コラム

2026-06-25

ウェルビーイングとは?意味や指標、社内環境に活かす具体例をわかりやすく解説

ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的にすべてが満たされた状態を持続的に保つことを目指す概念です。単に健康状態を指すだけでなく、幸福感や満足感、生きがいといった多角的な視点を含みます。 本記事では、ウェルビーイングの基本的な意味や定義、注目される背景から、ビジネス経営に活かすメリット、具体的な取り組み事例までをわかりやすく解説します。

ウェルビーイングの意味とは?

ウェルビーイング(Well-being)とは、個人が身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを指す包括的な概念です。単に身体的な健康を意味するのではなく、幸福感や満足感、生きがい、人とのつながりなど、多面的な要素が満たされている状態を表します。

 

世界保健機関(WHO)は、健康について「身体的・精神的・社会的に良好な状態であり、単に病気や虚弱でないことではない」と定義しています。近年は、個人の幸福だけでなく企業経営においても重要視されており、従業員のワークエンゲージメント向上や働きやすい社内環境の整備、福利厚生の充実などにつながる考え方として注目されています。

 

なお、ウェルビーイングを正しく理解するためには、後述する主観的ウェルビーイングと客観的ウェルビーイングの両方を考慮することが重要です。

主観的ウェルビーイング

主観的ウェルビーイングとは、自分自身の人生や生活について、どのように経験し評価しているかを表す概念です。人生への満足度や幸福感、生きがいなどが代表的な要素です。同じ環境に置かれていても、人によって感じ方は異なるため、個人の価値観や考え方が大きく影響します。

 

また、企業では従業員の幸福感やワークエンゲージメントを把握するために、アンケートやサーベイが活用されています。

客観的ウェルビーイング

客観的ウェルビーイングとは、健康状態や所得水準、労働環境、教育機会など、客観的なデータや指標によって把握される生活の質や暮らしの状況を指します。主観的な幸福感だけでは把握できない生活環境や社会的な状況を客観的に測定できる点が特徴です。

 

例えば、平均寿命や健康状態、所得、労働時間、教育水準などは、客観的ウェルビーイングを判断する代表的な指標として活用されています。

ウェルビーイング、ウェルネス、ハピネスの違い

ウェルビーイングと類似した言葉に、ウェルネスとハピネスがあります。それぞれの違いは下記の通りです。

ウェルネスが健康維持や生活の質向上を目指す能動的な取り組みやプロセスを指すのに対し、ウェルビーイングは身体的・精神的・社会的に良好な状態そのものを意味します。

 

例えば、適度な運動やバランスの良い食事(ウェルネス)を継続することが、結果として人生全体の豊かな状態(ウェルビーイング)の実現につながります。つまり、ウェルネスはウェルビーイングを支える手段であり、両者は深く結びついています。

 

こうしたウェルビーイングの考え方は、1946年のWHO(世界保健機関)憲章での健康の定義が大きな契機となり、現在ではSDGsの重要なテーマにも掲げられています。個人はもちろん、企業や社会全体の持続的な発展を支える基盤として、近年ますます注目が高まっています。

ウェルビーイングが世界的に注目されている背景

ウェルビーイングが世界的に注目されている背景には、社会全体の価値観が物質的な豊かさから精神的な充足へと大きく変化していることが挙げられます。これまでは経済成長を示すGDPなどの指標が重視されてきましたが、現代では個人の幸福度や生活の質を尊重する考え方が主流となりつつあります。

 

こうした価値観の変化には、主に以下のような3つの要因があります。

GDPに代わる豊かさの指標

従来、国の豊かさはGDP(国内総生産)によって測られてきました。しかしGDPは経済活動の規模を示す指標であり、生活の質や環境、格差、幸福度といった要素までは反映できません。

 

そのため近年では、GDPを補完する新たな指標として、国民の幸福度や生活満足度を重視する考え方が注目されています。代表的な例としては、GNH(国民総幸福量)や、OECDが公表する Better Life Index などが挙げられます。

 

こうした流れの中で、経済成長だけでなく「人々が実感できる豊かさ」を重視する社会への転換が進み、その中心概念としてウェルビーイングが位置づけられるようになりました。

SDGsの影響

SDGs(持続可能な開発目標)の普及は、ウェルビーイングが世界的に注目される大きな要因となりました。2015年に採択されたSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」は、英語原文で「Good Health and Well-being」と表記されています。

 

この目標が掲げられたことで、身体的な健康だけでなく、精神的・社会的な充足も含めたウェルビーイングの実現が、地球規模で取り組むべき普遍的な課題として明確になりました。

 

また、SDGsの普及を通じて、経済成長だけでは測れない豊かさへの関心が世界的に高まり、企業や自治体でもウェルビーイングを重視した取り組みが進められています。

パンデミックによる価値観の変化

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)は、人々のライフスタイルを激変させ、ウェルビーイングへの関心を飛躍的に高める契機となりました。

 

感染症の拡大を経て、従来の経済的な豊かさだけでなく、心身の健康や精神的な安定、社会的なつながりといった「多角的な豊かさ」の重要性が改めて認識されるようになったためです。これに伴い、健康・教育・所得などを総合的に評価する「人間開発指数(HDI)」のような、生活の実情を反映した指標の重要性も再認識されています。

 

こうした経験を経て、ウェルビーイングは単なる理想ではなく、現代社会において重要な考え方として広く注目されるようになっています。

ウェルビーイングを構成する要素と理論

ウェルビーイングの状態を具体的に把握し、向上させるための理論として、セリグマン博士のPERMAモデルや、ギャラップ社が提唱する5つの要素などが挙げられます。

 

ここでは、世界的に広く活用されている理論と、日本におけるウェルビーイングの考え方について、それぞれの構成要素を解説します。

マーティン・セリグマンのPERMAモデル

ポジティブ心理学の創始者であるマーティン・セリグマン博士が提唱した「PERMA(パーマ)モデル」は、ウェルビーイングを構成する代表的な理論の一つです。

 

このモデルは、ウェルビーイングを構成する5つの要素の頭文字から名付けられています。


5つの要素

 

1. PositiveEmotion(ポジティブな感情):喜び、感謝、希望といった前向きな感情。
2. Engagement(エンゲージメント):物事に没頭し、集中している状態。
3. Relationships(良好な人間関係):他者とのつながりや支え合い。
4. Meaning(意味・意義):人生の目的や意義を感じること。
5. Accomplishment(達成感・成果):目標を成し遂げることによる満足感。


これらの要素をバランス良く満たすことが、個人の幸福度や社会的な充実につながるとされています。

ギャラップ社による5つの要素

アメリカの調査会社ギャラップ社は、世界150カ国以上での調査に基づき、ウェルビーイングを構成する5つの要素を定義しています。このモデルは、個人の幸福感を多角的に捉えるための指標として、世界中の企業や自治体で活用されています。


ウェルビーイングを構成する5つの要素

 

・ Career Well-being(キャリアの幸福):仕事や日常の活動における充実感・やりがい
・ Social Well-being(人間関係の幸福):良好な人間関係と愛情
・ Financial Well-being(経済的な幸福):経済的な安定と管理能力
・ Physical Well-being(身体的な幸福):心身の健康と活力
・ Community Well-being(地域社会での幸福):地域社会とのつながりと貢献


これらは、個人の幸福だけでなく、組織や社会のウェルビーイングを評価・改善するための指標として活用されています。

日本における獲得的と協調的のバランス

日本におけるウェルビーイングの向上には、個人の目標達成を重視する「獲得的な視点」と、周囲との調和を大切にする「協調的な視点」の両立が欠かせません。欧米の理論をそのまま適用するだけでなく、日本特有の文化的価値観に合わせたバランス調整が求められています。

 

特に国内のビジネスや教育の現場では、個人の成果追求と組織への貢献をいかに結びつけるかが、持続的な幸福感を実現するカギです。

 

現在は国や自治体、企業など社会のあらゆる場面で取り組みが進み、個人と集団の双方が満たされる「新しい豊かさの形」が模索されています。

ビジネス経営におけるウェルビーイングのメリット

ビジネス経営においてウェルビーイングに取り組む主なメリットの一つは、従業員のウェルビーイングが向上することでエンゲージメントや変化への対応力が高まり、結果として組織全体のレジリエンス(回復力・しなやかさ)の向上につながる点にあります。

 

具体的には、「生産性の向上」「人材の確保」「多様性の受容」という3つの主要な観点から、その効果が期待されています。

生産性と創造性の向上

従業員のウェルビーイングが向上すると、仕事へのワークエンゲージメントが高まり、組織全体の生産性向上につながる可能性があります。心身ともに良好な状態にある従業員は業務への集中力や意欲が高まるため、結果として高いパフォーマンスを発揮しやすくなるのです。

 

また、精神的なゆとりが生まれることで、柔軟な発想やイノベーションが促進されるとする研究も見られます。

 

日本政府も「骨太の方針」において、国民の生活満足度などの指標を政策判断に活用する動きを進めています。従業員の状態を可視化し、働きやすい環境を整備することは、企業の競争力や価値向上にもつながります。

優秀な人材の確保と定着率の改善

ウェルビーイング経営の推進は、従業員を大切にする企業としての評価を高め、採用競争における優位性につながる可能性があります。近年は特に若年層や専門人材を中心に、給与水準だけでなく働きやすさや心身の健康を重視する傾向が広がっているためです。

 

具体的には、柔軟な働き方の整備やオフィス環境の改善が従業員満足度を高め、離職率の低下に寄与します。さらに、福利厚生の充実やキャリア支援体制の整備は、長期的なエンゲージメントの向上にも効果的です。

 

従業員が安心して能力を発揮できる環境を整えることは、企業ブランドの向上や人材獲得力の強化につながるとされ、結果として好循環を生み出す可能性があります。

ダイバーシティ&インクルージョンの促進

一人ひとりのウェルビーイングを尊重する組織文化は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進に直結します。メンバーの価値観やライフステージによって「良い状態」の定義は異なるためです。

 

柔軟な働き方やメンタルヘルスサポートなどを整備することは、多様な背景を持つ人材が安心して能力を発揮できる職場環境の実現につながります。こうした個々のニーズに配慮する姿勢は、結果として組織全体のエンゲージメントやウェルビーイングの向上に寄与すると考えられています。

自治体・企業における具体例

日本国内でも、ウェルビーイングの理念を具体的な施策として導入する自治体や企業が増えています。

 

それぞれの地域や組織の特性に合わせた、ユニークな取り組みが展開されています。

自治体の事例

福岡市

福岡市では、市内の事業者を対象とした「福岡市Well-being&SDGs登録制度」を運用しています。 

 

この制度は、従業員のウェルビーイングの向上やSDGsの達成に積極的に取り組む企業を市が登録・公表し、その活動を支援するものです。

 

登録事業者は、市のホームページで取り組みが紹介されるほか、市の融資制度で金利優遇を受けられるなどの支援を受けられます。 

 

このように福岡市では、行政と企業が連携しながら働きやすい環境づくりを推進し、市全体のウェルビーイングの向上を目指しています。

身体的・精神的な健康をサポートする事例

多くの企業では、ウェルビーイングの向上の基盤となる心身の健康をサポートするため、健康経営の取り組みを推進しています。 

 

健康診断の充実やストレスチェックの義務化といった基本的な取り組みに加え、各社の特色を活かした独自の取り組みも広がっています。

サントリーホールディングス株式会社

サントリーホールディングスは、「従業員・家族の健康がサントリーの挑戦・革新の源である」という考えのもと、「健康経営宣言」を掲げています。

 

同社では、従業員が心身ともに健康でいきいきと働ける環境づくりを推進しており、グローバル規模のウォーキングイベント「One Suntory Walk」などの取り組みを実施しています。 

 

また、健康増進施策やメンタルヘルス対策などを通じて、従業員のウェルビーイングの向上を支援しています。

多様な働き方とワークライフバランスを実現する事例

従業員が仕事と私生活を両立し、自分らしく働ける環境を整えることは、ウェルビーイングの向上に欠かせません。

 

近年は、フレックスタイム制度やテレワーク、育児・介護との両立支援など、多様な働き方を実現する取り組みを導入する企業が増えています。

パナソニック ホールディングス株式会社

パナソニック ホールディングス株式会社は、「事業は人なり」の考え方のもと、従業員一人ひとりがいきいきと働ける環境づくりを推進しています。

 

同社は2022年に国内グループ社員を対象とした選択的週休3日制の導入方針を発表し、多様な働き方の実現に取り組んでいます。

 

従業員が育児や介護、自己啓発、副業・兼業、地域活動など、それぞれのライフステージや価値観に応じた働き方を選択できる環境を整えることで、ワークライフバランスの向上と生産性の両立を目指しています。

コミュニケーションと心理的安全性を高める事例

従業員同士が円滑に交流できる社内環境や、健康支援などの福利厚生を充実させることも重要です。従業員が安心して意見を述べ、互いに尊重し合える職場環境は、ウェルビーイングの基盤となる「心理的安全性」を高めます。

 

企業は、コミュニケーションを活性化させるための仕組みづくりや、組織風土の改革に取り組んでいます。

ヤンマーホールディングス株式会社

ヤンマーホールディングスは、従業員のウェルビーイングの向上を目的として、コミュニケーション活性化や心理的安全性向上を目的とした施策を進めています。

 

同社では、従業員が自身の心身の状態を日々記録・確認できる「パルスサーベイ」を導入しています。このデータを上司と共有し、1on1ミーティングで活用することで、個々の状態に合わせた対話やサポートの実現を目指しています。

 

こうした取り組みにより、従業員同士のコミュニケーションを促進し、安心して働ける職場環境づくりにつなげています。

ウェルビーイングを高めるための実践と測定方法

個人や組織のウェルビーイングを高めるためには、まず現状を把握し、課題を明確にしたうえで適切な施策を実施することが重要です。

 

健康支援制度の整備や柔軟な働き方の導入、コミュニケーション活性化施策などを実施しながら、定期的に効果を測定し改善を続けることで、持続的なウェルビーイングの向上につなげることができます。

測定ツールの活用

ウェルビーイングの状態を可視化するためには、専用の測定ツールを活用するのが効果的です。ポジティブ心理学に基づいた「PERMAモデル」や、ギャラップ社が提唱する5つの要素など、科学的根拠のあるフレームワークを用いたアンケート調査やサーベイが広く利用されています。

 

また、定期的な測定と施策の改善を繰り返すことで、ウェルビーイングの向上への継続的な取り組みが可能です。

 

こうした測定・可視化のアプローチは社内組織だけでなく、顧客理解の領域でも進んでいます。例えば、ロイヤリティマーケティングが開発した独自のマーケティング指標「TOTONOID(ととのい度)」では、生活者のウェルビーイング状態を測定・可視化する取り組みが行われています。

 

このように適切なツールを用いて「状態を正しく測る」ことが、効果的な施策を展開するための第一歩です。

 

TOTONOIDについては、以下のページで詳しく紹介しています。

データを活用してウェルビーイングの向上を実現するならロイヤリティマーケティングへ

従業員のウェルビーイングの向上は、生産性やエンゲージメントの向上、人材の定着率改善など、企業の持続的な成長につながる重要な経営課題です。

 

そのためには、施策を実施するだけでなく、従業員の状態や課題をデータに基づいて把握し、継続的に改善していくことが求められます。

 

ロイヤリティマーケティングでは、データ分析や顧客・従業員理解を支援するソリューションを通じて、企業のエンゲージメント向上をサポートしています。

 

ウェルビーイング経営の推進をご検討の際は、ぜひロイヤリティマーケティングへご相談ください。

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