コラム
2022-05-16
お金が稼げる?いま話題の「メタバース」で生まれる仕事
目次
最近よく耳にする「メタバース」。一過性のブームで終わるのか、新たなスタンダードとして定着するのか、まだまだ専門家でも意見が分かれるところです。今回はメタバースに注目が集まっている理由を解説しつつ、特徴的なテーマとして「メタバース上の仕事」をご紹介していきます。
そもそもメタバースとは?
メタバースは、メタ(超越した)とユニバース(世界)を融合させた造語です。SF作家ニール・スティーヴンスンの作品「スノウ・クラッシュ」(1992年)で登場する、仮想空間サービスの名称として有名になりました。作品では、VRヘッドセットを被って仮想空間に接続し、他者とコミュニケーションを取る様子が描かれています。
その後、実際に様々な仮想空間サービスが登場すると、その総称としてメタバースという言葉が使われるようになりました。2000年代にブームとなった「セカンドライフ」はその先駆けとされており、「フォートナイト」や「あつまれ どうぶつの森」などのオンラインゲームもメタバースの一つとして捉えられています。
メタバースという言葉は、まだ定義が確立しておらず色んな意味で使われている印象があります。本コラムでは「人々がアバターなどで接続し、経済活動が可能なインターネット上の3D空間」と捉えて話を進めていきましょう。
メタバースが注目される理由
なぜ、最近になって多くの企業がメタバースに注目しているのでしょうか?
メタバースを支える技術の進歩
1つ目の理由は技術革新です。高解像度なディスプレイ、3DCG技術、5Gに代表されるような次世代通信技術など、リアルタイムにリアリティのある仮想空間でコミュニケーションできる技術インフラが整ってきたということが挙げられます。
不正コピーを防止できるNFTの登場
「NFT」(非代替性トークン)の登場も大きいでしょう。NFTは暗号資産の取引でもおなじみのブロックチェーンを活用しており、不正なデジタルコピーを防止できる技術です。これにより、デジタル資産価値をしっかり保護しながら、メタバース上で安心してアイテムを取引できるようになりました。
さらにNFTによって「プラットフォームを越えてデジタル資産を所有できる」という点も、メタバースの可能性を議論する上で重要なポイントです。これまでは、特定のアプリケーションで購入したアイテムは、その中でしか利用できませんでした。しかし、NFTはブロックチェーン上に所有データがあるため、アプリケーションをまたいでアイテムなどのデジタル資産を利用することが可能になります。
たとえば日本で買った洋服をどの国にも着ていけるように、あるメタバースで購入したアイテムを他のメタバースでも利用できるかもしれないのです。メタバース同士が相互に接続された状態である、いわゆる「オープンメタバース」が実現されれば、メタバースが切り拓く未来は明るくなりそうです。
オンライン空間の一般化
2020年に新型コロナウイルスが流行し、巣ごもり需要が増え、働き方やエンターテイメントのあり方が変化したこともメタバースが注目される理由の一つだと考えられます。ビデオ会議やオンラインイベントなど、非対面でのコミュニケーションが当たり前になったことで、仮想空間上で他者と交流することが自然と受け入れやすくなったのではないでしょうか。このような生活者の変化もメタバースが注目を浴びている背景にあります。
メタバースで生まれる仕事
メタバースが人々の生活に浸透すれば、より現実に近い社会がオンライン上に形成されていきます。そこでは、どんな仕事が生まれるでしょうか?いくつかの事例をご紹介しながら、メタバースの少し先の未来を想像してみましょう。
サービス業
メタバース内で多くの人が集まるイベントでは、案内スタッフの仕事が生まれているようです。2021年6月に中京テレビ放送と三井物産が協業で開催したVR空間でのバーチャルファンミーティングでは、アバタースタッフ(アルバイト)を事前に募集。メタバース内で参加者誘導などの仕事を提供しました。このようにメタバース上で人が集まる「場」が確立されれば、物販、撮影、ファン同士の交流‥などの様々なサービスが発生し、対価を得るプレイヤーが出てくることが予想できます。
アパレル・ファッション
メタバースで過ごす時間や他者との関係が増えれば、現実世界のようにおしゃれをして自己表現したいという欲求も高まるでしょう。それを見据えてか、2021年にはNIKEがメタバース向けのデジタルスニーカーブランドのRTFKT(アーティファクト)を買収し話題となりました。RTFKTが販売するスニーカーは、NFT化された“実際には存在しない”スニーカーコレクションを販売しています。このような「NFTウェアラブル」を手掛けるアパレルメーカーが台頭してくれば、付随するかたちでそれを身に着けるモデル業や、コーディネートを考えるスタイリスト業など、メタバース上でファッションに関する仕事が広がっていく可能性も感じます。
建築・アート
メタバース上で「不動産」のような概念も生まれてきています。メタバース上で空間を所有し、NFTアートを飾ったりイベントに貸し出したりするケースや、土地(空間)のオーナーがそこに建てるバーチャル建造物を他者に依頼(発注)するという仕事も生まれているようです。
メタバース上の空間を造るバーチャル建築士には、個人だけでなく企業や団体から依頼されることもあります。「あつまれ どうぶつの森」や「マインクラフト」など空間を造るゲームの人気も高く、建築の知識がない子供がバーチャル建築家として働く時代がくるかもしれません。
教育・学習
Unimersiv社が提供する教育アプリでは、VRヘッドセットを使って国際宇宙ステーションや古代都市の探索など、本や映像でしか見ることができなかった52ものバーチャル空間を歩く体験ができます。その中でも特筆すべきは「言語学習コンテンツ」。アバターとなって世界各国の人とオンラインでつながり外国語を学べるだけでなく、グローバルにふるまう社会性を身につけたり、宗教や文化を学んだりと非言語学習にも適しています。まさに、距離の制約がないメタバースならではの教育です。今後、メタバース留学を斡旋するエージェントが登場したり、メタバース上の学校が設立されたり‥という展開になっても不思議はありません。
メタバース上での仕事体験
(非営利型)一般社団法人「Nancy」は、小学生が仮想都市でキャリアを学べるアプリ「こどものまちオンライン」の開発実現を目指してスポンサー企業を募集しました。このアプリは、子どもが主役の仮想都市で他者と交流したり、働いて税金を納めたり、自分で作ったデジタル作品を展示・販売したりとバーチャルで社会経験ができるコンテンツです。失敗してもいい環境で活動することで、社会の仕組みや自分で考えて選択すること、他者との関わり方などを学べるいい機会です。
次世代を担う子供たちに対して、メタバース上での生活の仕方まで指南する、といった動きがでていることは強調したいポイントです。
まとめ
今回は、メタバースの概要とそこで生じる仕事について事例も交えてご紹介しました。
「仕事」に限らず「医療」「金融」などのほかの領域においても様々な事例がでてきており、ますますメタバース界隈は盛り上がりを見せています。
今後、メタバースが我々の生活にどこまで定着していくのか?そのキートリガーは何なのか?今後も注視していく必要がありそうです。
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