)より作成

最大の転入元は同一都道府県内。東京圏からの転入割合は6割の自治体で1割未満

2025年1年間の転入者を転入元別に見ると、120市町村のうち118市町村で、最大の転入元は同一都道府県でした。

東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)からの転入者が転入者全体に占める割合を見ると、中央値で8.4%でした。これは、自治体を割合の低い順に並べたとき、中央に位置する自治体では、転入者のうち東京圏から来た人が1割弱だったことを示します。また、120市町村のうち72市町村(60.0%)で、この割合は10%未満であることを確認できました。

「地方の人口増加=東京圏からの移住」と考えられがちですが、実際の人口増加を支えているのは、主に同じ県内からの転入といえます。

▼最大の転入元(2025年、n=120市町村)(市町村数・%)

※他の都道府県が最大の転入元だったのは、佐賀県の鳥栖市・基山町(いずれも福岡県からの転入が最多)

出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」(2025年)より作成

 

▼転入者全体に占める東京圏からの転入者の割合(%)別 市町村数(2025年、n=120市町村)(市町村数)

※中央値は8.4%。東京圏からの転入が10%未満の町は72市町村

出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」(2025年)より作成

県外から人が集まる町でも、若者が増えているとは限らない

県外からの転入が多い町ほど、若者が増えているのでしょうか。県外からの転入率と15〜29歳の増減率を比べたところ、両者にはほとんど関係が見られませんでした。

県外からの転入が特に多い上位30市町村で15〜29歳人口が増えたのは19市町村(63.3%)、転入が少ない下位30市町村では21市町村(70.0%)でした。県外からの転入の多さにかかわらず、若者が増えた市町村の割合に大きな差はありません。

県外転入率の高さと若者人口の増加は、分けて捉える必要があります。転入者の数や範囲だけで、地域を評価することはできません。

▼県外からの転入率と15〜29歳の増減率(n=120市町村)(%)

出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」(2025年)、総務省「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数調査」(2020年・2025年)より作成。点の色は県外転入率の上位・下位30市町村

データで分けると、人口が増えた町は5つのタイプに

1〜4の視点を組み合わせると、人口増加にはいくつかの「型」があることが見えてきます。転入超過の度合い、15〜29歳・30〜49歳の増減率、県外からの転入率をもとに、120市町村を5つのタイプに分類しました。

▼人口が増えた120市町村の5タイプ

緩やかな定住・都市成長型

最も多い56市町村が当てはまります。50歳以上の人口は5タイプのなかで最も大きく増えており、転入超過で着実に人口を伸ばしています。ただし、30〜49歳は減少しています。

地域内流入・子育て定住型

主に同一都道府県内から人が移り住んでいるタイプです。転入超過の度合いが最も大きく、子どもの数も増えています。5タイプのなかで、子育て世代の減少が最も小さいのも特徴です。

広域・若年流入型

県外から多くの人を集め、若者も増えているタイプです。15〜29歳の増加率は、5タイプのなかで最も高くなっています。

広域流入・定住弱め型

県外や東京圏から人を集める力が最も強いタイプです。一方で、0〜29歳の人口は減っています。人の出入りが多く、他の型と比較すると若い世代が長く定着するまでには至っていない様子がうかがえます。

その他・例外型

国勢調査と住民基本台帳で人口の動きが大きく食い違う5市町村が分類されました。避難指示解除後の帰還など、通常の人口移動とは異なる要因が考えられます。

▼タイプ別の特徴(分類に使った4指標のタイプ別平均)

※色は120市町村全体と比べた高さ(赤:高い/灰:低い、濃いほど差が大きい)。15〜29歳・30〜49歳は2020→2025年の増減率、県外転入率は2025年の転入者に占める県外からの割合

※その他・例外型(5市町村)は統計間の差が大きいため除外

出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数調査」「住民基本台帳人口移動報告」より作成

「人口が増えている」の中身を見ることが、地域を知る第一歩

同じ「人口が増えた自治体」でも、増えている年齢層や転入元、増加の継続性は自治体ごとに異なります。人口増加率だけでは見えない違いを捉えるには、複数の指標を組み合わせて確認することが重要です。

いくつかの視点を組み合わせることで、数字の裏にある地域ごとの違いが見えてきます。自治体にとっては、自地域の立ち位置を客観的に知る手がかりになります。民間企業にとっては、出店や事業展開を考えるエリアごとの違いを捉える出発点になるでしょう。

地域の実態を捉えるデータ分析は、ロイヤリティマーケティングにご相談ください

今回の分析から、同じように人口が増加している地域でも、増えている年齢層や転入元、人口増加の背景には大きな違いがあることが分かりました。

地域の実態を正しく捉えるためには、人口増減などの表面的な数値だけでなく、「どのような人が暮らし、どのような行動をしているのか」まで掘り下げることが重要です。

ロイヤリティマーケティングでは、国勢調査や住民基本台帳などの公的統計に加え、Pontaの属性・購買・意識・人流データなどを目的に応じて組み合わせ、地域の特徴や生活者の実態を多角的に分析します。

また、分析結果をダッシュボードやレポートで可視化することで、地域間の比較や継続的な状況把握も支援しています。「自地域の強みや課題を客観的に把握したい」「出店候補エリアの市場性を詳しく知りたい」「地域の特性に合わせた施策を検討したい」といった課題をお持ちの方は、ぜひロイヤリティマーケティングにご相談ください。

詳しく話を聞きたい方はこちらアナリティクスサービスの詳細はこちら

【調査概要】

対象:令和2年国勢調査と令和7年国勢調査 人口速報集計を比較し、人口が増加した市町村のうち、東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)を除く120市町村

 

使用データ:

・令和2年国勢調査、令和7年国勢調査 人口速報集計(総務省統計局):2020年・2025年の人口

・住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数調査(総務省):2020年から2025年の転入・転出・出生・死亡、年齢階級別人口

・住民基本台帳人口移動報告(総務省統計局):2025年の転入元別転入者数取得方法:    いずれも政府統計の総合窓口(e-Stat)のAPIを利用して取得

分類方法:         社会増率(人口千人当たり)、15~29歳・30~49歳人口の増減率、県外転入率の4指標を標準化し、k-means法により5タイプに分類

コラム記事一覧

お気軽にお問い合わせください

詳しくお知りになりたい方は
お問い合わせ