コラム
2024-10-24
市場規模とは?調べ方や把握する目的などを活用事例とあわせて解説
市場規模の把握は、ビジネス戦略の立案や意思決定に不可欠だといわれますが、市場規模とは一体何を指すのでしょうか。本記事では、市場規模の種類から調べ方、算出手法、活用事例までを、わかりやすく解説します。市場規模を適切に把握・活用し、ビジネスを成功に導きましょう。
目次
市場規模とは
市場規模とは、特定のビジネス分野における市場の大きさを指します。具体的には、一定期間内の業界全体の総売上のことです。例えば、ある分野の年間販売数やサービスの取引金額などが市場規模を知る指標となります。
市場規模の把握は、戦略的な意思決定に欠かせません。市場規模は見込み売上や見込み需要の判断材料となり、新しいビジネスを始めたり、事業の成長戦略を立てたりするときに役立ちます。
市場規模を把握する目的
市場規模を把握する目的は主に3つあります。
業界を把握する
1つめの目的は、業界全体の状況を理解することです。市場規模の把握によって業界におけるニーズがわかると、ビジネスの方向性を決める際に役立ちます。例えば、市場規模が拡大傾向にあれば売上増加が期待できるため、設備投資の拡充を検討してもよいでしょう。
既存事業の成長戦略を見直す
2つめの目的は、既存事業において成長戦略を見直すことです。業界のトレンドや消費者のニーズが変化している場合、戦略戦略の立て直しが求められます。市場全体における売上の推移を比較すると成長率が予測しやすくなり、競争優位を保つことにつながるでしょう。
新規事業の成長可能性を探る
市場規模は、新規事業の立ち上げを判断する目的で活用されます。市場規模の把握によって、参入の余地や競合他社との比較、成長の見込みなどを検討し、適切な戦略を練ることが可能です。
市場規模の種類
市場規模は、TAM、SAM、SOMの3種類に分類できます。各概念は異なる範囲をカバーしており、TAMはSAMとSOMを内包し、SAMはSOMを内包する関係です。事業計画を立てる際は、3つの市場規模を段階的に検討し、より現実的で実行可能な戦略を立案しましょう。
TAM
TAM(Total Addressable Market)とは、ある製品やサービスのターゲットとなる可能性がある市場規模のことです。3種類の中でも最も広い範囲を示し、100%の市場シェアが達成された場合の数値が用いられます。
例えば、AI翻訳ソフトの市場において、世界中の消費者が購入できるAI翻訳ソフトの合計金額がTAMです。新規の事業参入の際にTAMを理解すると、市場全体での製品やサービスの需要を見極めるのに役立ちます。
SAM
SAM(Serviceable Addressable Market)とは、ある事業がアプローチできる市場規模を指します。別の言い方をすれば、TAMの中で、企業が実際にターゲットにできる顧客層のことです。
例えば、日本国内でのみサービスを提供するAI翻訳ソフトの開発会社のSAMは、世界ではなく日本のAI翻訳ソフトの利用者数に限定されます。SAMの把握は、特定のターゲット層の需要を理解するのに便利です。
SOM
SOM(Serviceable Obtainable Market)とは、ある事業が実際に獲得できる市場規模のことです。TAMやSAMに比べるとさらに規模が限定されているため、短期的な売上目標などの現実的な指標として使用されます。
例えば、自社のリソースや競合状況を考慮した上で、半年以内に獲得する顧客数などです。
市場規模の調べ方
市場規模の調べ方にはさまざまな方法がありますが、ビジネスを成功に導くには正確な把握が不可欠です。ここでは、信頼性の高い情報源に基づく市場規模の調べ方について詳しく解説します。
官公庁の資料を活用する調べ方
官公庁が公表する統計資料は信頼性が高く、無料で入手できる貴重な情報源です。以下に、主な官公庁の統計資料とその活用方法を紹介します。市場規模に関する信頼性の高いデータを入手し、業界全体の規模を把握しましょう。
工業統計調査
工業統計調査とは、経済産業省が実施する製造業に関する統計調査です。国内の製造業全体の規模や生産量を把握したり、業界ごとの成長傾向をつかんだりするときに役立ちます。
例えば、印刷産業の市場規模を把握したい場合、工業統計の製造品出荷額の数値などをチェックしてみましょう。
法人企業統計調査
法人企業統計調査とは、日本の企業活動の実態を明らかにする調査のことです。「年次別調査」と「四半期別調査」があり、売上高や設備投資などを調べて公表します。国内総生産(GDP)の改定値の算出にも活用される注目度の高い調査方法です。
例えば、各企業の純資産や損益などがわかると、市場全体の企業業績の動向を把握できます。
情報通信白書
情報通信白書とは、総務省が情報通信の状況を把握するために実施している調査です。通信業界やIT業界の市場規模の把握に適しており、通信技術の普及やインターネット利用率といった最新の業界動向を知るのに役立ちます。
例えば、クラウドサービスの市場規模を知りたい場合、情報通信白書の「企業におけるクラウドサービスの利用動向」などのセクションを参照するとよいでしょう。
e-Stat
e-Statとは、日本の官公庁が提供するデータベースを指します。さまざまな官公庁の統計データを一元的に検索でき、必要なデータを効率よく取得して市場規模を把握可能です。
例えば、建築会社がリフォーム市場の規模を調べる場合、「リフォーム」という言葉で検索すると、工事の市場規模や業界の動向に関する多数の資料を閲覧できます。
また、共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する弊社は、Pontaのビッグデータを活用したマーケティング支援も行っており、総務省統計局の「家計調査」データを基にした消費支出ダッシュボードを「Tableau Public」上で公開しています。
本ダッシュボードでは、消費支出の全体的な動向や、地域・品目別の支出の推移などを視覚的にわかりやすく把握することが可能です。詳しくは下記のコラムをご覧ください。
総務省「家計調査」をビジュアライズ!消費動向を毎月確認できるダッシュボード公開 | 株式会社 ロイヤリティ マーケティング
業界団体のデータを利用する調べ方
業界団体が公表しているレポートや調査データも、市場規模の把握に役立ちます。例えば、日本建設業連合会や日本電機工業会などです。特定の業界に特化した詳細なデータを入手でき、業界内のトレンドの把握や成長予測に活用できます。
調べたい市場規模に関する業界情報が見つからないときは、関連する事業や業界のデータをリサーチしてみましょう。直接関係なくても、参考になる情報が得られる場合があります。
民間企業からデータを購入する調べ方
官公庁や業界団体の資料から市場規模を把握するための情報を得られないときは、民間企業が提供するデータを活用しましょう。費用がかかる場合もありますが、詳細なデータが手に入れば正確な市場規模の把握に役立ちます。
市場規模の算出方法
知りたい情報が見つからない場合は、公開されているデータを活用し、自分で市場規模を算出することも可能です。さまざまな方法の中から、今回は代表的な3つの方法を紹介します。
企業の売上高とシェアから算出する方法
企業の売上高と市場シェアがわかれば、市場全体の規模を算出することが可能です。具体的には、「市場規模=売上高/業界シェア」という計算式で求められます。
例えば、業界トップの企業Aの売上高が200億円で業界のシェア率が20%の場合、市場規模は200億円/0.2=1000億円です。
フェルミ推定を用いて算出する方法
フェルミ推定とは、調査が難しい数値や規模を、限られた情報と論理的思考で推定する方法です。例えば、日本全国の女性の数を求める場合、女性が半分とすれば人口は1億2,000万人のため6,000万人となります。同様にして、大まかな市場規模も推定可能です。
フェルミ定理に決まったルールや方法はなく、人口や価格といった基礎的なデータがあれば予測できます。ただし、「人口の半分が女性だとすれば」のように、あくまで仮定した情報に基づいて算出するため、実際の市場規模とは大きく異なる可能性があることも覚えておきましょう。
消費者データに基づいて算出する方法
顧客数や客単価、利用頻度といったデータを活用すると、おおよその市場規模を導き出すことが可能です。計算式は「市場規模=顧客数×客単価×利用頻度」となります。
例えば、顧客数が1,000万人、客単価が5,000円、利用頻度が年2回の場合、市場規模は1,000万人×5,000円×2=1000億円です。
市場規模データの活用事例
市場規模に関するデータは、さまざまな形で企業の意思決定や戦略立案に利用されています。今回紹介するのは、弊社の3つの事例です。市場規模の活用方法に悩む方は、ぜひ下記の事例を参考にしてください。
Pontaリサーチを活用した市場把握
Pontaリサーチを活用すると、自社で顧客や競合のデータを用意できなくとも、市場規模を把握して事業に役立てられます。
例えばある飲料メーカーは、商品リニューアルに向けて市場を把握しようとしていたものの、社内に必要なデータがありませんでした。そこで、ご活用いただいたのが弊社のPontaリサーチとアナリティクスです。
アンケートで顧客の意識を把握し、ID-POSで購買行動を分析することで、意識データと行動データの両面で市場を把握しました。これにより、ターゲット層を詳細にペルソナ化し、商品開発に役立てていただけるようになりました。事例の詳細は以下をご覧ください。
企業のデータを整形・可視化する「COM-BI」
「COM-BI」とは、弊社のデータアナリストが、企業のデータを整形・分析し、わかりやすく可視化するサービスです。企業のデータに膨大なPontaデータや政府統計を組み合わせ、より精度の高い分析を可能にするダッシュボードを構築し、市場規模の把握に役立てます。
例えば、POSデータの活用用途を細分化し、ダッシュボードにまとめると、市場規模を把握するための指標として使用可能です。POSデータを蓄積するだけでなく、活用する仕組みが生まれ、店舗運営に役立てられます。この事例の詳細は、以下のコラムをご覧ください。
横断的購買データから市場を把握する「Ponta Adsリテール業態横断」
「Ponta Adsリテール業態横断」とは、コンビニエンスストア・ドラッグストア・EC・スーパーマーケットの横断的購買データを分析するマーケティングサービスです。複数の業態にまたがるデータを多面的に分析し、市場を的確に把握することで、戦略の最適化につなげます。
例えば、日用品メーカーが別の業態の購買状況を把握して、効果的な施策を立案することも可能です。自社商品の卸先の中で、特に売上が高い業態に注目し、購買データを詳細に分析すると、より効果的なマーケティング活動が期待できます。事例の詳細は、以下をご確認ください。
市場規模を調べる際のポイント
市場規模の正確な把握は、ビジネス戦略の立案や意思決定において不可欠です。ここでは、市場規模を調べる際の重要なポイントについて詳しく解説します。
目的をはっきりさせる
市場規模調査を行うにあたり、最初に調査の目的を明確にすることが必要です。目的が不明確なまま調査を進めても、得られたデータがビジネスに役立つとは限りません。
同時に、より正確なデータ分析を実現するためには、調査対象となる範囲や用語の定義の把握も不可欠です。例えば、自動車業界で市場規模を把握するときは、「小型車」と「軽自動車」の定義を明確にする必要があります。
仮説を立てる
市場規模調査は、より精度の高い事業計画を策定するための第一歩です。調査結果を単に眺めるだけでなく、事前に立てた仮説と照らし合わせ、今後の事業展開に活かしましょう。仮説を立てることで、調査すべき点が明確になり、より効率的な調査が可能になります。
ロイヤリティ マーケティングは市場規模の把握や活用を通じてビジネスを成功に導きます
市場規模の把握はマーケティング施策に役立ち、ビジネス全体の方向性を左右します。新規事業の展開や既存事業の成長に欠かせないことですが、変化し続ける市場の動向を追い続け、規模を正確に把握するのは簡単ではありません。
ロイヤリティ マーケティングは、最新のデータ分析技術と豊富な経験を活かし、企業の市場規模の把握と活用をサポートします。正確な市場理解に基づいた戦略立案により、ビジネスの持続的な成長を実現しましょう。
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