コラム
2024-05-22
ターゲットマーケティングとは?分析からペルソナ設定、戦略設計まで事例を含めて解説
消費傾向が多様化する現在、ターゲットマーケティングによる競合優位性の確立がマーケティング戦略を左右するといっても過言ではありません。本記事では、ターゲットマーケティングの意味や手順を詳しく解説します。ターゲットマーケティングの成功事例も紹介しますので、ぜひご活用ください。
目次
ターゲットマーケティングとは
そもそも、ターゲットマーケティングとはどのようなものを指すのでしょうか。言葉の意味やターゲットマーケティングに必要なSTP分析などを把握して、理解を深めましょう。
ターゲットマーケティングの意味
ターゲットマーケティングとは、市場に存在する消費者の中から自社の商品やサービスの対象となる顧客層を定め、狙った層に対してマーケティング活動を展開することを指します。ターゲットマーケティングの対義語は、不特定多数の消費者をターゲットにした「マスマーケティング」です。
ターゲットマーケティングに不可欠なSTP分析
ターゲットマーケティングでは、一般的にSTP分析を使って市場を絞り込みます。STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)・ターゲティング(Targeting)・ポジショニング(Positioning)の3つの指標を使ったフレームワークのことです。
STP分析の目的は、他社との差別化によって市場で自社のシェアを獲得することです。大きな市場を細分化して自社の商品やサービスを必要とする顧客層を発見し、市場における自社のポジションを明確化していきます。
セグメンテーション(Segmentation)
セグメンテーションとは、市場に存在する消費者をセグメントと呼ばれるグループに分けることです。消費者のニーズが多様化している現代では、大きな市場を分類して個人のニーズに合った施策を考えていく必要があります。
セグメントの例
● セグメントA:男性/20代/会社員
● セグメントB:女性/30代/会社員
● セグメントC:女性/20代/公務員
ターゲティング(Targeting)
ターゲティングとは、分類したセグメントの中から、マーケティングでアプローチすべき顧客層(ターゲット)を決めることです。ターゲティングには、次のような種類があります。
ターゲティングのタイプ
● 無差別型マーケティング:セグメントを無視して幅広い顧客にアプローチ
● 差別型マーケティング:複数のセグメントに対し、各ニーズに合った商品を提供
● 集中型マーケティング:ターゲットを少数のセグメントに絞る
ポジショニング(Positioning)
ポジショニングとは、ターゲティングで選定した市場をリサーチした上で、市場における自社の立ち位置を把握することです。ポジショニングマップと呼ばれる二次元のマトリックス図を作成し、ターゲット市場における自社と他社との位置関係を分析していきます。
ターゲットマーケティングの位置づけ
ターゲットマーケティングは、マーケティング戦略を決める基礎であり、現代のマーケティングにおいて重要な役割を担っているといえるでしょう。
現代では市場が成熟し、消費者のニーズが多様化したことで、一昔前のような大量生産・大量販売では利益や成長を見込めなくなってきています。企業が生き残るためには、詳細なリサーチやデータ分析で自社の強みや立ち位置を把握し、市場を細分化してターゲットを絞り込む必要があるのです。
ターゲットマーケティングを実施するメリット
ターゲットマーケティングを実施することで、以下の3つのメリットが期待できます。
競合優位性を構築する
ターゲットマーケティングの実施によって、商品やサービスを必要とする顧客への訴求効果が高まり、競合他社に対して優位性を確立しやすくなります。市場の全消費者をターゲットとするよりも、ターゲットを絞り込んでしまった方が、商品のコンセプトや広告のメッセージ性が明確になるためです。
ブランド認知が進む
ターゲットマーケティングを行うことで顧客が求める商品や心に響くメッセージが届けられると、顧客にとってよいブランドとして認知される可能性があります。さらにブランド認知によってファン化が進めば、リピーターや固定客の増加も期待できるでしょう。
費用対効果の最大化が期待できる
アピールすべき顧客層を明確にし、コストを集中的に投じるマーケティングを行うことで、顧客獲得に要する時間や費用を効率的に活用できます。幅広い消費者にアピールするマスマーケティング戦略に比べると、費用対効果を最大化したマーケティングの実現が期待できるのです。
STP分析を活用したターゲットマーケティングの手順
STP分析のセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングだけでターゲットを選定するのは容易ではありません。景気や政治など、さまざまな外的要因がターゲット選定に影響を与えるためです。また、ターゲットに対する解釈の仕方がチーム内で分かれる可能性もあります。
よってターゲットマーケティングを実施するときには、事前に外部環境をリサーチしたり、ターゲットよりも具体的なペルソナの設定を行います。ここでは、事前分析やペルソナを含めたターゲットマーケティングの手順を押さえ、効率よくマーケティングを進めるための手順を解説していきます。
①事前に外部環境分析を行う
ターゲットマーケティングでSTP分析を行う前に、リサーチや分析で外的環境を確認し、自社商品に影響を与えそうな要因を把握しておきましょう。これにより、STP分析の精度の高まりが期待できます。マーケティングの外部環境分析で役立つのが、PEST分析とSWOT分析です。
PEST分析
自社を取り巻く外部環境を4つの要因に分類し、現在や将来の影響を予測するフレームワークです。 PEST分析で外部環境を把握し、将来生じうるビジネスチャンスやリスクを予測することは、効率的なターゲットの選定や時代にマッチしたマーケティング戦略の立案に役立ちます。
PEST分析の具体的な要因
● Politics(政治的要因):法規制、政治の動向、税制など
● Economics(経済的要因):景気、為替、金利、失業率など
● Society(社会的要因):人口動態、流行、世論など
● Technology(技術的要因):技術革新、特許など
SWOT分析
自社の内部環境と外部環境をStrength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)の4項目で整理しながら分析する手法です。自社の強みや回避すべき脅威をチームで共有することで、ターゲットを選定しやすくなるでしょう
②市場を細分化する
続いては、ターゲットマーケティングのSTP分析におけるセグメンテーションです。市場に存在する消費者を属性で分類し、市場を細分化しましょう。分類の切り口として、以下のような要素がよく使われます。
セグメンテーションの分類に使われる要素
● 人口動態変数:年齢、性別、職業、家族構成など
● 地理的変数:人口、人口密度、気候など
● 心理的変数:価値観、嗜好、ライフスタイルなど
● 行動変数:商品の使用状況、サービスの利用頻度など
③ターゲットを決める
続いて、セグメントの中から、自社の商品やサービスを利用するターゲットを選定します。STP分析におけるターゲティングのフェーズです。自社の商品の特徴や市場のニーズなどとセグメントを照らし合わせ、自社の利益につながるかどうかを考慮してターゲットを決めましょう。ターゲティングには次のようなフレームワークが役立ちます。
3C
マーケティング戦略の策定に関連する3つの環境要因を分析するフレームワークです。顧客ニーズや自社と他社の強みなどを分析し、マーケティングにおいてターゲットの方向性をリサーチするのに役立ちます。
3Cの内容
● Customer(顧客):市場規模、顧客ニーズ、購買行動など
● Competitor(競合):競合他社の強みや弱み、他社のビジネスの特徴など
● Company(自社):自社の強みや弱み、自社のビジネスの特徴など
6R
6つの指標から多角的に分析し、マーケティングにおけるターゲットの選定に役立てるフレームワークです。
6Rの内容
● Realistic scale(有効な市場規模):規模が妥当で、長期的利益が見込める市場か
● Rate of growth(成長率):ニーズが増えて成長する見込みがあるか
● Ripple Effect(波及効果):口コミなどで拡散されうるか
● Reach(到達可能性):商品やサービスを求める消費者に届くか
● Rival(競合):強すぎる競合はいないか
● Response(測定可能性):マーケティング施策の結果を測定できるか
④ペルソナを設定する
マーケティングにおけるペルソナとは、自社の商品やサービスを購入する架空の人物像です。リサーチに基づいて年齢や居住地、性別、家族構成、職業、趣味などを詳しく設定し、自社がアプローチすべき顧客層やアプローチの方向性を明確にします。
マーケティングにおけるペルソナの例
● 名前:市場 太郎
● 年齢:35歳
● 性別:男
● 家族構成:妻、長男
● 居住地:立川市
● 職業:システムエンジニア
● 趣味:サイクリング、キャンプ
ターゲットマーケティングでペルソナを設定する目的は、明確なユーザーのイメージをチームで共有することと、後述するインサイトを把握するためです。趣味嗜好や価値観、行動パターンなどを詳細に設定することでターゲットの解釈にブレが生じにくくなり、顧客の思考に近づきます。
ペルソナの設定方法や手順については下記の記事で解説しています。詳しく知りたい方はチェックしてみてください。
⑤インサイトを把握する
作成したペルソナに基づいてインサイトを把握し、ポジショニングのための準備をしましょう。
マーケティングにおけるインサイトとは、顧客自身も認識していない購買行動の動機のことです。顧客がアンケートで回答したニーズを把握するだけでなく、深層心理にある欲求を発見することで、顧客が本当に求める価値を提供でき、市場における独自のポジション確立につながります。
ニーズとインサイトの違い
● 顕在ニーズ:顧客自身が理解している
● 潜在ニーズ:顧客自身は理解していないが、インタビューやアンケートで引き出せる
● インサイト:顧客自身が理解していない深層心理
インサイトは顧客ですら意識していない本音であるため発掘は困難ですが、設定したペルソナになりきることで追求しやすくなるでしょう。インサイトの内容や事例について詳しく知りたい方は、下記のコラムをご覧ください。
⑥自社のポジションを決める
手順①〜④で得た情報に基づいてポジショニングマップを作成し、市場における自社のポジションを決めていきましょう。縦軸と横軸から4つの象限を作り、自社や他社の商品をマッピングしていきます。軸の取り方に決まりはないため、自社の強みなどを考慮して決めましょう。
ポジショニングマップの軸の例
● 価格(◯円台、◯円以上など)
● 年代(40代、若年層など)
● デザイン(シンプル、おしゃれなど)
● 利用時間(◯時台、朝方など)
⑦マーケティング戦略を設定する
ターゲットマーケティングの最初にSWOT分析などで導き出した外的環境や、ターゲティングで絞り込んだ顧客層、ポジショニングで判明した自社の立ち位置に基づいて、マーケティング戦略を決定しましょう。
戦略に基づいて具体的な施策を決定・実行した後は、定期的なモニタリングが必要となります。外部環境や消費者のニーズの変化により、時間の経過とともに不整合が生じる可能性があるためです。必要に応じて、戦略の軌道修正やペルソナの見直しなどを行いましょう。
ターゲットマーケティングの成功事例
最後に、ターゲットマーケティングの3つの成功事例を紹介いたします。
飲食店の事例
あるチェーンのカフェは、平均よりも所得が高い都会の会社員をターゲットに選定し、競合優位性の確立に成功しました。競合他社より価格設定を高くし、おしゃれで心地よい店内にこだわることで、パソコンでゆったりと仕事をしたり、くつろいだりする場所として認知されています。
ヘアカット専門店の事例
あるヘアカット専門店は、散髪に時間をかけたくない忙しいビジネスマンをターゲットにすることで、市場での独自性を確立しました。メニューをカットのみに絞って施術時間を短縮し、容姿をおしゃれに整えることが目的の美容室とは異なるニーズを生み出すことに成功しています。
“LifeActionセグメント”を活用した金融業界の事例
「Life Actionセグメント」とは、共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する弊社が開発したサービスです。Ponta会員の興味関心や購買行動の傾向をスコアリングし、650個以上ものセグメントから選択して潜在顧客のターゲット像を明確にします。
例えば証券会社がターゲットを明確にしてプロモーションを最適化する場合、投資に興味がある会員の「投資家セグメント」からターゲットを把握可能です。それだけでなく、ペルソナを反映したクリエイティブを制作し、選定したセグメントに最適なチャネルでアプローチもできます。
では投資家セグメントの該当者のうち、実際に証券会社を利用している顧客はどれだけいるのでしょうか。全体平均との比較から傾向を分析したところ、Ponta会員全体の0.3%に対して投資家セグメントは2.5%となっており、証券会社の利用率は7.94倍です。
これにより、投資家セグメントは証券会社の潜在顧客を発掘するセグメントであると示唆されました。
LifeActionセグメントでは、セグメント選定からターゲットの絞り込み、アプローチまでをしっかりとサポートいたします。詳細が気になった方は、以下の記事も併せてご覧ください。
Pontaデータから見る潜在顧客の発見!<第1回 金融業界>潜在顧客を見つけ出す“LifeActionセグメント”を活用して、「投資家」にアプローチ
ターゲットマーケティングのご相談ならロイヤリティ マーケティングへ
似たような商品が溢れ、消費者の価値観が多様化した現代。顧客を絞り込んで市場の中で自社の優位性を確立していくターゲットマーケティングは、ビジネスの成果や企業の成長を左右する重要なマーケティング手法となっています。
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