コラム

2022-11-10

デジタル広告の評価指標はリアル購買の参考になる?
【Pontaマーケティングラボ vol.3】

ロイヤリティマーケティングでは、実購買データをはじめとするオフライン中心の膨大なファクトデータの取得と、巨大メディアとの広告配信・分析を可能とする技術を併せ持つPontaのIDデータマーケティング「Ponta Ads」を通じて各企業のマーケティングを支援しています。

「Pontaマーケティングラボ」ではリアル購買・行動データと、メディアを中心とする消費者のコンタクトポイントをID連携により分析・検証した結果をメインに、購買・行動変化を捉えるマーケティングの参考になる情報を不定期でご紹介いたします。

Ponta Ads

連載3回目は、日経クロストレンドFORUM2022のセミナーでも紹介した「デジタル広告の評価指標はリアル購買の参考になる?」について掘り下げてご説明します。

[検証テーマ]デジタル広告の評価指標はリアル購買の参考になる?

「広告を見て店頭で買ってくれた人はどれくらいいるのだろうか?」

食品・消費財・書籍・衣類・家電などリアル店舗に並ぶ商品のプロモーションにデジタル広告を用いる場合によくある疑問です。

しかし実態としてリアル購買を目的としたデジタル広告でも、デジタル広告のターゲティングはオンラインのデータ、広告評価は表示単価(CPM※2)やクリック率(CTR※1)、リアル購買への効果は全体購買総数の増減を見る、とデジタルとリアルが分断されているケースも多いのではないでしょうか。(図1参照)

図1

理想は、リアル購買データも活用したターゲティング配信、および広告接触者がその後リアル購買に結びついたか計測することができる、リアルとデジタルがシームレスに連携できる状態だと考えます。(図2参照)

図2

では図1のようなCPMやCTRでの広告評価は、リアル購買効果としても参考になるのでしょうか?
今回はその疑問を解決するため、デジタル広告の評価指標とリアル購買効果の関連性について検証してみました。

[検証手法] CPM/CTR/エンゲージ…デジタル広告の評価指標と購買率の相関を検証

図3

対象案件

Facebook/Instagram・GDNで広告配信を行いその後実購買検証を行った案件を対象としました。

Facebook/Instagram:2019年10月~2020年10月に実施した案件
GDN:2021年9月~2022年2月に実施した案件

方法

デジタル広告指標で良い結果が出れば、リアル購買の評価指標でも良い結果が出る。逆も同様。
このようなデジタル広告での評価指標とリアル購買効果の連動(=相関があるか)を見るため、弊社で実施した案件を横断的に抽出し検証しました。

デジタル広告の評価指標

CTR ※1
CPM ※2
CPC ※3
動画再生率(動画のみ)※4
エンゲージ率(動画のみ)※5

 ※1 CTR:インプレッション数(広告が表示された回数)のうち、ユーザーがクリックした回数の割合。
 ※2 CPM:1,000インプレッション(1,000回広告が表示された)当たりの単価。
 ※3 CPC:1クリック(=サイトへの1アクセス)当たりの単価。
 ※4 動画再生率: 動画再生回数÷インプレッション数で算出。今回の動画再生は動画が最後まで、または15秒以上再生された回数。
 ※5 エンゲージ率:インプレッション数のうち、ユーザーがいいねやコメントなどをした数の割合。

[検証結果レビュー] CTRのみリアル購買に多少の相関が発生、他指標は参考になりがたい

1案件1セグメントごとの「デジタル広告評価指標」×「リアル購買評価指標」を散布図にプロット(=点を打ち)、2つのデータ間の関連性(相関関係)を検証しました。

正の相関がある(右肩上がりのグラフ)なら、デジタル広告の指標はリアル購買効果の参考になり、それ以外の結果であればデジタル広告の指標はリアル購買効果の参考にならない、と言えます。

以下、デジタル広告指標×リアル購買指標 5パターンでの検証結果です。

図4は、Facebook/Instagram(上段)GDN(下段)で広告配信した案件のCTRと購買率をプロットしたものです。

Facebook/Instagram(上段)ではCTRが増加すると購買率はやや増加しており、「弱い正の相関」があることがわかります。
GDN(下段)ではそれよりもやや強い関連性=「ある程度の正の相関」がみられました。

図5

図5は、Facebook/Instagram(上段)GDN(下段)で広告配信した案件のCPMと購買獲得単価をプロットしたものです。

Facebook/Instagram(上段)ではCPMが増加すると購買獲得単価がやや減少しており、「弱い負の相関」があることがわかります。
また、GDN(下段)では相関がみられませんでした。

図6

図6は、Facebook/Instagram(上段)GDN(下段)で広告配信した案件のCPCと購買獲得単価をプロットしたものです。
どちらも相関がみられませんでした。

図7

図7は、Facebook/Instagramで広告配信した案件の動画再生率と購買率、エンゲージ率と購買率をそれぞれプロットしたものです。
どちらも相関がみられませんでした。

結果、CTRではやや相関が見られますが CPM、CPC、動画再生率、エンゲージ率は相関がみられませんでした。

まとめ

今回の検証でCTRのみリアル購買に多少の相関がみられ、他指標は参考になり難いということが分かりました。CTRにおいても弱い相関であり、あくまで「多少は参考になる」程度と考えます。

つまり、冒頭の図1のように店頭などのリアル購買効果をデジタル広告の結果だけで測ることは難しく、図2のようなリアル購買データをシームレスに活用した配信・分析が必要といえるのではないでしょうか。

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