コラム
2024-03-28
購買行動とはどういう意味?モデルの種類や消費者行動との違いを分かりやすく解説
購買行動とはどのようなものかご存知ですか?消費者が商品やサービスを購入する際、どのような購買行動をとるかを理解することは、マーケティング戦略の策定に不可欠です。本記事では購買行動の定義や消費者行動との違い、購買行動モデルの種類について解説します。
目次
購買行動とは
購買行動とはどのようなものなのか、まずは言葉の定義や似た言葉である「消費者行動」との違いから解説します。
購買行動の定義
購買行動という言葉に明確な定義はなく、商品やサービスを購入する際の消費者の行動という意味で使われています。購買行動は、目に見える物理的な行動に加え、購入過程における心理的な変化も含むことが一般的です。購買行動を調査・分析することは、市場における自社製品やサービスの競争優位性を確保するために不可欠となっています。
消費者行動との違いとは?
購買行動に似た言葉として挙げられるのが、消費者行動です。消費者行動もマーケティングにおいて明確な定義がなく、消費者が商品やサービスを購入するまでの一連の行動といった意味で解釈されます。
ビジネスの会話において、両者は同一のものとして扱われることが多いですが、マーケティング研究の分野でははっきり区別されています。両者の違いを簡潔にまとめると、「言葉の指す範囲」が異なっているといえます。
購買行動は、消費者が商品やサービスを購入する必要性を感じてから、特定の商品を購入するまでのプロセスにおける行動や心理を意味します。一方、消費者行動は、消費者の思想や価値観、消費者を取り巻く文化、社会での出来事などを含めた行動を指します。つまり、消費者行動はより広い概念における消費者の行動で使用され、購買行動を内包していると考えるとよいでしょう。
購買行動モデルとは
購買行動に関連して、購買行動モデルという言葉があります。ここでは購買行動モデルの定義や、購買行動との違い等について解説していきます。
購買行動モデルの定義
一般的に、消費者が購買に至るまでの行動過程をモデル化したものを購買行動モデルと呼んでいます。購買行動モデルとは購入までの行動を段階的に分け、フレームワークに落とし込んだものです。購買行動は実際の行動を指しますが、購買行動モデルは消費者を理解するための例に過ぎません。
購買行動モデルを把握する意味
購買行動モデルを把握することは、マーケティング施策の最適化にとって重要な意味を持ちます。消費者の購買行動を想定することで、魅力的な宣伝方法や広告出稿に適切なタイミングを発見し、商品を売るための仕組み作りや効果的なマーケティング施策が可能になります。
また、古い購買行動モデルから新しい購買行動モデルまでを把握すると、その時代に合ったマーケティングの実現が期待できます。購買行動モデルは1920年代から提唱され始めて以降さまざまな思考法があるため、古いモデルだけを参考にすると期待した成果は得られないかもしれません。
一方で、新しい購買行動モデルだけを参考にしても、消費者の行動原理が見えてこない可能性があります。購買行動の本質は、インターネットやデジタルデバイスが普及する前からあまり変化していないと言われているためです。
購買行動モデルには時代に応じた種類がある
市場の変容や技術の進歩に着目すると、購買行動モデルはマスメディア時代・Web時代・SNS時代の3つに分類でき、それぞれの時代に応じたモデルが存在します。時代ごとの購買行動モデルについて、詳しく見ていきましょう。
マスメディア時代の購買行動モデル
マスメディア時代とは、新聞・テレビ・ラジオ・雑誌などが消費者へ画一的に情報提供していた2000年代頃までの時期を指します。まだインターネットが一般に普及しておらず、消費者の情報源はマスメディアであったため、多くのヒット商品はテレビや新聞、ラジオの広告から生まれました。
AIDMA(アイドマ)
AIDMAは1920年代に提唱された購買行動モデルです。古典的な理論ですが、基本の考え方として現在のマーケティングでも課題の分析・調査や効果測定などで活用されています。
AIDMAの購買行動モデル
1. Attention(認知):広告を通じて商品やサービスの存在を知る
2. Interest(関心):商品やサービスに関心を持つ
3. Desire(欲求):商品やサービスが欲しくなる
4. Memory(記憶):商品やサービスのことを覚える
5. Action(行動):商品やサービスを購入する
AIDCAS(アイドカス)
先述のAIDMAをベースに考えられた理論がAIDCASです。商品やサービスを欲するだけでなく、必要性を確信したり、購入後に商品やサービスを評価する重要性が説かれました。
AIDCASの購買行動モデル
1. Attention(認知):広告を通じて商品やサービスの存在を知る
2. Interest(関心):商品やサービスに関心を持つ
3. Desire(欲求):商品やサービスが欲しくなる
4. Conviction(確信):商品やサービスの必要性を確信する
5. Action(行動):商品やサービスを購入する
6. Satisfaction(満足):購入した商品やサービスに満足する
Web時代の購買行動モデル
2000年以降、インターネットが普及して消費者が自ら情報を検索するようになった時期がWeb時代です。消費者はマスメディアから流れてくる情報を鵜呑みにせず、自分に必要な情報をWeb上で取捨選択したり、よい評価や悪い評価を書き込んだりするようになりました。
Web時代になると、インターネットを使ったデジタル広告の仕組みが注目されたり、大量のデータを分析・調査してマーケティングに活用したりする流れが生まれています。
AISAS(アイサス)
AISASは、インターネットが主流となったWeb時代の代表的な購買行動モデルです。AIDMAモデルをベースに、インターネットでの検索や情報共有などWeb時代ならではの購買行動が反映されています。ただし、AISASにおける認知の方法はインターネットからの情報に限定されません。
AISASの購買行動モデル
1. Attention(認知):何らかの方法で商品やサービスを認知する
2. Interest(関心):商品やサービスに関心を持つ
3. Search(検索):インターネットで商品やサービスを検索する
4. Action(行動):検索した商品を購入する
5. Share(共有):購入した商品やサービスの感想をインターネットで共有する
AISASを活用するには、データ分析が不可欠です。消費者の行動データを収集・分析し、傾向やパターンを調査することで、マーケティングの最適化につなげます。
AISCEAS(アイシーズ)
AISCEASはAISASをベースに考えられた購買行動モデルです。AISCEASには購買行動の前に、比較や検討の段階が含まれていることがAISASとの違いです。
AISCEASの行動モデル
1. Attention(認知):何らかの方法で商品やサービスを認知する
2. Interest(関心):商品やサービスに関心を持つ
3. Search(検索):インターネットで商品やサービスを検索する
4. Comparison(比較):複数の商品やサービスを比較する
5. Examination(検討):複数の商品やサービスから選ぶ
6. Action(行動):選んだ商品を購入する
7. Share(共有):購入した商品やサービスの感想をインターネットで共有する
インターネットやデジタルデバイスの普及で口コミを発信・検索できるようになり、消費者は購入前に時間をかけて吟味するようになりました。そうした比較・検討のフェーズを含んだモデルがAISCEASになります。
ZMOT(ズィーモット)
ZMOT(Zero Moment Of Truth)とは、顧客は来店前からインターネットで情報収集し、既に購入を決めているという理論のことです。来店前に検索されるWeb上の情報が売上を左右するため、企業は情報発信に力を入れる必要があると主張しています。
ZMOTを押さえておくことで、消費者が検索する言葉を予測したうえで広告を出したり情報を発信することが可能です。実は、ZMOTと同様に「Moment Of Truth(真実の瞬間)」という言葉を含む購買行動モデルもあります。
FMOT(エフモット)
FMOT(First Moment of Truth)とは、顧客は陳列棚を見て3~7秒程度で購入商品を決めるとする理論です。3~7秒程度というのは調査によって判明した数値で、FMOTでは、同じ棚に陳列された他の商品との競争に勝つことが売上につながると考えられています。
SMOT(エスモット)
SMOT(Second Moment of Truth)は、顧客が購入商品をリピートしようと決めた瞬間のことを指し、継続利用のために顧客満足度が重要であると説く理論です。例えば、典型的な施策としてアフターサービスの提供やクーポン券の配布などがあります。
TMOT(ティーモット)
TMOT(Third Moment of Truth)は、顧客が商品やブランドに愛着を持つ瞬間を指し、ファンを獲得することの重要性を説く理論です。TMOTを追求することで企業と顧客の結びつきが強くなり、継続利用によって企業の安定や成長が期待できます。
SNS時代の購買行動モデル
デジタルデバイスの普及により、SNSの使用が爆発的に拡大した2010年頃以降をSNS時代と呼びます。SNS上の拡散から大ヒットにつながる商品が多数生まれ、強い影響力を持つようになりました。
VISAS(ヴィサス)
VISASは、SNS上の投稿を通して生じる購買活動モデルです。VISASにおいて、消費者は認知から購入後の感想共有までSNSを活用します。例えば、SNSで投稿された口コミを偶然見かけて共感した人が、投稿されたのと同じ商品を購入し、SNSで商品の感想を投稿・共有するといった流れです。
VISASは現在、SNSマーケティングを考えるための基礎理論として重要視されています。
VISASの購買行動モデル
1. Viral(口コミ):SNS上の投稿で商品やサービスの存在を知る
2. Influence(影響):投稿内容や発信者の影響を受ける
3. Sympathy(共感):投稿内容や発信者に共感する
4. Action(行動):商品やサービスを購入する
5. Share(共有):購入した商品やサービスの感想をSNS上で共有する
SIPS(シップス)
SIPSは、商品購入した顧客だけに注目するのではなく、SNSに投稿された内容に共感し、情報をシェアした消費者まで「参加」とみなす購買行動モデルです。買わなかった人の情報がきっかけとなって購買に至る場合もあり、広い意味での購買行動への参加と捉えます。
ゴールが購買に限定されないため、企業と顧客の関係構築や、顧客とのコミュニケーションの仕組み作りにも応用できる行動モデルだといえるでしょう。
SIPSの購買行動モデル
1. Sympathize(共感):投稿内容に共感する
2. Identify(確認):投稿内容に含まれる情報の信憑性を確認する
3. Participate(参加):購入や「いいね」などさまざまな方法で販促活動に参加する
4. Share&Spread(共有・拡散):参加したことをSNSで共有・拡散する
ULSSAS(ウルサス)
ULSSASは、認知から購入に至るまでの行動の多くにSNSを活用する購買行動モデルです。企業ではなく顧客の自発的な行動によって認知が生まれます。
ULSSASの購買行動モデル
1. UGC(ユーザー投稿のコンテンツ):SNSの投稿で商品の存在を知る
2. Like(いいね): 気になった投稿に「いいね」をする
3. Search1(SNS検索):SNS上で商品やサービスを検索する
4. Search2(検索エンジンでの検索):検索エンジンを使って商品やサービスを検索する
5. Action(行動):商品やサービスを購入する
6. Spread(拡散):購入した商品やサービスの感想をSNSで拡散する
※UGCはUser Generated Contentsの略です。
RsEsPs(レップス)
RsEsPsは最新の購買行動モデルの1つで、購入までのフェーズごとに検索・共有・拡散が行われるという特徴があります。デジタルデバイスの普及により、消費者はいつでも情報の検索や共有ができるようになったため、検索行動や共有・拡散は購入前や購入後に限定されなくなりました。
RsEsPsを踏まえてマーケティングを考えると、購入プロセスのどの段階においても検索・共有・拡散が行われることを想定した施策となります。
RsEsPsの購買行動モデル
1. Recognition(認識):商品やサービスを認識する
2. Search・Spread・Share(検索・共有・拡散)
3. Experience(体験):イベントやトライアルで商品やサービスを試す
4. Search・Spread・Share(検索・共有・拡散)
5. Purchase(購買):商品やサービスを購入する
6. Search・Spread・Share(検索・共有・拡散)
購買行動モデルを活用する際のポイント
最後に、購買行動モデルを活用する際の4つのポイントについてご紹介します。
KPIを設定する
購買行動モデルを活用するためには、KPI(Key Performance Indicator)つまり指標を設定することが重要です。例えばSNSから自社HPへの流入数など、データから判断できる具体的な指標を設定すると、施策の効果を適切に分析できるようになります。
カスタマージャーニーを設定する
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入するまでのプロセスのことです。購買行動モデルを活用してカスタマージャーニーをマップ化すると、顧客視点での商品やサービスの見直しや具体的なマーケティング施策の策定が可能となります。
ペルソナを設定する
ペルソナは、商品やサービスを購入する架空の人物像のことで、調査や分析に基づいて年齢や性別、職業、趣味などを詳しく設定したものを指します。社内で共通認識を形成し、商品やサービスの方向性を共有するために重要です。
購買行動モデルだけでは説明できないケースもあることを覚えておく
購買行動モデルはあくまで消費者を理解するための統計的な例であるため、現実ではモデルに当てはめて説明できないケースが起こる場合があります。現代はスマートフォンなどのデジタルデバイスで自由に情報収集でき、多種多様な購買経路が存在するためです。
例えばインフルエンサーがライブ配信を使って購買を促すライブコマースでは、一般消費者の口コミへの共感や検索といった段階を踏まない衝動買いも起こり得ます。既存の購買行動モデルをベースに、あらゆる購買シーンを想像しながらマーケティングを行うことが重要です。
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