コラム
2024-12-23
NPS®/推奨度調査とは?メリット・デメリットや調査方法などをわかりやすく解説
近年多くの企業が注目する「NPS®/推奨度調査」は、一見シンプルな仕組みでありながら、顧客ロイヤルティや企業の成長性を計測する重要な指標です。今回は、NPS®/推奨度調査の意味を出発点にメリット・デメリット、調査方法、さらには精度を高めるコツやまでを詳しく解説します。
目次
NPS®/推奨度調査とは
NPS®(Net Promoter Score)は、「商品やサービスをどれくらい周りの人に薦めたいか」といった推奨度を測る指標です。薦めるということは、商品やサービス、企業に愛着や信頼を抱く「顧客ロイヤルティ」が高い状態であり、顧客と企業の関係性が深いということになります。
そもそも、企業やブランドに対する顧客の愛着度を把握するのは難しく、数値化して評価するための明確な方法が確立されていませんでした。この課題を解決するためにNPS®を提唱したのが、アメリカのコンサルティング企業ベイン・アンド・カンパニーです。
NPS®/推奨度調査では、「この商品を知人に薦めますか?」などの質問を中心に0~10点で回答を求め、その評価を基にスコアを計算します。NPS®/推奨度調査を活用して顧客の声を可視化すれば、マーケティング施策の改善点が明確になり、満足度や収益の向上につながる可能性があるのです。
注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです。
NPS®の計算方法
NPS®/推奨度の計算はシンプルです。まず、企業やブランド、商品、サービスをどの程度薦めたいかを顧客に質問し、0~10点で回答を求め、回答者を「推奨者(9~10点)」「中立者(7~8点)」「批判者(0~6点)」の3つに分類します。
そして、「推奨者の割合」から「批判者の割合」を差し引いた数値がNPS®スコアです。スコアは-100から+100の範囲で表現されます。
例えば回答者100人の調査で、推奨者が40人、批判者が30人だった場合、NPS®スコアは「40%-30%=+10」と計算できます。このように、NPS®/推奨度調査では愛着度が数値化されるため、自社サービスが顧客にどれだけ支持されているかを客観的に知ることが可能です。
似た指標との違い
NPS®/推奨度は顧客ロイヤルティを測る指標として注目されていますが、他にも似たような指標がいくつかあります。それぞれの特徴や違いを理解し、適切に使い分けましょう。
顧客満足度
顧客満足度(Customer Satisfaction、CS)とは、顧客が商品やサービスに満足できたかどうかを示す指標のことです。NPS®と比較すると、顧客の声を聞くという点では共通していますが、収益性と連動する可能性があるかどうかに違いがあります。
そもそも顧客満足度の「満足」の概念は範囲が広く、一律の基準で測るのが困難です。したがって、満足していると回答した顧客が再購入するとは限りません。一方、NPS®は「他者に薦める」という未来の購買行動をスコア化するため、将来の業績向上に役立つ可能性があるのです。
NRS
NRS(Net Repeater Score)とはリピート率を測る指標です。NPS®もNRSも、顧客ロイヤルティに関する指標ですが、期待できる効果が違います。NPS®の数値が高いと新規顧客の紹介、NRSの場合は既存顧客の継続率アップが見込めるでしょう。
CES
CES(Customer Effort Score)とは、顧客が商品やサービスを利用する際にどのくらい労力をかけたかを示す指標です。同指標を活用すると、いかにストレスなく簡単に商品やサービスを利用できたかどうかがわかります。
NPS®と比較すると、広い意味で顧客の満足度を知るという点では共通です。しかし、両者は評価軸が大きく違い、CESは「不満」に関する指標、NPS®は「愛着」に関する指標であり、対照的だといえます。
eNPS℠
eNPS℠(Employee Net Promoter Score)とは、従業員の満足度を測る指標のことで、いわば「従業員版NPS®」です。対象が顧客ではなく従業員である点がNPS®/推奨度と違い、「あなたはこの会社を友人に薦めますか?」といった質問を行います。
注:eNPS℠はベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc. の役務商標です。
NPS®/推奨度調査のメリット・デメリット
NPS®/推奨度調査には、商品やサービスの改善に役立つメリットがある一方、注意が必要なデメリットも存在します。メリット・デメリットを把握して効果的に運用しましょう。
メリット
NPS®/推奨度調査には、下記のようなメリットがあります。
商品開発やサービス改善に役立つ
NPS®/推奨度調査の最大のメリットは、顧客の声を可視化し、商品開発やサービス改善に活用できる点です。NPS®は世界中で活用されているため、自社の商品・サービスを同一業界で比較すると、顧客が高く評価している点や不満点を把握できます。新規事業を考える際にも有効です。
シンプルでわかりやすい
NPS®/推奨度調査は、手順や計算方法がシンプルでわかりやすく、企業にとって実施しやすいのがメリットです。アンケートの専門知識は必要なく、調査初心者でも調査設計や計算に困りません。
競合他社と比較しやすい
NPS®は「どのくらい薦めるか」というシンプルな共通の質問で測定できるため、自社と競合他者の商品・サービスを簡単に比較できます。例えば、自社のアンケートで他社製品の推奨度を質問すれば、比較が容易です。自社の課題や立ち位置を明確にしたいときに活用しましょう。
デメリット
NPS®/推奨度調査の主なデメリットは次の通りです。
ある程度の回答数が必要となる
NPS®/推奨度調査に限らず、調査のサンプル数が少ないと特定の回答者の影響が大きくなり、結果が正確に反映されない恐れがあります。信頼性の高い結果を得るためには、一定数以上の回答が必要です。
企業規模が小さく、十分な回答を得るのが困難な場合、リサーチ会社を利用するなどサンプル数を確保するための方法を検討しましょう。
日本では回答がマイナスになりやすい
NPS®のスコアは国や地域によって異なる特徴があり、日本ではマイナスになりやすいことがデメリットです。日本人は「好き」「嫌い」などの極端な回答よりも、「どちらともいえない」といった中間的な回答を選ぶ傾向があり、結果的に米国よりスコアが低くなるといわれています。
海外のブランドや企業と比較する場合は、日本人の傾向を踏まえて検討しましょう。
回答の理由を把握しにくい
NPS®は推奨度を数字で回答してもらうシンプルな調査であるため、スコアだけでは顧客がどのような体験を基に回答したのかがわかりません。曖昧な調査にならないように、理由を聞くなどの工夫が必要です。
NPS®/推奨度調査の2つの方法
NPS®/推奨度調査には「リレーショナル調査」と「トランザクション調査」の2種類があります。それぞれの特徴と活用方法を理解し、目的に応じて選びましょう。
リレーショナル調査
リレーショナル調査とは、企業やブランド全体に対する顧客の印象や評価を測る手法です。年に数回定期的に実施し、ブランドやサービス全体の推奨度を把握します。企業全体での課題や改善を知りたいときに有効な方法です。
例えば、アプリの使用中にアンケートを表示したり、メールでアンケートを送信したりといった方法があります。
トランザクション調査
トランザクション調査とは、コールセンターの案内や営業担当者のサポートなど、特定の体験における顧客の推奨度を測る手法です。サービス利用後のタイミングで実施され、特定の体験に対する具体的な課題や改善点を抽出するのに役立ちます。
調査をより効果的に行いたいときは、リレーショナル調査と組み合わせるとよいでしょう。先にリレーショナル調査を実施して評価に影響を与えるポイントを探り、トランザクション調査で深堀りすると効率的に実施できます。
NPS®/推奨度調査の精度を高めるコツ
調査結果を活用するには、NPS®/推奨度調査の精度向上が不可欠です。ここでは、具体的な工夫や注意点を紹介します。
調査を定期的に実施する
NPS®/推奨度調査を一度だけで終わらせるのではなく、定期的に実施して顧客ロイヤルティの変化や改善活動の成果を追跡しましょう。スコアの推移を追っていくと、施策の有効性や課題がわかり、サービス向上につながります。長期的に継続して取り組む姿勢が大切です。
調査頻度に決まりはなく、ビジネスの内容に応じて半年に1回や月1回などと決定して実行します。ただし、顧客の負担やマーケティングの予算を考慮しましょう。
サイレントマジョリティの存在を意識する
どのような調査においても、積極的に意見をいわない層(サイレントマジョリティ)が多数存在するのが一般的です。もちろん、NPS®/推奨度調査も例外ではありません。仮に回答候補者が多くても、サイレントマジョリティが多い場合は、実情を反映していない調査になることがあります。
調査を実施する際は、サイレントマジョリティの存在を意識してなるべく回答してもらえるような取り組みを考えましょう。
回答者を絞り込む
リレーショナル調査を広く実施する場合は回答者を限定しないこともありますが、具体的に分析したいときは特定のターゲット層に絞って調査を実施しましょう。年齢、性別、購入頻度などに着目して回答してほしいターゲットを絞り込むと、より深いインサイトを得られます。
定性的な方法と組み合わせる
NPS®/推奨度調査の精度を高めるには、定性的な回答を得られる質問も必要です。「定性的」とは感情などの数値で表せない状態のことで、逆に数値で表現できる状態のことを「定量的」といいます。NPS®スコアは定量的な方法であり、評価の理由や背景まではわかりません。
そこで、フリーコメントで顧客の感情や行動の背景を深掘りし、数値データだけでは見えない部分の補完が必要です。例えば、推奨度を質問した後、「なぜそう考えるのかをお答えください」という質問を入れると評価の理由がわかります。
質問数は7問以内を目安にする
NPS®/推奨度調査のアンケートを作成する場合、7問以内を目安に考えましょう。質問数が多すぎると回答者の負担になり、回答率が下がりやすくなります。正確なスコアを出すためには、短時間で答えられる設問数に抑えることが肝心です。
回答数は5分以内を目安にする
アンケート全体の回答時間が5分以内になるように、質問数を調整しましょう。質問数が目安通りの7つでも、回答に悩むような質問項目があると時間がかかり、途中で離脱される可能性があります。質問項目が決まったら、最終決定の前に回答時間や質問内容の吟味、調整が必要です。
NPS®/推奨度調査の作成方法
NPS®/推奨度調査は、他の専門的な調査に比べると作成が簡単ですが、単に質問を並べればよいというわけではありません。設定した目的に向かって、順序立てて進めていく必要があります。NPS®/推奨度調査の作成の流れを理解し、円滑に実施できるように準備しましょう。
①調査の目的を決定する
NPS®/推奨度調査を実施する前に、何を達成したいのか目的を明確にしましょう。顧客ロイヤルティの把握やサービス改善点の特定、競合比較など、目的に応じて調査の方向性や質問の方法が変わります。
②調査方法を決定する
リレーショナル調査とトランザクション調査のどちらを採用するかを決めましょう。全体的なブランド評価にはリレーショナル調査、特定の体験に基づく改善にはトランザクション調査が適しています。
例えば、ECサイトで調査を実施する場合、過去の利用者に対してサイト全体の推奨度を質問するときはリレーショナル調査、問い合わせを行った顧客へ応対品質を質問するときはトランザクション調査が最適です。
③質問を洗い出す
目的や調査方法が決まったら、設問内容を考えましょう。最初は質問の数に制限を設けず、質問項目をリストアップします。多角的な視点で検討し、調査の精度を高められるように、なるべく多くの項目を洗い出しましょう。
④質問を絞る
質問項目のリストアップが完了したら、質問数を絞る段階へと移りましょう。設問が多くなると時間と手間がかかり、回答率が低下する可能性があります。調査目的を踏まえ、優先して質問すべき項目を厳選し、簡潔かつ答えやすい内容に仕上げることが大切です。
NPS®/推奨度調査を効果的に実施するならロイヤリティ マーケティングへ
NPS®/推奨度調査は、顧客ロイヤルティを把握し、マーケティング施策の改善に活用できる便利な指標です。シンプルで初心者にも導入しやすく、多くの企業で注目されています。しかし、適切に実施するには無回答者が必ずいることを前提に、ある程度の回答数の確保が必要です。
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