コラム
2025-06-12
DX人材育成の方法は?必要なスキルや育成のメリット、具体的な事例を紹介

DXを本質的に推進するには、ツールの導入だけでなく、現場で活躍できる人材の育成が不可欠です。今回は、DX人材の育成方法や手順、実際の事例、成功に導くポイントについてわかりやすく解説します。自社に合った育成のヒントを得たい方に役立つ内容ですので、最後までご覧ください。
目次
DX人材育成とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルを抜本的に見直し、企業の価値を高める取り組みのことです。そして、それを実行に移すためには「人」が欠かせません。
DX人材育成とは、こうした変革を推進できる人材を、社内で計画的に育てていく取り組みのことです。企業が持続的に成長していくための基盤として、多くの組織が力を入れ始めています。
DX人材とはどのような人材か

DX人材とは、デジタル技術やデータの力を使って課題を解決し、組織や事業の変革を実現できる人材のことです。ただし、すべてのDX人材が同じ役割を担うわけではありません。企業によって求められる人材像は異なり、大きく分けて2つのタイプが存在します。
1つ目は、技術に強いタイプです。主にエンジニアやデータアナリストなどが該当し、AIやクラウド、データ分析などの専門スキルを活用して仕組みやサービスを作る役割を担います。
2つ目は、業務やビジネスに精通したタイプです。企画や営業など、現場に近い職種の中で、課題の本質を見極め、デジタルの力を使って業務を変える役割を担います。このタイプのDX人材は、変化を受け入れて周りを巻き込みながら、現場から変革を起こしていく力が必要です。
どちらのタイプの人材もDXには欠かせませんが、育成を進める際は「自社に必要なのはどのタイプなのか」をはっきりさせることが重要です。方向性が曖昧なまま研修を行っても、実務との関連性が見えづらく、成果につながりにくくなります。
DXの人材育成を始める際は、まずどの部門でどんな変革を目指すのかを明確にし、それに合った理想の人材を組織内で共有するところからスタートしましょう。
DX人材が求められる背景

現在、DX人材の必要性が急速に高まり、企業で人材育成が推進されているのは、企業を取り巻く環境が大きく変化しているためです。技術の進化に加え、社会のニーズや働き方そのものが変わり、従来のやり方では立ち行かなくなってきています。
例えば、業務の効率化が急務となっている中で、属人的な対応や紙ベースの管理に限界を感じている企業は少なくありません。また、消費者の行動や価値観も多様化し、データを活用して的確な施策を打つ必要が出てきています。
こうした状況を打開するには、単なる「ITツールの導入」だけでなく、それを使って業務や事業を根本から変えていける人材が求められます。つまり、システムを使いこなすだけでなく、変化を起こす力を持った人材=DX人材の重要性が高まっているのです。
とはいえ、DX人材の採用市場は競争が激しく、十分な人材の確保は容易ではありません。そのため、多くの企業が社内人材の育成に舵を切り、自社で必要な人材を段階的に育てる方法に注目し始めています。
こうした背景から、DX人材育成は「できればやったほうがいい」取り組みではなく、「組織が今後も存続していくために欠かせない投資」として位置づけられつつあるのです。
DX人材を育成するメリット
DX人材の育成には時間もコストもかかる一方で、それを上回るメリットがあります。
変革に対応できる組織になる

DX人材の育成によって得られる代表的なメリットは、変化に強い企業体質を育めることです。業務課題を自ら見つけ、デジタルの力で改善へ導ける社員が増えると、組織全体の柔軟性やスピード感が大きく向上します。
例えば、現場の社員が非効率な業務フローを可視化し、ツールを活用して業務を再設計すると、単なる業務改善にとどまらず、部門全体の意識改革につながるでしょう。
人材の定着・スキルの底上げが進む

学びの機会がある環境では、社員の意欲が高まりやすく、組織への帰属意識が強まります。また、幅広い社員に機会を提供することで、組織全体の知識レベルと問題解決力の底上げにつながることもメリットです。成長機会を提供することで、定着率とスキルの向上が期待できるでしょう。
採用コストの削減につながる

外部から即戦力となるDX人材を確保しようとすると、採用広告や人材紹介費、選考・研修の負担など、コストが膨れ上がります。育成によって社内人材を戦力化すると、採用活動にかかる費用や手間の大幅な削減につながるでしょう。
自社で育成した社員は、業務や企業文化への理解が深く、早期に活躍できる可能性も高まります。加えて、育成を通じてナレッジが蓄積されれば、次の世代への教育も効率化され、長期的に見ても組織全体の生産性が向上することもメリットです。
DX人材を確保する3つの方法
DXを実現するには、人材の確保が最優先の課題です。採用だけに頼るのではなく、育成や外部人材の活用など、複数のアプローチ方法を組み合わせることで、継続的な推進体制を整えられます。
①採用による確保

DX人材の需要が高まる中で、外部からの採用は依然として有効な手段です。特に即戦力が必要な場合、経験や専門性を持った人材を確保することで、プロジェクトのスピードアップが期待できます。
採用を成功させるために、まずは自社にとって必要な人材像を明確にしましょう。業務課題を洗い出し、求めるスキルや役割を具体化することで、選考ミスやミスマッチのリスクを軽減できます。
また、求職者に対して企業のビジョンやDXへの取り組みを伝えることも不可欠です。理念や成長機会、チームの雰囲気といった情報を積極的に発信することで、「この会社でDXを推進したい」と思ってもらえる可能性が高まります。
②社内育成による確保

即戦力の採用が難しい現状では、社員を育成してDX人材に転換する方法が有効です。特に、既存業務や組織の事情を理解しているDX人材を育てることで、実行力と一貫性のある変革が進めやすくなります。
座学
DXに必要な知識や考え方を学ぶ入り口として、座学の実施は欠かせません。例えば、データ分析やAI活用の基礎、プロジェクト推進に必要なマインドセットを学ぶことで、現場での応用力が高まります。外部講師による講演や、ハンズオン形式の研修などを活用しましょう。
OJT
座学で得た知識を業務の中で実践するプロセスがOJTです。実際のプロジェクトに参加しながら課題発見・改善策立案・実行までを経験することで、実務で役立つスキルが身につきます。OJTを効果的に行うには、手順と目的を共有した上で、段階的に取り組むことが重要です。
ネットワーク構築
DXを継続的に推進するためには、社内外のネットワークを活かして知見を広げる姿勢も大切です。SNSを活用した最新情報のキャッチアップや、他社の取り組み事例の比較、業界イベントの聴講など、自社に適した方法を通じて知識やつながりを広げていきましょう。
③外部人材を活用した確保

社内のリソースだけでDXを進めることが難しい場合は、外部の専門家に協力を仰ぐのも有効な手段です。社内人材では補えないノウハウが求められるケースにおいて、フリーランスのエンジニアや業界に精通したコンサルタントなど、短期間でも高い専門性を持つ人材を活用できます。
DX人材育成において重視すべきスキル
DXを推進できる人材を育成するためには、学ぶ内容の明確化が不可欠です。ここでは、DX人材に求められる代表的な3つのスキル領域を紹介します。
データ分析やデジタル技術に関する理解

DXを実行する上で欠かせないのが、データとテクノロジーに対する理解です。業務上の情報を価値に変えるには、分析手法や活用視点を備えた人材の育成が欠かせません。基礎的なデータリテラシーに加えて、BIツールやデータマネジメントに関する知識も重要になります。
また、AIやクラウド、IoTなどのテクノロジーについても基本的な理解が必要です。すべての社員に高度なプログラミングスキルを求める必要はありませんが、業務上の課題と技術を結びつけ、自社の課題をテクノロジーでどう解決できるかを思考できる素地を育成しましょう。
なお、データ活用の代表的な職種として「データアナリスト」が挙げられます。必要なスキルや役割について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
データアナリストの仕事内容とは?必要な資ン格やスキル、未経験でなるにはどうしたらよいか解説 | 株式会社 ロイヤリティ マーケティグ
ビジネス視点とプロジェクト推進力

DX人材の育成に必要なのは技術スキルだけではありません。経営課題を把握し、最適な解決策を設計できる「ビジネス変革」の視点が不可欠です。特に業務プロセスの再設計や新たなビジネスモデルの構築に関する知識は、DXの根幹を担います。
さらに、複数の部門を巻き込んでプロジェクトを推進するためには、マネジメント力や合意形成、スケジュール管理といった実行力も必要です。育成プログラムの中でケーススタディやグループワークなどを通じて強化していきましょう。
チームを巻き込むコミュニケーション力

DXの成功には、組織全体の協力が不可欠であり、部門の垣根を越えて連携し、周囲を巻き込むコミュニケーション力が求められます。専門知識を持っていても、的確に伝えられなければプロジェクトは前に進みません。
具体的には、プレゼンテーションスキルや相手の立場を理解する対話力などが育成対象となります。また、変化への不安に寄り添う姿勢や、現場の声を聞く柔軟性もDX人材にとって重要な要素です。継続的な研修やロールプレイング形式のトレーニングを通じて育成しましょう。
DX人材育成の6つのステップ
DX人材の育成を効果的に進めるには、場当たり的な研修ではなく、段階的に構築されたプロセスが必要です。ここでは、DX人材を育成するために押さえておきたい6つの基本ステップを紹介します。
①現状把握と課題の可視化

まずは、自社のDX推進状況や人材面での課題を明らかにしましょう。どの部署でDXが進んでおらず、どのようなスキルが不足しているのかを把握しなければ、的確な育成施策を検討できません。現場のヒアリングや業務分析を通じて、DXにおけるボトルネックの可視化が必要です。
②DX人材の定義と対象者の選定

「誰を、どのようなDX人材に育てたいか」が明確になっていなければ、育成は形だけの取り組みになりかねません。課題を可視化したら、自社にとってのDX人材像を定義し、その要件に応じた対象者を選定しましょう。
例えば、全社横断のプロジェクトを推進する人材が必要なのか、それとも特定部門で現場改善を担う人材が求められているのかによって、必要なスキルや適性は異なります。
③育成プログラムの設計と導入

対象者が決まったら、育成の内容を具体化するフェーズに移ります。学ぶべきスキルやマインドセットを整理し、それに合ったプログラムを設計しましょう。プログラムには、座学・OJT・ケーススタディ・グループワークなど多様な形式が含まれることが一般的です。
導入の際には、単発で終わらない継続的な学びの仕組みを意識することも重要です。また、外部の研修機関や専門家を活用しながら、自社に合わせたカスタマイズも検討することで、より効果的な育成につながります。
④研修・実践によるスキル習得

育成プログラムの実行段階では、知識をインプットするだけでなく、現場での実践を通じてスキルを定着させることが必要です。座学とOJTを組み合わせた設計にすることで、習得の効果が高まります。
⑤評価とキャリアパスの設計

育成の効果を測るためには、実施後の評価が欠かせません。単なる受講状況の把握だけでなく、スキルの変化や業務成果への波及を確認することが重要です。定量・定性の両面から評価指標を設け、継続的に改善を図りましょう。
また、習得したスキルをどのようなポジションやキャリアにつなげるかを明示することも、育成のモチベーションを高める要素となります。成長の道筋が見えることで、社員の主体性も育まれるでしょう。
⑥定着と自走化を促す仕組みづくり

スキルを身につけた人材が現場で継続的に活躍するためには、学びを定着させる環境づくりが不可欠です。定期的な振り返りや勉強会の開催、育成者同士のコミュニティ形成など、組織全体で学びを支える仕組みが求められます。
さらに、自律的に行動できる風土が根づけば、社員が自ら課題を発見し、改善に取り組む好循環が生まれるでしょう。育成が単なるイベントで終わらないように、現場との接点を持ち続ける工夫が重要です。
DX人材育成の取り組み事例
共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する弊社は、1億人超の会員基盤と多様なデータを強みに、企業のマーケティングを支援する会社です。事業で培った知見をもとに、DX人材の育成にも力を入れており、教育機関や企業との連携による取り組みを進めています。
ここでは、そうした事例の一部を紹介します。
教育機関との連携による人材育成

1つ目の事例は、中央大学との教育連携です。弊社のデータアナリスト2名が兼任講師として授業を担当し、学生に向けてデータ分析や価値観マーケティングの演習を実施しました。企業のリアルな活用事例に基づいた講義を通じて、実務に近いスキルや視点を提供する取り組みです。
Pontaリサーチを活用したデータ演習は、DX人材育成における実践的な学びの機会となりました。大学教育の中で企業が積極的に関与する事例としても意義があり、今後も継続を予定しています。
他社との協業による育成支援

2つ目の事例は、エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)との協業です。弊社は、H2Oのアナリティクス力強化に向けて、データアナリストの育成を支援しています。リアルとオンラインの接点を強化しながら、顧客満足度の向上を目指し、新たなビジネス展開も検討中です。
DX人材育成を成功させるポイント
育成の成果を実務に結びつけるには、単に研修を実施するだけでは不十分です。現場での実践につなげ、DX推進を担う人材を育成するには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
経営層と現場を同時に巻き込む

DX人材の育成を成功させるには、対象者だけでなく経営層と現場の意識がそろっていることが不可欠です。トップが明確なビジョンを示し、現場が業務と結びつけて、実のある教育体制を構築しましょう。
単発で終わらせず継続的に育成を運用する

一度の研修で終えるのではなく、小さなプロジェクトなどを通じて段階的に経験を積み重ねていくことが効果的です。「実践→振り返り→改善」というサイクルを継続し、定期的なスキルアップや現場での実践機会を設けましょう。
自社に合った育成方法を選ぶ

育成プログラムは「他社がやっているから」ではなく、自社の課題や現場の特性に応じて設計する必要があります。業界や組織の文化、DX推進の成熟度、社内の課題に合わせて、内容や進め方を柔軟に設計しましょう。場合によっては、外部リソースを組み合わせる判断も必要です。
ロイヤリティ マーケティングは“対話”を大切にした人材育成に取り組んでいます
DX人材の育成の最大のメリットは、組織の変革を支える確かな力を社内で蓄積できることです。社員一人ひとりの可能性を引き出すことで、変化に強い柔軟な組織づくりにもつながります。
しかし、単に研修を行うだけでは実践的な力が身につかず、DXの加速にはつながりません。学びを実務に活かすには、企業全体での育成設計が必要です。
企業のマーケティング活動を支援することでDXの実現を後押ししている弊社は、社内において“対話”を軸とした人材育成に取り組んでいます。階層別研修やGROW面談、キャリア登録制度などを通じて、社員が主体的に学び、成長し続けられる仕組みです。
人財開発 – Work field – 株式会社ロイヤリティ マーケティング採用サイト – Surprise from “Analyze”
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