コラム

2024-09-26

多変量解析とは?データの種類・手順・分析手法をわかりやすく解説

大量のデータが生成される現代社会において、多変量解析はビジネスを成功に導く鍵を握っています。では、多変量解析とは具体的にどのようなものなのでしょうか。本記事では、多変量解析の意味や手順、分析手法について解説し、データ活用への第一歩を踏み出す手助けをします。

多変量解析とは

多変量解析とは、さまざまな要素(変数、変量)が絡み合った複雑な事象をわかりやすく説明する一連の技法のことです。顧客の行動を理解したり研究で洞察を得たりするときに使用され、データの中に潜む複雑な関係性を明らかにします。

 

例えば、ある商品の販売数を予測する場合、販売数に影響を与える要素として商品価格や広告費、競合商品の価格などが挙げられますが、どの要素の重要度が高いのかは簡単に評価できるものではありません。そこで、多変量解析を用いると、各要素の関連性や重要度を理解できるのです。

 

なお、多変量解析は複数の要素の相互関連を分析する手法の「総称」であり、特定の分析方法ではありません。多変量解析に分類される分析の種類は多岐にわたります。

変量とは

多変量解析を理解するためには、「変量」という言葉を理解する必要があります。変量とは、観察や測定、分類が可能な何らかの特性のことです。例えば、マーケティングで分析を行う際の変量として以下のようなものが挙げられます。


変量の例

・人:年齢、身長、性別、職業、居住エリアなど

・商品:価格、生産量、売上数、種類など

・企業:売上高、利益率、業界、従業員数など


変量がどのように関連し合っているかを分析することで、データの理解を深めるのが多変量解析です。複数の変量を分析に使用すると、より豊富な情報を得られるようになります。

多変量解析の目的

多変量解析の主な目的は予測と要約の2つに大別され、多変量解析のどの手法を選ぶのかは目的によって異なります。多変量解析を理解するための基礎として、2つの目的の詳細を把握しておきましょう。

予測

多変量解析の目的の1つである「予測」は、未来の事象やトレンドを推測することです。複数の変数を用いて将来の結果や傾向を予測すると、的確なビジネス戦略を立てるための根拠として活用できます。例えば、以下のような予測が可能です。


予測の例

・顧客の属性や購買行動から、将来自社商品を購入する確率を予測する

・過去の売上データや経済指標から、商品の売上を予測する

・顧客の購買履歴から、顧客が自社にもたらす価値を予測する


 

要約

多変量解析のもう1つの目的とは、複雑なデータセットを簡潔に「要約」することです。多変量解析を用いることで、大量のデータから重要な特徴や傾向を抽出し、理解しやすい形で表現できます。要約の具体例は、以下の通りです。


要約の例

・多数の顧客属性を分析し、似た特徴の顧客グループを特定する

・多数の商品属性データを分析し、類似する商品グループを特定する

・アンケート調査結果を分析し、消費者の価値観を抽出する


 

多変量解析のメリットとデメリット

多変量解析の具体的なメリット・デメリットは、多変量解析に含まれる分析手法によって異なります。多変量解析の全体像を把握するために、大まかなメリットとデメリットを理解しておきましょう。

多変量解析のメリット

多変量解析のメリットは、ビジネスにおいてデータを効率的に活用できることです。多種多様なデータを使って分析すると、見落としがちな情報を引き出せる可能性があります。多変量解析によって予想外のパターンを発見し、ビジネスチャンスの拡大やリスクの早期発見につながります。

多変量解析のデメリット

多変量解析のデメリットは、データ処理や解析の過程が複雑であり、専門的な知識やスキルが求められることです。また、正確な多変量解析を実施するには、質の高い大量のデータセットが不可欠であり、実施にあたってコストや手間がかかります。

多変量解析で扱うデータの種類

多変量解析では、さまざまな種類のデータを扱います。データの種類によって適用できる分析手法が異なりますので、種類ごとの特徴を把握しておきましょう。

量的データ

量的データとは、数値で表現可能なデータのことです。量的データは、以下の2つの尺度に分類されます。

間隔尺度

間隔尺度は、数値間の差が一定であり、間隔の差に意味がある尺度のことです。例えば、以下のようなものがあります。


間隔尺度の例

・温度

・西暦

・偏差値


間隔尺度ではデータの差は比較できますが、比率を直接比較することは不可能です。例えば、「20℃と10℃の差」と「30℃と20℃の差」は等しいですが、「20℃は10℃の2倍暑い」とはいえません。

比例尺度

比例尺度は、絶対的なゼロを原点とし、比率や間隔に意味を持たせた尺度です。例えば、下記のようなものが該当します。


比例尺度の例

・身長

・給料

・販売価格


比例尺度は間隔尺度と異なり、データ間の比率を論じることが可能です。例えば、「売上高100万円は50万円の2倍」といった表現ができます。

質的データ

質的データとは、カテゴリーや属性といった数値で表せないデータのことです。質的データは、以下の2つの尺度に分類されます。

名義尺度

名義尺度は、データを分類するための名義のような尺度のことです。例えば、下記のようなものが当てはまります。


名義尺度の例

・性別(男性、女性、その他、回答しない)

・血液型(A型、B型、O型、AB型)

・職業(会社員、自営業、学生、主婦・主夫など)


名義尺度では、データの順序や大小関係を論じることはありません。アンケートでは「住まい(1.日本、2.海外)」のように数字を割り当てることもありますが、このときの数字には意味はなく、どのグループに属しているかのみを示します。

順序尺度

順序尺度は、データの順序に意味があり、間隔には意味がない尺度のことです。例えば、次のようなものが該当します。


順序尺度の例

・満足度(非常に不満、不満、普通、満足、非常に満足)

・学歴(中学卒、高校卒、大学卒、大学院卒)

・売上ランキング(1位 商品A、2位 商品B、3位 商品C)


順序尺度では、データ間は等間隔ではありません。例えば、「満足」と「非常に満足」には優越をつけられますが、「満足」と「非常に満足」との差が「不満」と「普通」の差と等しいかどうかまでは保証できないのです。

多変量解析の基本手順

適切な手順を踏んで多変量解析を実行すると、信頼性の高い分析結果に近づきます。ここでは、基本的な4つの手順について紹介します。

①データ収集と前処理

多変量解析の最初の手順は、適切なデータの収集と、データ変換やデータクリーニングといった前処理です。

 

多変量解析を実行することになった場合、まずは分析の目的や活用方法といった調査設計を行い、目的に合わせて必要なデータを収集します。的はずれなデータ収集にならないように、事前にしっかりとした調査設計を考えて、チームでシェアしましょう。

 

データ収集や調査が完了した後は、多変量解析を実行する前に、データを処理して使用できる状態に整えます。具体的には、重複データの削除や欠損値への対処などです。また、分析手法によっては文字列を数値に変換する作業が必要な場合もあります。

②単変量解析

続いて、単変量解析を行います。単変量解析とは、1つのみの変数・変量で解析することです。多変量解析は複数の要素を用いて分析する手法ですが、最初から多数の要素を使うと混乱を招くため、単変量解析でデータの基本的な特徴を理解した上で分析を進めていきます。

③二変量解析

単変量解析の実行後は、二変量解析の手順へと移ります。二変量解析とは、2つの変数・変量で解析する手法です。単変量解析と二変量解析を手順を踏んで行うことで、データの傾向や特徴への理解が進みます。

④多変量解析の実施

最後の手順は、多変量解析の実施です。複数の変量を同時に扱い、複雑な関係を明らかにしていきましょう。多変量解析の実際の作業は、専用の統計ソフトを使って実施していきます。分析終了後は解釈を加え、意思決定に活用しましょう。

多変量解析で使用される主な手法

多変量解析にはさまざまな分析手法があり、予測を目的とした手法と要約を目的とした手法に分類できます。各手法の概要をわかりやすく紹介しますので、特徴を把握して適切な分析手法を選択できるようにしましょう。

予測を目的とした手法

予測を目的とした多変量解析の手法として、下記のような種類があります。

判別分析

判別分析は、複数のグループに分類されたデータがどのような基準で分類されているのかを分析し、新しいデータがどのグループに分類されるのかを予測する多変量解析の手法です。

 

例えば、商品Aを購入したグループと商品Bを購入したグループに分け、各顧客のデータを分析すると、新規顧客が興味を持つ可能性の高い商品を予測できます。

重回帰分析

重回帰分析は、ある事象を複数の要素で説明する多変量解析の手法です。例えば、商品Aの売上を価格や気温などの複数の要素を使って予測したり、HPのアクセス数や広告といった多様な要素から新規会員数を予測したりするなどの活用法があります。

 

回帰分析の詳しい内容や事例について知りたい方は、下記のコラムをご覧ください。

 

回帰分析(単回帰分析・重回帰分析)とは?やり方や事例、注意点も解説

ロジスティック回帰分析

ロジスティック回帰分析は、「事象が起こる/起こらない」の確率を予測する多変量解析の手法です。例えば、「商品を購入する/しない」「薬が効く/効かない」「カードの不正利用/正規利用」などを予測するなど、マーケティングから医療、金融まで幅広く活用されます。

 

重回帰分析とロジスティック回帰分析は、回帰分析という点が共通しているため混同されがちです。しかし、重回帰分析は「販売量」などの「値」を予測するのに対して、ロジスティック回帰分析は明確な値ではなく「発生する/発生しない」を予測するという点で異なります。

決定木分析

決定木分析は、データを用いて「決定木」と呼ばれる木のような図で表現し、ある事象が起こる確率を予測する多変量解析の手法です。例えば、顧客の属性データや過去の購買行動データから決定木を作成し、顧客が商品を購入するかどうかを予測するといった使い方があります。

コンジョイント分析

コンジョイント分析は、商品の価格やデザインといったさまざまな要素を数値化し、最適な組み合わせを見つけてマーケット予測に役立てる多変量解析の手法です。例えば新商品を考える際、消費者が重視する機能を予測すると、より効果的な商品開発につながります。

要約を目的とした手法

要約を目的とした多変量解析手法として、以下のような種類があります。

主成分分析

主成分分析は、大規模な多次元データを扱う際に、重要な要素を抽出して全体像を把握しやすくする多変量解析の手法です。例えば、商品の味に関するアンケートの回答を総合ランキングとしてまとめると、多様な回答がシンプルに要約され、商品の味の魅力がつかみやすくなります。

因子分析

因子分析は、多様なデータの背後に潜む原因を抽出する多変量解析の手法です。例えば、商品Aが売上トップを維持する原因を把握したいときなどに活用できます。

 

なお、主成分分析と因子分析は混同されやすい手法です。両者の違いや事例について詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。

 

因子分析と主成分分析の違いとは?それぞれのメリットや事例をわかりやすく解説

クラスター分析

クラスター分析は、似た特性を持つデータをグループ(クラスター)に分類する多変量解析の手法です。例えば、顧客データを分析し、購買行動が似ている顧客グループを特定するなどの場面で役立ちます。

 

共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する弊社は、クラスター分析を活用したマーケティング支援サービス「PERSONA+」を提供しています。独自開発のアルゴリズムで構築した価値観クラスターでペルソナを作成し、プロモーション施策を支援するサービスです。

 

サービスの詳しい内容は下記をご覧ください。

 

PERSONA+ | 株式会社 ロイヤリティ マーケティング

コレスポンデンス分析

コレスポンデンス分析は、集計したデータの内容がひと目でわかるように可視化する多変量解析の手法です。この手法は、アンケート結果をまとめるときに用いる「クロス集計表」に対して行われ、そのままではわかりにくいアンケート結果を図で表現することで解釈を容易にします。

多次元尺度構成法

多次元尺度構成法は、類似するデータの関係性を数値化し、地図のような視覚的表現で示す多変量解析の手法です。例えば、類似した商品を多次元尺度構成法でグループ化すると、セット買いされる商品の組み合わせがわかり、ECサイトのレコメンド機能に応用できます。

データを活用して戦略的意思決定を実現するならロイヤリティ マーケティングへ

データ活用が一般的となった現代において、多変量解析は企業のマーケティング活動に欠かせない手法になったといっても過言ではないでしょう。膨大なデータに含まれる要素を要約して解釈を容易にし、未来の事象を予測することで、データに基づく戦略的意思決定を後押しします。

 

しかし、大量のデータを扱うのは容易ではなく、多変量解析の実施や結果の解釈には専門的な知識が必要です。分析の担当者を社内で確保するのが困難な場合は、外部のエキスパートへの依頼も視野にいれてみてください。

 

弊社では、Pontaビッグデータを扱う経験豊富なデータアナリストが、お客様に寄り添いながらヒアリングからデータの分析までサポートいたします。データを活用してビジネスを一歩先へ進めたい方は、お気軽にご相談ください。

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