コラム

2026-05-22

コンジョイント分析とは|手順やメリット、市場シェアを予測する活用方法を解説

コンジョイント分析は、顧客が商品を選ぶ際の妥協点や心理をひも解き、最適な商品開発につなげるためのマーケティング分析手法です。本記事では、ビジネスの現場で実践するために不可欠な定義や、他の調査手法との違いについて詳しく解説します。

目次

コンジョイント分析とは?

はじめにコンジョイント分析の基本知識と、この手法がビジネスで重要視される理由について解説します。

定義と基本的な考え方

コンジョイント分析とは、商品選択時の「妥協点(トレードオフ)」を数値化する多変量解析手法です。例えばノートパソコンの購入時、「高価格で多機能」か「低価格でシンプル」かなど、実際の買い物に近い感覚で評価をしてもらうのが特徴です。

 

商品開発において、顧客がどの要素に最も価値を感じるかを把握する手段として広く活用されています。

全体から部分への分析アプローチ

一般的な調査のように要素ごとに重要度を尋ねると、すべて「重要」と回答されがちで本音が見えにくいという課題があります。

 

対してコンジョイント分析では、複数要素を組み合わせた「商品案」を提示し、その全体評価から逆算して各要素の魅力を算出します。このプロセスにより、個別質問では引き出せない真のニーズや、価格と機能の優先順位を把握しやすくなるのが大きなメリットです。

コンジョイント分析で使われる重要用語

実施手順を理解するために、実務で不可欠な4つの基本用語を解説します。

属性(Attribute)

商品の特徴を構成する「比較項目」のことです。例えばスマートフォンの場合、「画面サイズ」「価格」「カメラ性能」などが該当します。顧客が購入を判断する際の決め手となる要素を、過不足なく抽出することが分析の質を左右します。

水準(Level)

各属性における「具体的なスペックや値」を指します。属性が「価格」なら「5万円」「8万円」、属性が「容量」なら「128GB」「256GB」などが水準となります。回答者がイメージしやすいよう、現実的な範囲で設定することが重要です。

部分効用値(Part-worth Utility)

各水準が顧客にとってどの程度好まれているかを示す数値です。この値が高いほど、そのスペックが顧客満足に大きく寄与していることを意味します。各水準が顧客評価へ与える影響を、定量的に把握することが可能です。

重要度(Importance)

商品選びにおいて、どの属性が最も意思決定に影響を与えているかを示す指標です。各属性内の部分効用値の振れ幅(最大値と最小値の差)に基づき、全体を100%とした構成比で算出します。これにより、「価格」と「機能」のどちらがより強力な決め手かを確認できます。

コンジョイント分析がビジネスで重宝される理由

商品開発やマーケティング戦略において、コンジョイント分析が不可欠とされる3つの理由を解説します。

調査データの信頼性が高い

実際の購入シーンに近いトレードオフの状態を再現するため、建前ではなく、本音の評価を引き出せます。通常のアンケートでは見えにくい顧客心理を把握しやすい点が強みです。

抽象的な価値を数値化できる

デザインやブランドといった抽象的な価値を数値化し、「このデザイン、ブランドならいくらの価格上昇が許容されるか(支払意欲額)」を算出できます。感覚的な要素を金額換算できるため、商品開発における投資対効果の判断や、価格戦略を検討する際の有力な判断材料になります。

効率的な調査設計が可能

属性と水準を組み合わせたパターンは膨大になりますが、「直交表」という統計的手法を用いることで、精度を落とさずに質問数を大幅に絞り込めます。回答者の負担を最小限に抑えつつ、網羅的で質の高いデータを収集できるのが大きな特徴です。

コンジョイント分析の手順|5つのステップ

精度の高い分析結果を得るための、標準的な実施フローを解説します。

1.属性と水準の決定

まずは商品の「属性(比較項目)」と、その具体的な「水準(スペック)」を決定します。例えばノートパソコンなら、属性を「重量」「価格」とし、水準を「1kg」「1.5kg」のように設定します。属性が多すぎると回答者の負担が増え精度が下がるため、実務では4〜7個程度に絞り込むのが一般的です。

2.プロファイルの作成

次に、決定した属性と水準を掛け合わせ、商品のプロファイル(仮想の商品パターン)を作成します。すべての組み合わせを用意すると膨大な数になるため、直交表を活用し、全体の傾向を把握するために必要な最小限のパターンを抽出します。

3.コンジョイントカードの作成

抽出した各プロファイルを、回答者が評価しやすい「カード形式」に整えます。テキストだけでなく画像やアイコンを併用することで、実際の買い物に近い感覚を引き出し、回答の質を高めることができます。

4.アンケートの実施と評価の収集

作成したカードを用いて、回答者に「最も購入したいもの」を選択、あるいは順位付けや点数評価をしてもらいます。Webアンケートツールを活用すれば、提示順のランダム化やデータの自動集計を効率的に行えます。

5.データの解析と結果の算出

収集したデータを統計解析し、各水準の「部分効用値」と属性ごとの「重要度」を算出します。これにより、どの要素が購買の決め手か、どの組み合わせが顧客に高く評価されるかといった結論が導き出されます。専用ソフトでの解析が主流ですが、簡易的な構成であればExcelでの分析も可能です。

Excelを用いたコンジョイント分析のやり方

専門的なツールがなくても、Excelの分析機能を活用すれば、コンジョイント分析を実施できます。ここでは、具体的な手順を解説します。

①データのダミーコーディング

Excelで質的データ(カラーやブランドなど)を扱うために、数値(0か1)に変換する作業です。


【手順】

1. アンケートの回答データとプロファイルをExcelへ入力
2. プロファイルに含まれる水準を「1」に変換
3. 含まれない水準を「0」に変換
4. 文字データを数値化し、分析可能な状態へ整理


例えば「色」という属性に「赤・青・白」の3水準がある場合、2つの列(赤・青)を作成し、両方が0なら消去法で「白」と判定させるのが統計上のルール(多重共線性への対策)ですが、一般的には、基準となる1水準を除いてダミー変数化します。

すべての水準を列にすると、多重共線性が発生し分析結果が不安定になる可能性があるため注意が必要です。

②重回帰分析の実行

準備したデータに対し、Excelのアドイン「データ分析」にある「回帰分析」を実行します。


・目的変数(Y): アンケートの評価スコアや順位(順位データを扱う場合は専用手法を用いるケースもある)

・説明変数(X): ダミーコーディングした各水準の0/1データ


これにより、各要素が総合評価にどれほど寄与しているかを算出できます。

③部分効用値と重要度の算出

重回帰分析で出力される「係数」が、各水準の部分効用値に相当します。係数を確認すれば、どの水準が評価にプラスに働いているかが分かります。

 

さらに、各属性内での係数の最大値と最小値の差から重要度を算出し、グラフ化することで、商品開発の意思決定に役立つ資料が完成します。

Excelで行う際の注意点

Excelで算出する際は、下記に注意して行いましょう。


・「データ分析」の表示: Excelの「データ」タブに「データ分析」が表示されていない場合は、[ファイル] > [オプション] > [アドイン] から「分析ツール」を有効にする必要がある。

 

・標本数:Excelの重回帰分析は手軽だが、回答者数(サンプルサイズ)が少なすぎると、算出された係数の信頼性が低くなるため、十分なデータ量を確保することが重要。


 

コンジョイント分析の結果の活用方法

算出したデータをどのように戦略へ落とし込むか、4つの具体的な活用方法を解説します。

最適な商品スペックの特定

各水準の部分効用値を合算することで、顧客にとって最も魅力的な組み合わせを特定できます。商品開発において、「どの機能を採用し、どれを削るべきか」というトレードオフの判断を、個人の勘ではなくデータに基づき客観的に行えるのが大きなメリットです。

価格設定のシミュレーション

価格属性の効用値から、顧客の「支払意欲額(WTP)」や価格弾力性を把握できます。「1,000円値上げした場合、魅力度はどの程度下がるか」「新機能の追加でいくらまで値上げが許容されるか」といった予測が可能です。コストと顧客満足のバランスを最適化する価格設定に役立ちます。

未提示パターンの予測

アンケートで実際に提示していない組み合わせについても、部分効用値から評価を予測できます。一度分析モデルを構築してしまえば、市場環境の変化や新たなアイデアが生じた際、追加調査なしでスピーディーにそのポテンシャルを検証できるのが特徴です。

市場シェアのシミュレーション

自社と競合のプロファイルを比較し、顧客の選択確率から市場シェアをシミュレーションします。「自社商品のスペックを変更し、競合からどの程度シェアを獲得できるかを試算する」といった、具体的な競争戦略をシミュレーションできるため、経営戦略における強力な武器となります。

コンジョイント分析を成功させるための注意点

精度の高い結果を得るためには、調査設計においていくつかの注意点があります。

属性は補償的にする

設定する属性は、互いに「補償的」な関係(一方のマイナスを他方のプラスで補える状態)である必要があります。例えば「デザインは少し不満だが、価格が安ければ納得できる」といった、トレードオフが成立する関係です。

 

「この機能がなければ絶対に買わない」という必須条件を属性に含めると、分析結果が極端に偏り、他の属性の価値が正しく計測できなくなるため避けるべきです。

水準設定は現実的なものにする

市場であり得ない極端な設定は避けましょう。「最高スペックなのに価格が0円」といった非現実的なプロファイルが提示されると、回答者は真剣な比較を放棄してしまいます。

 

また、実現不可能な組み合わせを回答者が選んでも、商品開発の役には立ちません。技術的な制約や利益率を考慮した、ビジネスとして成立する範囲で水準を設定することが重要です。

適切な調査対象者を選定する

分析の精度は「誰に聞くか」に大きく左右されます。対象商品に全く関心がない人に調査を行っても、回答が不規則になり、データの信頼性が損なわれます。「直近1年以内に購入を検討している層」など、実際の購買層に近いターゲットを正確に抽出し、回答を依頼することが重要です。

コンジョイント分析についてよくある質問

コンジョイント分析の実施にあたり、よくある質問をまとめました。

Q:属性や水準はいくつまで設定できる?

理論上の上限はありませんが、回答者の集中力を考慮すると、属性は5〜7個程度、各水準は3〜5個以内に収めるのが一般的です。多すぎると「コンジョイント・カード」の比較が困難になり、回答の精度が低下する傾向にあるため注意しましょう。

Q:コンジョイント分析は統計の専門知識がないと難しい?

基本的な考え方と実施手順を理解していれば、Excelの「回帰分析」機能で算出可能です。ただし、属性の選び方や直交表の作成には一定のコツがあります。より精緻な市場シェア予測や、複雑な相互作用まで分析したい場合は、専用ツールや専門の調査会社を活用する方が、投資対効果の高いデータを得られるでしょう。

Q:コンジョイント分析が向かない商品はある?

「スペックを比較して選ぶ」というプロセスがない商品には不向きです。例えば、レジ横でついで買いされる安価な日用品や、機能性よりも「直感的な好き嫌い」だけで決まるファッション性の高いアイテム、あるいは全く新しいカテゴリーで比較対象が存在しない製品などは、トレードオフが成立しにくいため、他の調査手法との併用が推奨されます。

コンジョイント分析を実施して戦略的意思決定を実現するならロイヤリティマーケティングへ

コンジョイント分析は、顧客の「本音」を数値化し、最適なスペックや価格を導き出す強力な手法です。この分析を活用することで、「どの機能を優先すべきか」「市場シェアを最大化する価格はいくらか」など、商品開発においてデータに基づいた意思決定が可能になります。

 

新商品企画やマーケティング戦略で確実な成果を狙うなら、ぜひ今回ご紹介した手順や注意点を参考に実践してみてください。

 

ロイヤリティマーケティングでは、貴社の課題に合わせた最適な調査設計から、市場シェア拡大のシミュレーションまで幅広くサポートいたします。より専門的で精度の高い分析や、それに基づいた具体的な戦略立案をご希望の方は、豊富な実績を持つ弊社へお気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら

コラム記事一覧

お気軽にお問い合わせください

詳しくお知りになりたい方は
お問い合わせ