コラム
2025-06-12
認知度調査とは?手法や活用事例などを知ってブランドや企業戦略に役立てよう

ブランドや商品が「どれだけ知られているか」を可視化する認知度調査は、マーケティング戦略の起点です。今回は、認知度調査のメリットや活用事例、注意点までを網羅的に解説します。新商品の浸透度を測りたい方やブランド価値を高めたい方に必読の内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
認知度調査とは
認知度調査とは、商品名や企業名、ブランドなどがどのくらい人に知られているかを明らかにするための調査です。認知度とよく似た言葉に「知名度」がありますが、両者には明確な違いがあります。
認知度と知名度の違い
・知名度:名前を知っているかどうかを問う、表層的な認識
・認知度:名前に加えて、その特徴や強み、価値などを理解しているかを測る
例えば、「この会社の名前は知っているが、何をしているかは知らない」というケースでは、知名度はあるが認知度は低い状態です。認知度調査では、“表面的な認識”と“中身までの理解”を区別しながら、ブランドが市場にどのように受け入れられているかを客観的に把握します。
なお、認知度調査は企業や商品だけでなく、社会的なテーマに対する生活者の意識を把握する際にも用いられます。共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する弊社では、全国2万人超のPontaリサーチ会員を対象に「サステナブルに関する意識調査」を実施しました。
認知度調査のメリット

認知度調査を行うメリットは、主に次の2つです。
市場での立ち位置が明確になる
認知度調査を通じて、自社ブランドや商品が市場の中でどの位置にあるかを把握できます。単に競合と比較するためだけでなく、自社の強みや課題を可視化するうえでも重要です。
例えば、性別・年代・地域別に集計を行えば、どの層にどれだけ届いているか、認知に偏りがあるかなどが明確になります。認知度調査で得たデータは、ブランド戦略やプロモーション展開の見直しに活用可能です。
マーケティング施策の改善点を発見できる
認知度調査は、広告やキャンペーンなどの施策が狙ったターゲットに届いているかを確認する手段としても有効です。例えば「広告を出しているのに、ブランド名を思い出してもらえていない」といった場合には、伝え方や媒体選定に問題がある可能性があります。
また、名前だけ知られていて、具体的な特徴やメリットが理解されていない場合は、ブランドの伝え方そのものを見直す必要があるでしょう。どの情報が届いていないのかを明らかにすることで、訴求の方向性を調整しやすくなります。
認知度調査を実施するタイミング

認知度調査は、やみくもに行えばよいというものではありません。目的に合ったタイミングで実施することで、施策の検証や次の一手につながる具体的なデータが得られます。
売上が伸び悩んでいるタイミング
商品の売上が期待よりも伸びないとき、その原因が「知られていないこと」にある可能性があります。認知度調査を行えば、「認知されていないのか」「知ってはいるが興味を持たれていないのか」といった、マーケティング課題のボトルネックを可視化可能です。
例えば、ターゲットの中でも特定の年代や地域で認知度が低いと判明すれば、その層に向けた広告や販促を強化できます。認知→関心→比較→購入というプロセスのどこで離脱しているかを分析することで、施策の見直しがしやすくなるでしょう。
新商品やリニューアルのタイミング
新しい商品を市場に投入したときや、既存商品のリニューアル直後は、その認知度を確認する絶好のタイミングです。調査によって、どのチャネルを通じて知ってもらえたのか、またはどの程度浸透しているのかが数値で明らかになります。
仮に商品が十分に知られていない場合には、情報発信の方法に課題があるかもしれません。反対に、認知度は高いのに売上が伸びていない場合には、訴求内容や価格、販売チャネルの見直しが必要です。
ブランド施策を検討するタイミング
企業全体のブランド認知を向上させたいと考えているときにも、認知度調査は欠かせません。現在の認知の状態を把握することで、ブランドの価値をどう伝えるか、どこに力を入れるべきかが見えてきます。
また、KPIを設定する際の基礎データとしても有効です。例えば、「今はどのくらい知られているか」「目指すべき認知率は何%か」といった目標を数値で管理することで、ブランド活動全体の戦略設計にも役立ちます。
認知度調査の主な手法
認知度調査を正確に行うには、目的に応じた調査手法を選ぶことが重要です。ここでは代表的な手法を5つ紹介します。それぞれの特徴や注意点を把握し、最適な方法を検討しましょう。
インターネット調査

インターネット調査は、広く活用されている認知度調査の手法です。パソコンやスマートフォンに向けてアンケートを配信し、回答を収集します。数値化しやすく、短期間で大量のデータが得られることがメリットです。
弊社では、約250万人のPontaリサーチ会員を対象に、精度の高い調査を実施しています。単独パネルのため、他のアンケートに影響されにくく、信頼性の高い結果が得られる点が特徴です。調査設計から集計・分析まで専任スタッフが対応し、最短10営業日で納品いたします。
インターネットリサーチ| 株式会社 ロイヤリティ マーケティング
インタビュー

インタビュー調査は、商品やブランドに対する印象や名前を覚えている理由などを、対話形式で掘り下げて聞き出す認知度調査の手法です。数値では捉えにくい、顧客の本音や背景にある心理を理解するために活用されます。
特に、ブランドイメージや購入のきっかけといった「なぜそう感じたのか」「なぜ選んだのか」といった深層心理を知りたい場面で有効です。
グループインタビュー
グループインタビューは、複数の対象者に集まってもらい、モデレーターがテーマに沿って意見を引き出す認知度調査の手法です。参加者同士の会話によって自然な反応が引き出されやすく、広告の印象や商品理解の実態を把握するのに適しています。
弊社のグループインタビューでは、調査後に得られた意見と購買データを組み合わせた分析が可能です。認知や印象だけでなく、実際の購買行動との関連性まで可視化できます。
デプスインタビュー
デプスインタビューは1対1の面談形式で実施し、個々の顧客の意識や行動を深く掘り下げる認知度調査の手法です。購買理由やブランドへの信頼感、商品を選ぶときの価値観など、定量調査では拾いにくい情報を丁寧に引き出します。詳しくは下記コラムをご覧ください。
デプスインタビューとは?メリットやデメリット、調査の流れなどを解説 | 株式会社 ロイヤリティ マーケティング
弊社のデプスインタビューでは、インタビュー対象の商品に関する購買データとの掛け合わせが可能です。これにより、認知や印象だけでなく、実際の行動との関連を把握したより深い分析につながります。
会場調査

会場調査は、事前に選定した条件に合致する対象者を会場に集め、その場でアンケートや評価を行う認知度調査の手法です。例えば、新商品のパッケージや広告動画などを直接見てもらい、リアルな反応を収集するといった方法があります。
弊社の会場調査はクローズドな空間で調査を行うため、情報管理の観点でも安心でき、情報漏洩のリスクを抑えられるのがメリットです。
郵送調査

郵送調査は、紙のアンケート用紙を対象者の自宅や職場に送付し、記入後に返送してもらう認知度調査の手法です。インターネット環境に依存せず、高齢層や法人を対象とした調査にも適しています。
認知度調査の基本的な進め方
認知度調査は、事前の設計が結果の精度を大きく左右します。ここでは、認知度調査を効果的に進めるための基本ステップを7つに分けて紹介します。各工程の目的や注意点を整理することで、信頼性の高い調査結果が得られるでしょう。
①調査の目的の設定

まずは認知度調査の目的や背景を明確にします。例えば「新商品の浸透度の確認」など、何を知りたいのかを具体的に言語化しましょう。認知度調査の目的があいまいなまま進めてしまうと、設問の設計や対象者の選定が適切に行えず、得られたデータも意思決定に活用しづらくなります。
②市場範囲の設定

次に、認知度調査の対象となる市場の範囲を設定します。市場規模の考え方にはTAM、SAM、SOMの3つがあり、認知度調査ではSOMを選ぶのが一般的です。
市場規模の3つの分類(TAM・SAM・SOM)
・TAM(Total Addressable Market):製品やサービスが理論上アプローチできる最大の市場規模
・SAM(Serviceable Addressable Market):自社が現実的にサービス提供可能な範囲の市場規模
・SOM(Serviceable Obtainable Market):現実的に自社がシェアを獲得できる見込みの市場規模
認知度調査の範囲が広すぎると、リーチの薄い層まで含まれて結果がぼやけ、逆に範囲が狭すぎると市場全体での立ち位置が見えづらくなります。ターゲットの商圏や販路に応じた的確な範囲設定を行いましょう。
③割付の設計

割付とは、認知度調査で回答を集める対象を属性ごとに分類し、均等または実態に即した比率で割り当てる作業です。例えば、年齢別や業種別、エリア別でデータを比較したい場合、それぞれのセグメントで十分な回答数が得られるよう設計します。
分析の信頼性を担保するには、1セグメントあたり最低でも100以上集めましょう。割付設計を複雑にしすぎると費用や時間もかかるため、分析の目的に沿った必要最小限の軸に絞ることがポイントです。
割付の主な種類
・均等割付:各セグメント(例:企業規模や年齢層など)に同じ人数を割り当てる方法で、比較しやすさを重視する調査に適している。
・人口構成比割付:実際の市場の割合に応じてサンプル数を配分する方法で、 結果を実態に近づけたい場合に有効
④サンプル数(N数)の設定

N数とは、調査を実施するサンプルの総数です。割付の内容や分析の深度に応じて、どのくらいの規模でデータを集めるべきかを決定します。例えば、6つの割付軸で分析する場合、それぞれ100件ずつの回答が必要となるため、最低でも600件以上のN数が必要です。
調査の目的と予算を照らし合わせながら、現実的な範囲で計画を立てましょう。
⑤スクリーニング調査の実施

スクリーニング調査とは、認知度調査の前に対象者を絞り込むために行う事前調査のことです。年齢・性別・職業・年収など、あらかじめ設定した条件に合う人だけを選び、本調査へ進んでもらいます。
例えば、料理キットの認知度を調べたい場合、過去1年以内に自宅で調理をした人だけに絞って本調査を行う、といったケースです。この段階で、適切な質問を通じて認知度調査の精度を高めましょう。
⑥本調査の実施

スクリーニングを通過した対象者に対して、本調査を実施します。調査の意図に沿った回答を得られるように質問を構成しましょう。
⑦分析とレポート作成

最後に、認知度調査で収集したデータを集計・分析し、レポートにまとめましょう。割付軸に応じたクロス集計を行うことで、年齢や性別、地域などの属性ごとの傾向を把握できます。
質問項目の設計
認知度調査では、目的に応じてさまざまな角度から顧客の理解度を測る必要があります。ここでは、認知の深さや伝わり方を多面的に捉えるための代表的な質問項目を5つチェックしましょう。
純粋想起

純粋想起とは、選択肢を与えずに自由に答えてもらう形式の質問です。「炭酸飲料と聞いて思い浮かぶものを教えてください」など、顧客があるカテゴリを聞いて真っ先に思い浮かべるブランド名や商品名を把握するのに適しています。
助成想起

助成想起とは、選択肢やヒントを提示し、その中から知っているものを選んでもらう質問形式です。「次の飲料ブランドのうち、知っているものをすべて選んでください」といった設問が該当し、選択肢に入っていれば最低限の認知があると判断でき、日用品などの調査によく使われます。
認知経路の確認

認知経路の確認とは、顧客が商品やサービスを「どこで知ったのか」を把握するための質問です。「この商品を初めて知ったきっかけを教えてください」などの設問で、広告、SNS、店頭などの影響度を確認できます。
広告・プロモーション接触

広告やプロモーションへの接触状況の確認は、認知度のきっかけや影響度を把握するのに有効です。「この広告を見たことがありますか?」「どこで見ましたか?」といった設問で、施策の到達度や媒体ごとの効果を分析できます。
商品やサービスの理解度測定

単に名前を知っているだけでなく、商品やサービスの特徴まで理解されているかの確認も重要です。「この商品の特徴として知っているものを選んでください」といった設問で、伝えたい価値が顧客に届いているかをチェックします。
認知度調査の活用事例
認知度調査は、マーケティング戦略の各フェーズで広く活用されている手法です。数ある事例の中から、4つの事例を紹介します。
新商品やリニューアル時の浸透度チェック

認知度調査は、新商品を発売した後やリニューアルを行った際に、その浸透度を確認するために活用されています。初動のマーケティング戦略が機能しているかを判断し、施策の効果や改善点を見つけるための重要なステップです。
ターゲット別の認知ギャップを把握

認知度調査の代表的な事例として、性別・年代・地域などのターゲット層ごとに認知度の差を分析するケースがあります。ターゲット別に認知の偏りを把握することで、次の施策でどこに注力すべきかを明確にすることが可能です。
ブランド戦略や広告施策の効果検証

広告施策の前後での認知度調査は、どのメッセージが響いたのか、どの媒体が効果的だったのかを可視化することに活用されます。実施した施策の効果をデータで裏付ける際によく見られる事例です。
定点観測によるブランドポジションの確認

長期的な視点でブランドの認知推移を追う認知度調査の事例もあります。一定期間ごとに同じ設計で調査を実施すれば、ブランドのポジションや競合との違いを定量的に分析することも可能です。特に企業全体のブランディング戦略においては重要な情報源となります。
認知度調査を行う際の注意点
最後に、認知度調査を進めるうえで見落としやすい注意点を紹介します。
ターゲットの選定に注意する

認知度調査では、目的に合ったターゲットの選定が欠かせません。全国の認知度を把握したいのか、特定の地域に絞りたいのかによって、設計すべき対象は大きく変わります。調査対象がずれていると、施策の方向性を誤る可能性があるため、注意点として最初に確認すべき項目です。
設問の順番や表現がバイアスにならないようにする

認知度調査では、設問の配置や言い回しが、回答者に影響を与えることがあります。例えば、特定のブランド名の提示後「このブランドを知っていますか」と尋ねると、本来の認知とは異なる数値が出る可能性があります。質問の順番や表現に注意し、調査内容を慎重に決めましょう。
想起と認知の混同に気をつける

認知度調査の3つ目の注意点は、想起と認知の混同を避けることです。認知とはブランドロゴや商品を見聞きしたとき「名前や商品を知っている」「見たことがある」と認識する状態であり、想起は見たり聞いたりしなくても「名前や商品を思い出せる」状態を指します。
例えば「炭酸飲料といえば?」と聞いてブランド名が挙がるのは想起、「この中で知っている飲料は?」と選ばれるのは認知です。「想起」は「認知」よりも記憶への定着度が高く、購買行動に直結しやすいため、両者を混同すると意図と異なる結果になる恐れがあります。
選択肢の量と順番を工夫する

4つ目の注意点は、質問の選択肢の提示方法に配慮することです。選択肢が多すぎると、回答者の集中力が切れたり、適当に選ばれたりするリスクが高まります。また、選択肢の順番も重要で無作為に並べたり、毎回ランダム化するなどの工夫が必要です。
マーケティング戦略に認知度調査を活かすならロイヤリティ マーケティングへ
認知度調査は、自社の商品やブランドがどれだけ市場に浸透しているかを可視化できる有効な手段です。新商品の浸透度確認やターゲット別の認知ギャップの把握など幅広く活用でき、マーケティング施策の改善や戦略立案の精度向上に役立ちます。
しかし、調査の設計や対象者の選定、設問の順序などに不備があると信頼性の低い結果となり、意思決定に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。精度の高い認知度調査を行うには、専門的な設計と的確な分析が不可欠です。
弊社では、Ponta会員約250万人の単独パネルを活用し、購買・行動データを掛け合わせた精度の高い認知度調査を実施しています。設計から集計・分析までを一貫して対応しており、目的に応じてインターネット調査やグループインタビューなど多様な手法を選択可能です。
生活者の実態に即した認知度調査を通じて、ブランド価値の向上や戦略の最適化を目指したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
お気軽にお問い合わせください
詳しくお知りになりたい方はお問い合わせ