コラム

2023-07-03

ビッグデータを活用した解析方法とは?それぞれの定義や分析手法から理解しよう

近年、幅広い分野でビッグデータが解析されていますが、何を目的にどのような方法で分析されているのかご存知でしょうか。本記事では具体的な解析手法や、各方法のメリット・デメリットなどを詳しく解説します。効果的にビッグデータを解析したい方は参考になさってください。

ビッグデータを解析する目的とは?

ビッグデータとは、IT技術の発展で蓄積される膨大な量の多様なデータのことです。近年では、マーケティングや天気予報、医療、教育など幅広い分野で解析されています。では、ビッグデータの解析は一体何を目的におこなわれるのでしょうか。

 

ビッグデータについての基本的な知識は以下の記事で解説していますのでまず基礎的な知識を知りたい方はこちらをチェック。

 

ビッグデータとは?今更聞けない基本から身近な例を用いた活用メリットを解説

目的①消費行動を可視化する

ビッグデータを解析すると、従来は見えづらかった消費行動が可視化されます。例えばこれまで勘や経験に頼って経営していた店舗でビッグデータを解析すると、顧客が商品を購入しない理由が客観的データで可視化され、仕入れや商品陳列の効果的な改善につながることがあります。

 

ビッグデータの中でも消費行動に関するデータは活用しやすいデータのひとつです。購買データの活用方法については以下の記事中で解説していきます。

 

購買データはどう活用する?活用したいデータやメリットを基礎から解説

目的②業務を効率化する

ビッグデータを解析すると、季節ごとの需要や在庫の適正数、無駄なコストなどがわかるため、業務効率化を目的に利用されることがあります。例えば建築分野では、建材・コスト・工期などのビッグデータをまとめて管理することで、品質を向上させながら工期短縮も実現しています。

目的③未来を予測する

膨大なビッグデータを解析すると、精度の高い未来予測が可能になります。未来予測といっても感覚的なものではなく、データに基づいた論理的で説得力のある予測です。うまく活用すれば、ヒット商品の開発や競合優位性の確立につながることがあります。

ビッグデータを活用した5つの解析方法

ビッグデータを解析する方法はさまざまで、グループごとに分類して解析する手法や樹形図を作ってパターンを見出す解析手法などがあります。ここでは、ビッグデータを活用した5つの解析方法を簡単に解説。

ビッグデータを活用した解析方法①クロス集計

クロス集計とは、データを属性ごとに分類し、それらの相互関係を解析する統計方法です。例えば地域別のアンケートを実施し、集まったビッグデータを集計・分析・比較して、地域ごとの顧客ニーズの傾向を把握するなどの使われ方があります。

クロス集計の手順


クロス集計の手順

1. データを収集する属性を決め、アンケートを実施

2. Excel等を活用し、アンケート結果をまとめる

3. アンケートの結果から属性や項目を再度細分化し、アンケートを再実施する


 

クロス集計からわかること

ビッグデータをクロス集計して解析すると、単純集計では見えてこない属性別の傾向を読み取れます。例えば「キャンプに月1回以上行きますか?」という質問の場合、単純集計では「はい/いいえ」を答えた数値しかわかりませんが、性別で分類して集計すると男女の違いもわかります。

クロス集計のメリット・デメリット

クロス集計は解析結果がわかりやすく可視化され、Excelを使うとデータの抽出や表の作成が簡単なことがメリットです。一方で、属性を細分化するほど1つの属性に対するデータが少なくなり、説得力のある分析結果にするために多くのデータが必要になるデメリットもあります。


クロス集計のメリット・デメリットの例

● 例)100名の男女に対して動画配信サービス利用についてのアンケートを実施

● メリット:動画配信サービスの利用率が男女別や年齢別でわかる

● デメリット:30代女性が5人のみだった場合、データとしては少なすぎて説得力のある解析が難しい


 

クロス集計が役立つ場面

クロス集計は作成が簡単でわかりやすいため、ビジネスから家庭の家計簿まで幅広いシーンで利用できます。ビジネスでビッグデータを使って解析する場合は、企画書やプレゼンに取り入れる資料として最適です。

ビッグデータを活用した解析方法②ロジスティック回帰分析

ロジスティック回帰分析とは、端的に言うとある事象の発生率を解析する方法です。膨大なビッグデータの中にあるデータの関係性を比較・分析し、集計結果に対する原因を探ります。例えば、膨大な気象観測のビッグデータからの災害の発生率を予測するなどの活用例があります。

ロジスティック回帰分析の手順


ロジスティック回帰分析の手順(病気の発症率を調べる場合)

1. アルコール摂取量や喫煙本数など病気の発症要因となりうるデータの数値を抽出する

2. 用意したロジスティック関数にデータを当てはめる

3. 発症要因と発症有無との関係を解析する


 

ロジスティック回帰分析からわかること

ロジスティック回帰分析で発生率を推定できると、結果に対する要因を把握できます。例えば顧客増加という結果が得られたとき、その原因はWeb広告・商品の魅力・口コミのどれにあたるのかが理解できます。

ロジスティック回帰分析のメリット・デメリット

メリットは、結果の発生要因を把握し、将来実施する施策の効果を予測できることです。繰り返し解析していくと、最適な状態で施策を継続できます。ただし、あくまで過去に実施した施策をもとにした解析であり、全く実施経験のない施策の効果を予測するのは困難です。


ロジスティック回帰分析のメリット・デメリットの例

● 例)DMを見て商品Aを購入したかどうかを年齢別で調査する

● メリット:年齢と商品Aの購入率の関係を分析し、次のキャンペーンでは購入率が高い年齢層だけにDMを送って効率的にアプローチできる

● デメリット:DMを使った商品Aのマーケティングをしたことがなければそもそもデータがない


 

ロジスティック回帰分析が役立つ場面

ビッグデータのロジスティック回帰分析は、幅広い分野で活用可能です。気象データを用いた災害予測や医療現場での病気の予測、マーケティングにおける購入確率の予測に加え、製造過程における不良品の発生検知にも利用できます。

ビッグデータを活用した解析方法③クラスター分析

クラスター分析とは、集団(クラスター)の中で類似した集団をグループ分けし、グループごとの特徴や傾向を把握する方法です。データが膨大すぎて傾向が掴みにくかったり勘や経験に頼ったりしてきた事柄が、客観的かつシンプルになることで理解や考察がスムーズに進みます。

クラスター分析の手順


クラスター分析の手順

1. 解析対象となるデータを収集する

2. 類似性を元にグルーピングする

3. 各グループの特徴を観察する


 

クラスター分析からわかること

クラスター分析によって、膨大なビッグデータの中にある情報同士の関連性がわかります。例えば学校の学力を調べる場合、学年や教科などのグループ分けだとデータが多すぎますが、「5教科全体の点数が高い」「理系科目の点数が高い」などのクラスターで分けると理解が進みます。

クラスター分析のメリット・デメリット

メリットは、膨大なビッグデータが単純化され、理解が容易になることです。似たデータを抽出してわかりやすく分類するため、分析だけでおおまかな特性がつかめます。ただし、作成したクラスターの特徴や意味は自分で考察しなければならず、個人の判断に委ねられるのがデメリットです。


クラスター分析のメリット・デメリットの例

● 例)世代別に見る男性に人気の乗用車の車種を調べる

● メリット:「男性の世代別」「乗用車の車種」から類似クラスターを抽出すると、世代ごとに好まれる車種が客観的な数値で把握できる

● デメリット:世代別に好まれる具体的な車種の特徴は、客観的な数値を基に自分で考察しなければならない


 

クラスター分析が役立つ場面

ビッグデータのクラスター分析は、商品やサービスの開発に最適です。見込み顧客の潜在的なニーズがわかり、開発に役立てると成功率の高い商品が誕生することがあります。

ビッグデータを活用した解析方法④アソシエーション分析

アソシエーション分析とは、ビッグデータから連動して発生する事象を洗い出し、データ同士の関係性を見つける解析方法です。アソシエーション分析をおこなうことで、単純な集計だけでは見えてこない、意外な関係がわかることもあります。

アソシエーション分析の手順

アソシエーション分析は、店舗のPOS(point of sales)データ解析を目的に開発された手法ですので、POSレジのビッグデータを利用します。データを使って、ある商品を購入した顧客が他に何を購入したのかを分析することで、商品の相関性を数値で把握できるのです。

アソシエーション分析からわかること

アソシエーション分析で得られた解析結果から、商品やサービスの関連性がわかります。有名な活用例が「おむつ購入者はビールも購入する」という例です。これは北米のスーパーの調査にて判明したデータで、結果を受けておむつの近くにビールを配置したところ、店の売上がアップしました。

アソシエーション分析のメリット・デメリット

メリットは、商品の意外な関連性がわかることに加え、膨大なデータを必要とするため、ビッグデータと相性がよいことです。ただし、解析で導き出されるルールの扱いには注意が必要で、「Aを買う人はBも買う」を「Bを買う人はAも買う」と解釈すると結果に大きな差が出ます。


アソシエーション分析のメリット・デメリットの例

● 例)ある店舗では、解析によって「パソコン購入者は外付けHDDを同時購入することが多い」と判明した

● メリット:パソコン購入者に外付けHDDを勧めることで、売上げアップを期待できる

● デメリット:「外付けHDD購入者はパソコンを同時購入する」と逆方向に解釈すると期待した売上効果が得られない可能性がある


 

アソシエーション分析が役立つ場面

ビッグデータを使ってアソシエーション分析をおこなうと、同時に購入される商品同士の相関関係が数値でわかるため、小売店の効果的な商品陳列に役立ちます。また、ECサイトでは「この商品の購入者は他にこのような商品も見ています」といったリコメンドにも活用可能です。

ビッグデータを活用した解析方法⑤決定木分析

決定木分析とは、アンケートとクロス集計を繰り返すことで複数の要因から関係性を見出し、関連性の強い要因を見つける解析方法です。決定木(デシジョンツリー)とは、ビッグデータから作成する樹形図のことで、データ分類やパターン抽出に活用されます。

決定木分析の手順


決定木分析の手順

1. アンケート調査から得られた結果を元にクロス集計を繰り返す

2. 樹形図を作成してデータを分類する

3. 作成した樹形図を顧客の行動分析やターゲティングに利用する


 

決定木分析からわかること

ターゲットの絞り込みによって、自社商材の見込み客の属性が予測可能です。また、顧客満足度調査の要望をパターン別に分類すると、自社の商品やサービスに満足している顧客の属性を分類したり、満足度に影響を与える要因を把握することもできます。

決定木分析のメリット・デメリット

膨大なデータを解析できるため、ビッグデータとの相性がよく、データを可視化した状態で分類することで、優先順位がつけられることがメリットです。ただし、データの一部を深掘りしすぎると、そのデータのみに最適な結果となり、全体の傾向がつかめなくなるデメリットもあります。


決定木分析のメリット・デメリットの例

● 例)商品Aの購入者をビッグデータを使って解析する

● メリット:商品Aの購入者の性別や年齢、住まいなどが可視化される

● デメリット:さらに世帯年収や家族構成なども追加すると深堀りできるが、項目を追加しすぎると顧客が絞られ過ぎて該当数が少なくなる


 

決定木分析が役立つ場面

ビッグデータを使った決定木分析は、オリジナル商品を開発する企業や自社でサービスを提供している会社のとってメリットがある手法です。ターゲットを絞ったり、サービス離脱につながる要因を把握して事前に対策したりするときなどに役立ちます。

ビッグデータを使って解析する際のポイント

ここまではビッグデータの解析方法について解説してきましたが、実際に解析する場合にはどのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。ここからは解析の際の3つのポイントを紹介します。

①ビッグデータの解析目的を明確にする

まずは、ビッグデータの解析目的を明確にすることが重要です。手当たり次第にデータ収集するよりも、目的がはっきりしている方が必要なデータを効率的に集められます。その後のデータの集め方や解析手法の選び方にも影響しますので、先に目的をはっきりとさせておきましょう。

②事前にデータクレンジングをおこなう

データクレンジングとは、重複データや破損データなどを特定し、正確なデータに修正することです。クレンジングをおこなうことで、データの信頼性が高まります。また、データを整理することで誤った情報にアクセスすることがなくなり、解析作業の効率化にも役立つでしょう。

③目的に合致した解析手法を選ぶ

先述の5つの解析方法を見てもわかるように、ビッグデータの解析からわかることや解析が役立つ場面は手法によって異なります。ビッグデータの解析によって、何を把握してどのようなことに役立てたいのかを明確にし、それに合った解析手法を選びましょう。

ビッグデータ解析を実行するための2つの手段

ビッグデータの解析は誰でもすぐに取り掛かれるものではなく、専門性が必要です。実際にビッグデータを解析する状況になった場合、以下の2つの手段から選ぶことになります。

手段①専門企業にサポートを依頼する

専門家によるビッグデータ解析を導入したい場合は、ビッグデータ解析を扱うマーケティング企業にサポートを依頼しましょう。ビッグデータ解析に長けた人材を確保しようとするとコストや手間がかかりますが、専門家に依頼すると業務が効率化され、プロのアドバイスを得られます。

手段②分析ツールを導入する

社内で解析のノウハウを蓄積したい場合は、分析ツールの導入も検討してみましょう。無料と有料の選択肢があり、解析目的に合ったツールを選んで使いこなせるようになれば、課題発見や改善策の提案がスピーディーになります。

ロイヤリティ マーケティングならPontaビッグデータで培ったノウハウでご支援

今回ご紹介してきたように、ビッグデータにはさまざまな分析方法が存在します。分析において大切なポイントは商材や目的によってこれらの分析方法を正しく使い分けることです。

ロイヤリティ マーケティングでは、Pontaビッグデータを扱うアナリストが貴社のデータ収集から分析までをサポートし、今後の示唆をご提示します。データの分析に関してお困りの場合はぜひお気軽にお問い合わせください。

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